日本共産党第26回大会決議案批判(第6回)


平成25(2013)年12月9日

 
 共産党大会の決議案案批判もいよいよ最終章になった。全体を通じての論理の一貫性を欠いたものに仕上ているかもしれないが、その都度その章を読んで、思いつくままに書いた。全体のバランスも欠いていると思われる。しかし私の能力と、現在これに関われる時間とを考えればこれが限界だ。
 読んでいただいたみなさんの忌憚のない批判を期待します。

中国が社会主義建設から道を外す可能性に初めて言及した


第6章 日本における未来社会の展望について

(28)社会主義をめざす国ぐにをどう見るか


@社会主義に到達した国々でない

  今回の決議案で共産党は、社会主義をめざす国々が市場経済の導入でもって経済力を高める事を奨励し、(「市場経済を通じて社会主義に進む」ことが、日本の条件にかなった社会主義の法則的な発展方向となるであろうこと。)(注1)その過程で資本主義が経験してきた様々な問題、汚職や腐敗、公害の垂れ流しや、貧富の差が起こる事を容認している。(生みの苦しみがあるという立場だ。)(注2)
 しかし同時に、社会主義の大義を投げ捨て、覇権主義や大国主義に陥る事があることも認め、そうした大きな誤りを犯すなら、社会主義への道から決定的に踏み外す危険すらあるだろう。と現在社会主義を目指している国ぐにが、社会主義の道から決定的に踏み外す可能性について言及した。(この評価は注目に値する)

注1:日本共産党第23回大会 綱領改正の提案について 不和哲三報告

注2:中国社会科学院での不破議長の学術講演(2002年8月27日)
                               レーニンと市場経済
     きょう、お話しするテーマは、「レーニンと市場経済」です。なぜこの問題を選んだかといいますと、これは広
   い意味で中国と日本の共通する問題だからです。
     中国では十年前の党大会で「社会主義市場経済」という方針が決められましたが、それ以前からこの問題
   に実践的にとりくんでこられました。
     そして、みなさんは、「市場経済を通じて社会主義へ」向かうという道を探究されています。
     私たちの日本は資本主義市場経済のただなかにあります。私たち日本共産党は、将来、一連の段階を経
   て、社会主義に進むことを展望しています。その道は当然、「市場経済を通じての社会主義」、あるいは「計画
   経済と市場経済の結合」という道になると思います。
                                                                                                      2002年9月4日(水)「しんぶん赤旗」

社会主義を目指している国に、中国は入って、北朝鮮は入らないのか?

 上記立場は評価するが、果たしてそうであろうか、少なくとも中国はすでに踏み外しているとみるべきでは無いか。共産党のいう「社会主義を目指している国」という位置づけは、相手国が社会主義を目指していると言っていることが基本になっている。しかし相手の主張を100%容認するのでは無く、北朝鮮は社会主義を目指している国を標榜しているが、共産党は、それを認めていない。(使い分けをしている。)
  問題は、その判断の分かれ目・基準を国民の前に明らかにしていない。なぜ中国は社会主義を目指す国にカウントされるのに、北朝鮮はなぜ認められないのか明らかにするべきだ。
  その際、権力の世襲制や拉致問題が基準なのか、核兵器の開発や大陸間弾道ミサイル(テポドン)等の開発を指しているのかが不明である。私は、北朝鮮の核開発が原因で北朝鮮は社会主義にカウントできないという事が主要な論点であるなら意義を唱える。中国の核開発は認められ、北の核はなぜ認められないのか、その主張の論点が明確で無い。(政治犯の強制労働は、つい最近まで中国も行っていた。山崎豊子の大地の子にも出てくる。)
  中国はすでにアメリカと友好関係を結び、アメリカは中国の核の脅威は感じていないが、アメリカに対抗する数少ない国、北朝鮮の核は認められない。このアメリカの主張に追随して、中国の核はよいが、北の核はダメダという主張が、北朝鮮が社会主義を目指している国にカウントされないのなら納得できない。(すべての国の核兵器の廃絶なら賛成するが、もってよい国と悪い国という核廃絶論には、承服することはできない。)

本来、社会主義を目指している国の判断基準は何か

  社会主義を目指している国かそうで無いのかの基準は、第一義的には生産手段の社会化であるべきだが(注3)、その国の政治が「国民を主人公」として扱っているか、具体的には、国民生活の破壊(公害や環境破壊など)の上での経済発展を優先していないか、経済発展の成長の果実が平等に分配されているか(一部特権官僚や政党の幹部が富を独占していないか)、さらには政治的な自由や民主主義が定着しているか、国家として少数民族の抑圧や、近隣諸国対して大国主義的対応をいないか(核廃絶など平和を求める活動を行っているか)などがその基準となると思われるが(注4)、この指標に照らしてみた場合、中国はどれを取ってみても失格である。

注3:19回大会(1990年7月)決議案でその指標を示している。
    一昨年の2中総、昨年の5中総で、わが党が提起した社会主義の四つの基準((1)生産手段の社会化だけで
  はなく、個人のイニシアチブを尊重した弾力的、効率的な経済運営、(2)社会主義的民主主義の発揚、(3)他民
  族の民族自決権の文字どおりの尊重、(4)核兵器廃絶を緊急課題としてかかげる世界平和へのイニシアチブの
  追求)は、社会主義国の事態を分析、解明するさいの理論的基準をすえたものとしても重要な意義をもってい
  る。

注4:中国は、急速に経済発展が進み、世界第二の経済大国になった。彼らはこの「あたらしい大国」に相応しい、
     地位を周りの諸国をねじ伏せる事により実現しようとしている。日本との関係では尖閣列島の所有権を主張
   し、防空識別圏の一方的変更を実力で強行しようとしている。
   先日(12/4)の会談で、習近平氏は、バイデン米副大統領に新しい大国関係を求めた。「太平洋には米中両大
  国を受け入れる十分な空間がある」と今後はアメリカと中国で世界を握ろうと呼びかけている。(6月に行われた
  オバマ・習近平会談でも中国はこの話を持ち出している。(G2論)
  

中国はすでに社会主義の大義を喪った、腐敗・堕落した共産党の独裁国家である。

 共産党は中国の闇の部分を意識的に隠しているが、中国の大気汚染の深刻さ等は、隠しても隠しきれない、さらには公害を垂れ流し、癌症村は、沿岸部や内陸部の工業地帯を中心に少なくとも国内200カ所以上あると言われている。(こうした村では、住民の多くは45歳前後で死亡するという説がある。)
中国の実態で、日本人が最も驚いたのは、中国の高速鉄道が事故を起こした際、証拠隠滅の為その車両を現場に埋めてしまったことである。この行為に対して中国国内を始め、世界から批判が上がったが、掘り起こされた車両から死体がこぼれ落ちたという事実がある。(映像が残っている)
 この事態に対して、中国鉄道部は、「これらの車両には国家機密レベルのテクノロジーが詰まっており、これが漏洩するのはまずいので現場で埋めた」と主張した。(注5)(なんと人命軽視の国か世界はこの事実を目撃した。)

注5:中国の高速鉄道の技術は自国の独自開発で無く、世界の技術提供を受け成り立っている。日本の新幹線の
     技術も中国は取り入れ、それを独自開発だと主張し、アメリカなどで、次々と国際特許出願の手続きを行って
     いる。

 中国は社会主義の基本的理念である平等を覆し、世界で一番貧富の差が激しい国になっている。世界銀行は2008年の中国のジニ係数について0.47と推計している。(一般的に、0.4は社会騒乱が起きる警戒ラインと認識されている。) 
 さらには、中国の民主化を求める活動家の劉暁波氏は、ノーベル平和賞を受賞者でもあるが今なお投獄されている。また、中国は、内モンゴル、チベット、 ウイグルなど異民族への弾圧を行っている。中国の異民族弾圧政策は、マルクス・レーニン主義からの完全な逸脱である。(共産党の決議案ではウイグルに対する弾圧は触れていない。)
 対外政策では、大国主義をかざし、最近の一方的な防空識別圏の設定のように周辺諸国との緊張関係を意識的に作り出している。確かにこの防空識別圏は、朝鮮戦争の勃発に伴い日本を占領していた米国が作り出したものであり、日本はそれを踏襲しているに過ぎないが、中国の防空識別圏の概念は明らかに違い、あらかじめ中国にフライトプランの提出を怠れば、民間航空機であっても打ち落とすようなニュアンスを主張している。これは明らかに覇権主義・大国主義的思考であり社会主義の片鱗も見られない。
 また中国共産党幹部の腐敗・堕落も激しく、保守派の旗手と言われた薄 熙来が汚職の嫌疑がかけられ裁判が進行中であるが、さらには12月6日付け毎日新聞によると元序列9位の周永康氏の息子が軟禁状態におかれ党幹部の汚職調査部調査の取り調べを受けているという。(周永康本人も監視されている)
 中国の高級官僚たちは、計画的に家族を海外に移住させ、不正蓄財や汚職が摘発される前に、その資産をすべて海外に移して家族にこれを管理させる。(注6)彼らの愛人もまた海外の資産管理の重要拠点になっているらしい。中国系移民が多く住むアメリカのロサンゼルス郊外の高級住宅街、ローランド・ハイツは「Ernai Village=妾村」と呼ばれるほど、中国官僚の愛人が多く居住している。また、カナダのバンクーバーにもローランド・ハイツ同様の大規模な「妾村」が存在するという情報がインターネット上で流されている。
 
注6:香港メディアやフィナンシャル・タイムズ紙が共産党の中央委員会メンバーの90%は、国外に移住する直系
     親族を持っており、財産が1千万元(約1億3千万円)以上の富裕層の60%が 既に海外に資産を移転し、移
   住していることを伝えている。
      また香港政論誌「動向」は米国政府の統計データーとして、中国の省クラス以上の幹部(引退した 者をも含
   む)の子弟の75%が米国永住権を取得または帰化しており、その孫の世代ではそれが91%に達したことを報じ
   ていると伝えている。
      さらに、2010年に中国から不正に流出した額は4200億ドル(34兆円)、2011年には、さらに増加して60
   00億ドル(48兆円)。2000年から11年間の流出額の総量はなんと3兆7900億ドル(320兆円)に達してい
   る。
     中国の国家予算は正確な数値が示されていないのではっきりしないが80兆円から100兆円前後のようなの
   で、これから推測すると、11年間の不正流出の総額は何と中国の国家予算の4倍から3倍強に達している。ま
   さに天文学的な数値であるが、このほとんど全てが共産党幹部の富裕層たちによって 流出されたものであるこ
   とを考えると、その凄さは尋常ではない。

これらのインターネット上の情報は「噂の域を出ない」が、すべてがウソとも思えない。

中国の実態を伝えず、「内政不干渉」の原則に従って対応していると言うような言い逃れは許されない

  中国のどこをどう見ても、社会主義を目指している国と言える要素は無く、共産党は相手国がそういているから、「政治上・経済上の未解決の問題」について「内政不干渉という原則を守りながら、言うべきことは率直に伝えてきた」というが、そのような時点はすでに通り越しており、中国は明らかに、大国意識を持ち始め、太平洋をアメリカと中国で支配しようと呼びかけている。
  中国は「新しい大国」と言う言葉を使い、すでにこの地域における大国は日本で無く我々中国だ、アメリカと中国で世界の利権を分け合おうと提案している。この中国の姿勢の中に社会主義国の大義は認められない。
  さらには一般的常識も守らず、日本の社会的資産を一方的に略奪するような行為まで行っており、(例えば、尖閣列島問題が勃発した際、中国国内の日本企業を襲い略奪行為に走ったり、先にも述べたが新幹線の技術を盗み、アメリカで特許申請を行なったり、讃岐うどんや青森を商標登録したり、日本の機動戦士ガンダムの類似品を作ったり、その非常識さは許せるものでは無い。)国際社会のルールを守らず、日本の経済活動にも大きな障害となっている。
  「中国が社会主義を目指している」とか「内政不干渉」だと言って中国問題を曖昧に扱えば、結局共産党は中国共産党と同じという批判に勝てないであろう。
(注7) 再度いう中国はすでに社会主義国から大きく道を踏み外し、すでに特定の共産党幹部が利権をむさぼる国家に成り下がっている。この批判を曖昧にしておれば、必ず日本の政治戦線で共産党は敗北する。(赤旗拡大で世の中が変わるというような呑気な話をしていたら、中国という大波にすべて押し流されてしまうことを知るべきだ。)

注7:23回大会 改正綱領について 不和哲三報告
     ソ連が崩壊してすでに十年以上たっているとはいえ、ソ連問題はけっし て、過去の問題ではありません。い
  までも、ソ連を社会主義だったとする見方は、世界に多く存在します。あれが「社会主義」の見本だといって、資
  本主義万歳論の材料にしようとする人たちもいれば、社会主義をまじめにめざす立場で、「腐ってもタイ」式に、
  ソ連社会を社会主義の一形態に数えあげる人たちもいます。
      私たちは、資本主義をのりこえて新しい社会をめざす道を二一世紀に真剣に探究しようとするものは、ソ連問
  題にたいして、明確な、きっぱりした態度をとる必要があると考えています。官僚的な専制主義と侵略的な覇権
  主義を特徴としたソ連社会を社会主義の一つの型だと位置づける立場とは手を切らない限り、その運動が、資
  本主義世界で多数派になる道は開かれないであろう、と考えるからであります。(拍手)

共産党の他国(社会主義国)に対する評価は、共産党間の友好関係があるか否かが基準となっている。


  共産党のソ連や中国・ルーマニア・北朝鮮に対する評価を見れば、その国の共産党と日本共産党が友好関係にあるか否かで評価が分かれることが分かる。つまり国際共産主義の運動の視点から相手国を評価し、決して相手国の国民の生活や人権が守られているかという立場から評価していない。しかし、国際共産主義運動で意見を分かつと、初めて全面批判を始める。
 1960年代に中ソ論争が起こった際は、中国側に立ち、中国が紅衛兵問題で日本共産党の特派員が暴行を加えられた後は、中国と対立(喧嘩状態となり)、自主独立路線を打ち立て、その立場を支持してくれるルーマニア共産党を褒め称え(注8)、北朝鮮とも一定仲がよかった。
  時系列で見るとソ連共産党とは1960年前半に、ソ連が志賀義雄「日本の声」を支持し始めた時に決別している。
  中国とは、1966年毛沢東派が「文化大革命」をとなえ、当時、北京にいた二人の共産党員に暴行を加えた事件(1967年)で決定的に決裂するが(注9)、この二人は北朝鮮経由で帰国しており、北朝鮮とは友好を深めていく。(注10)

注8:宮本委員長時代は、ルーマニアが社会主義国として最も理想的な運営を行っていると評価していた。(赤旗
     にもルーマニア賛美の記事がよく出ていた)宮本委員長はたびたび訪れ、共同宣言も出している。(1987年4
   月(チャウシェスク夫婦が銃殺処刑される2年半前)宮本・チャウシェスク共同宣言)しかし、この当時ルーマニア
   には赤旗時特派員がおり、チャウシェスクが、妻をNO.2にする独裁体制の異常性を把握していたが、党中央
   はそれを認めなかった。このときの特派員はその後離党し、当時の問題点を暴露している。その中に宮本委員
   長の随行員であった、上田浩一郎の感想がおもしろい。以下当時赤旗ルーマニア特派員のいわな やすのり
   氏のHP「私が歩んだ道」から引用
      宮本氏の2回目のルーマニア訪問に副団長格で同行した上田浩一郎副委員長は、他の代表団員も何人か
   同席した代表団宿舎での雑談で、「この国はひでえんだな。女房をナンバーツーにしてんだろう」と筆者に語っ
   ている(事実、この頃、チャウシェスクは妻のエレナ、息子のニクを始め、一族縁者30数人を党と国家の要職に
   つけ、同族支配体制を固めており、党幹部の人事は妻のエレナがにぎっていた)。

注9:1989年6月におこった中国当局による天安門の武力弾圧事件も、彼らの大国主義、覇権主義と不可分の関
      連がある。政権を維持するために人民の平和的な運動への武力弾圧も辞さないという中国当局の無法な態
   度の根底には、「鉄砲から政権が生まれる」という指導「理論」があるが、この「鉄砲政権」論こそ、いわゆる「文
   化大革命」の当時、中国が日本をはじめ世界の各国に不当な干渉をくわえたとき、最大の指導「理論」としたも
   のであった。中国共産党は、さきの日中両党関係の正常化問題でのわが党との交渉で、「文化大革命」当時の
   わが党と日本の民主運動にたいする乱暴きわまる干渉を干渉と認めず、こうした干渉の産物である反党集
   団、反党分子との関係を断絶しないという理不尽きわまる態度をとりつづけた。そして、これをわが党がうけい
   れないと、みずから申し入れてきた会談を一方的にうちきるという、国際舞台での民主的な常識もわきまえない
   異常な態度をとった。昨年の武力弾圧事件と、わが党にたいする覇権主義的態度の継続とは、民主主義の否
   定という点で、まさに同根のものであった。(19大会決議案)

注10:北朝鮮に対しては、1968年8月〜9月には宮本委員長を団長とする訪朝団を派遣しさらに友好を深めてきた
       が1980年代に入ってからのラングーン爆弾テロ事件、公海上の日本漁船銃撃事件、大韓航空機爆破テロ
    事件など、北朝鮮のかかわった国際的な無法行為にたいして、きびしい批判をくわえ朝鮮の関係は、1983年
    から北朝鮮とは断絶している。
        中国については、1998年に行われた日本共産党と中国共産党との会談で関係を修復し、今までボロカスに
    批判していたのが、賛美に変わっていく。(注11)

注11:2005年12月に行われた日本共産党と中国共産党との会談では、発達した資本主義国で社会主義・共産主
      義への発展を将来の課題としながらその理論的探求を発展させている党と、社会主義をめざす道をすすむ
   実践のなかでその理論を探求している党との理論交流として、大きな意義をもつ。
       わが党の新しい綱領が、中国側の提起した広範な問題のすべてにわたってこたえる立場と力をもち、中国の
   理論研究代表団から、全面的に研究する必要のある理論内容として受け止められたことは、わが党の綱領路
   線の現代世界における生命力をしめすものである。
       わが党は、国際的な理論交流を、野党外交の重要な分野と位置づけ、いっそう発展させるために努力をは
    らう。(24回大会:2006年1月)
 
 日本共産党の「社会主義を目指している国」は、日本共産党と中国共産党との歴史に見られるように、好関係がある場合にのみ認めるというものであり、19回大会で共産党自身が設定した4つの基準に基づいて評価していない。むしろ最近は、中国が市場主義経済を導入しているから「正しく社会主義を目指す国だ」みたいな訳の分からない評価をしている。(一昔前なら考えられない評価基準である。)


Aいやおうなしに資本主義との対比がためされる

  この指摘は正しいし、この対比で社会主義こそが「国民が主人公」だという政治を行っているということが実証されない限り、日本国民は社会主義を選択しないと思われる。
  共産党が最後に「私たちは、これらの問題について、中国やベトナム、キューバが、資本主義との対比において「社会主義をめざす新しい探求が開始」された国ならではの先駆性を発揮することを、心から願うものである。」と書いているがまさに祈るような気持ちであろう。

(29)日本における未来社会はきわめて豊かで壮大な展望を持っている

 「中国・ベトナム・キューバが抱える「政治上・経済上の未解決の問題」は、根本的には、これらの国の革命が、経済的に・社会的・政治的に発達の遅れたくにから出発したことと不可分に結びついている。」としているが、果たしてそれだけであろうか、やはり民主主義の欠如が重要なのでは無いか、日本国憲法は国民が主権者であるが、この思想が弱いのでは、党が国家を指導するという政治形態そのものに問題があるのでないか、しかもその党は、民主集中制という組織原則であり、この組織形態そのものが軍隊組織には向いているが、政党という言論で闘う組織には向いていないのでは無いか。言論の自由という中に政治のダイナミズム生まれるのだと思う。


@未来社会への移行の過程の条件―経済力の水準について

 これについては、異論は無い。


A未来社会への移行の家庭の条件―自由と民主主義、政治体制について

 「『社会主義』の名のもとに、特定の政党に『指導』政党としての特権を与えたり、特定の世界観を『国定の哲学』を意義づけたりすることは、日本における社会主義の道とは無縁であり、きびしくしりぞけられる」と書いているが、この主張には大賛成であるが、国民から見てこの保証が共産党の組織原則の中に無い中で、本当に保証されるのか確信が持てないので無いか。
 「赤旗を拡大したら世の中が変わる」とか、「中国は社会主義を目指している」との共産党の主張は、もし党内民主主義を導入すれば、違った意見が多数を占めると思われる。民主集中制という組織の持つ、独特の決定方式とそれに対する拘束性の強さが、組織全体を誤った方向に導く恐れがある。この弱点は崩壊した社会主義にも現在社会主義に向かっている国にも共有する弱点である。
  この組織的弱点の克服と、共産党に対する批判を「反共攻撃」と撃退する手法を改めない限り、「特定の世界観を押しつけない」という公約の信憑性がないと国民は思うであろう。