日本共産党 最近おかしくないですか

日本共産党第26回大会決議案批判(第三回)


平成25(2013)年11月25日



 第一章(第一回目)、第二章(第二回目)と批判を書いてきたが、今回は第三章を取り上げて気になる点を批判していきたい。

賃上げは労働者が人間らしく生きるための権利、「経済危機を打開」するためではない

(14)暮らしと経済―大企業応援から 暮らし応援の政治への抜本的転換を
  @働く人の所得を増やす経済政策で経済危機を打開する
 この章見出しで、「暮らし応援の政治」と掲げながら、@では「賃上げで、経済危機を打開する」になっている。暮らしの応援は、経済危機を打開するために行うのか、その論理性に疑問を抱く、この決議案は、「「大企業が蓄積した過度の社内留保を雇用や中小企業、社会に還元せよ」という提起を行った」と比較的注意深く書かれているが、数日前に我が家に入った大阪府会議員団の府政報告(ビラ)では「資本金10億円以上の大企業がため込んだ利益(内部留保)は270兆円以上。その1%を使うだけで、8割の企業で月1万円以上の賃上げが可能です」と書かれている。この主張は国会論戦でも使われ、赤旗にもしばしば載った主張である。
  決議案では、この内部留保を「雇用や中小企業、社会に還元せよ」と書いているが、大阪府会議員団の「府政報告」では、大企業に働く者だけが潤えばよいという論議になっている。8割企業で1万円以上の賃上げと書けば8割の労働者が潤うように聞こえるが、実際は大企業に働く労働者は30数パーセントあり、しかもその8割がと言うことであるから、共産党の言うようにもしなってもその恩恵にあずかるのは25%程度である。
  しかもこの論議の根本的誤りは、労働者は自らの働く者の権利として賃上げ闘争を闘うのであって、それを応援するのが共産党のはずである。なぜ賃金要求の上限を大企業の内部保留金の1%にしなければならないのか、これでは賃金闘争応援ではなく、賃金闘争つぶしの議論である。最初に大企業の繁栄ありで労働者はそのおこぼれをもらう議論である。大企業応援の政治から 暮らし応援の政治が、大企業の社内保留金1%の切り崩しで良いのなら、大企業に取っては痛くもかゆくもない要求である。
 例えばトヨタ自動車が、本年度1年間で2兆2000億円の利益予想を行っているが、これはまさに搾取と収奪のたまものである。この2兆円の利益がどこから生まれているのか、労働者の賃金を不当に安くし、また多くの中小零細企業を踏みつけ、海外の労働者からも搾取して巻き上げたお金である。まさに共産党がルールある資本主義というのであれば、労働分配率(注1)がどの程度かなど調べ、本来労働者が得るべき賃金はどのくらいか対置して闘うべきである。この2兆円の半分を労働者や下請けの中小零細企業に配分すれば、労働者の生活は飛躍的に改善する。こうした分析を行い、労働者の運動を励ますのが共産党の役割である。

注1:たとえばトヨタと日産を比べると、2005年度の労働分配率はトヨタが
    37.1%、日産が43.9%である。売上高人件費負担率についても1980年代からトヨタは低く、要するに低い労働分
    配率で付加価値の内部蓄積を続けて今日に至っているといえる。ちなみに10年前、1998年の労働分配率は、
    日産の75.8%に対してトヨタは43.4%である。これは、トヨタには景気低迷の今日でも高度成長期と変わらない従
    来の雇用対策を維持することが難しくないことの、大きな要因の1つと言えよう。( 小山明宏 学習院大学教授 )

政党としての誠実さが必要(共産党の原子力政策)

(15)原発とエネルギー ―原発政策の発展焦眉の課題―
  共産党は、今回原発政策の発展という形で、2011年6月以降の原子力政策の変化(発展)を語っている。しかし重要なことは、3.11の震災後すぐ後に行われた一斉地方選挙において、共産党は「安全優先の原子力政策」を掲げて闘った。
  これを見て私は、安全優先の原子力政策は、関西電力が掲げている方針と同じでありどこが違うのか共産党に問い続けたが、一切の回答はいただけなかった。選挙前半戦で共産党はふるわず、後半戦に向けて原子力政策の見直しをと訴えたがこれにも何も反応せず、「安全優先の原子力政策」で戦い、ここでも敗北した。(世田谷区長選挙では、原発反対を掲げた社民党の保坂展人氏が勝利したが、共産党の候補者は全く奮わなかった。)

  その後さよなら原発の戦いがもり上がる中で、急遽志位委員長がメーデー会場で唐突に「原発ゼロ」を宣言した。全くおかしなことにこの志位委員長の「原発ゼロ」宣言は、翌日の朝刊で朝日や毎日新聞では注目され大きく取り上げてくれたが、赤旗(5/2付)はそのことに一切触れず、メーデーの行進で党の勤務員の隊列が「安全優先の原子力政策」をシュプレヒコールして歩いたという記事を載せていた。 
  党中央の方針転換を理解していないぶざまな姿を赤旗はさらけ出していた。この点の反省なしに、共産党の原子力政策は一貫していたという主張は政党としての誠実さの問題がある。(君子豹変することは認めるが、一貫していないものを一貫していると主張するのは国民を欺くものであり、許されない。)

対米従属を「異常」や「いいなり」と言い換えて、お茶を濁すことは許されない

(16)「「アメリカいいなり」をやめ、独立・平和の日本を」
 私はどうしても「アメリカいいなり」の政治という言葉は嫌いである。この決議案では第一章に「「自共対決の」時代の本格的な始まりと日本共産党」という項目の(2)「これまでにない新しい特徴はどこにあるのか」のA「会の土台では「二つの異常」を特徴とする政治が崩壊的危機に」の中で、二つの異常の一つを「「異常な対米従属」の政治によって」と語っている。(珍しく「対米従属」という言葉を使っている)なぜ「二つの異常」とか「アメリカいいなり」というような曖昧な言葉で政治を語るのかその真意を測りかねている。政治には政治的用語があり、「異常な対米従属」(注1)という言葉こそが正しい。これを避ける共産党の政治姿勢に疑問を感じる。

注1:△い‐じょう【異常】
        [名・形動]普通と違っていること。正常でないこと。また、そのさま。「この夏は―に暑かった」「―な執着心」
        「害虫の―発生」⇔正常。[派生]  

   △〔言いなり〕(名・形動)▽〔あなた任せ〕

        あなた任せの態度
     
   △じゅう‐ぞく【従属】
        [名](スル) 権力や威力のあるものに依存して、それにつき従うこと。「大国に ―する」
 
 「従属」以外は政治用語ではない。「異常」や「いいなり」という言葉を使い、日米関係を曖昧に表現している。(これは政治的には大きな誤りである)

非現実的提案で平和は語れない

(17)北東アジア平和協力構想を提唱する
  北東アジア平和協力構想そのものには全く反対しないが、韓国や中国と首脳会談すらできない状況で、この構想の実現性は極めて乏しい。この韓国や中国との首脳会談実現しない原因を、「日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省がない点、つまり安倍首相の反動的な政治姿勢に求めているが、果たしてこれだけであろうか。
  日本が過去に行った侵略戦争や植民地支配についての反省は不十分ではあるが、基本的には、中国とは日中国交正常化は、1972年9月29日 中華人民共和国の北京で行われた「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」(日中共同声明)の調印式において、田中角栄、周恩来両首相が署名したことにより成立した。その際周恩来首相は、「日本人民は軍国主義者の犠牲になった被害者だ」、「日中両国には、様々な違いはあるが、小異を残して大同につき、合意に達することは可能である」「わが国は賠償を求めない。」と発言した。
  韓国とは昭和40年(1965年)12月18日、日韓基本関係条約が発効し、両国の国交が正常化した。日本の韓国に対する莫大な経済協力、韓国の日本に対する一切の請求権の解決、それらに基づく関係正常化などの取り決めがある。(注1)なお竹島(韓国名独島)問題は紛争処理事項として棚上げされた。

注1:日本と韓国間の個人賠償請求について当該諸条約の本文に「完全かつ最終的に解決した」と「1945年8月15
    日以前に生じたいかなる請求権も主張もすることができないものとする。」の文言が明記されている事が韓国
    側の議事録でも確認されており(2005年)、広く知られるようになりその当時韓国内に大きな衝撃が広がった。
   このような歴史的事実を踏まえるならば、2013年3月1日、1919年に起こった「三・一独立運動」を記念する式
    典の中で行われた朴大統領演説で「(日本と韓国の)加害者と被害者という歴史的立場は、千年の歴史が流
    れても変わることがない」と主張したが、この立場は行き過ぎており、受け入れることはできない。

 最近、1909年、ハルビン駅頭で枢密院議長の伊藤博文を暗殺した朝鮮独立運動家の安重根の銅像をハルピン(注2)に建造するよう中国政府に要求している朴大統領の対日政策は、すでに国家間の礼を逸した行為であると言わざるを得ない。(これについて共産党は沈黙を守っている。この動きを支持するのか批判するのかが問われている。)

注2:ハルビン市は黒竜江省の中南部、北流してアムール川に注ぐ松花江の河畔に位置する。
 
 私はこの議論の立て方は、部落解放同盟が主張してきた「差別する者と差別される者」と国民を分断し、差別する者はまず差別されてきた者に跪かなければならないという主張でもって、日本の多くの民主勢力に屈服を迫り、一定の勢力を確保し、利権まみれになっていった姿を思い出す。
 朴大統領の日本に対する要求が正常なものであるか否かを吟味せず、朴大統領の主張がすべて正しいという前提にたった問題の立て方には疑問である。最近の朴大統領の言動は、安倍首相のみならず、多くの日本国民が不快感をもって聞いていると思われる。
 この国民の気分感情を捉えた上で、日本の戦争責任と朴大統領の言動および中国の国内問題及び外交姿勢の分析を怠ったままで、韓国や中国に追随して北東アジアの平和を語るのはいかがなものかと思われる。

中国や韓国の主張を鵜呑みにしていては、「歴史問題での逆流」と闘えない

(19)侵略戦争を肯定・美化する歴史問題での逆流を日本の政治から一掃する
 この共産党の主張は正しいが、なぜ安倍さんの主張が今の若者を中心として支持されるのか、そこには中国の大国主義・覇権主義が現実の日本の脅威になっているからである。さらに朴大統領の言動が、日本国民に不快感を与える、見境のない日本批判を行っているからである。鶏が先か卵が先かの議論になるが、日本が安倍政権で復古調になったので、それに対抗して中国や韓国が反対しているのが、政治の真実なのか、それとも、日本の軍事力の増強は、隣国中国の拡張主義(例えば尖閣列島問題)などがあり、必要に迫られているのか、その分析をきちっと行い、国民に提示していく必要がある。
 中国問題に目をつむり、中国脅威論は、安倍政権の作り事と主張しても毎日毎日々流される中国のニュースを見れば、国民の中にも中国脅威論が浸透することは避けられない。共産党が友党として、中国の本心を聞き出し、そのことを国民に説得力がある内容で提示できない限り、国民は中国を信用していない。
 それと共産党は、北朝鮮の核は危険と問題にするが、中国の核は問題にしない。これなどもアメリカの外交政策の丸呑みであって国民に理解されない。
 日本国民は、北朝鮮よりも中国におそらく脅威を抱いていると思われる。中国はそれほど強かで怖い国である。是非とも中国が平和の勢力であることを、説得力を持って語っていただきたい。(注1)

注1:「親しみない」が8割(11月24日赤旗)
   内閣府が発表した「外交に関する世論調査」によると、中国に「親しみを感じない」と答えた人は「どちらかとい
     うと親しみを感じない」を含めて前年比0.1ポイント増の80.7%となり、1978年調査開始以来2年連続で過去最
    高を更新しました。(中略)韓国に対しては「親しみを感じない」「どちらかというと親しみを感じない」は58.0%
    (同1.0%ポイント減)。日韓関係についても「良好だと思わない」は76.0%(同2.87ポイント減)でともに微妙なが
    ら高水準で推移しています。
    同日付けの毎日新聞ではアメリカなどにも言及した記事が載っており、日米関係については「良好だと思う」
    が前回(79.3%)から4.5ポイント増の83.8%と過去最高を記録。と書いている。さらに日露関係は「良好だと思
    う」が5.5%増の30.4%と10年ぶりに3割台を回復したと伝えている。
 
 このような国民世論の中、日本共産党は、韓国の朴大統領が主張する「北東アジアの平和構想」を評価し、「中国側は朴大統領が提起した「平和協力構想」を賞賛し、原則的に支持する」と中・韓の動きを好意的に伝え、これを妨げているのは、日本の歴史認識の逆流だと主張しているが、一方的に日本を悪者にし、中国・韓国の主張が正しいという立場に立つのはいかがなものかと思う。

  過去の侵略戦争を行ったから、いつまでも(1000年)、日本は、中国や韓国に頭が上がらないと言う主張は、違うのではないか、中国や韓国が国内事情で意識的に反日を煽っている面もあり、これら必要以上の反日政策にものを言う姿勢を持たないと日本国民からの支持を得られないのではないか。 
  過去の間違いは間違いとしての整理が必要だが、今の中国や韓国の対日政策は明らかに間違っており、すねに傷持つ日本は、中国や韓国にもの申すことができないという政治姿勢は、間違っているし国民の支持も得られない。

議会内での統一の展望を語らない限り、一点共同では権力奪取はできない

(20)統一戦線の現状と展望について
 共産党は、議会を通じて革命を行う多数者革命を目指している。共産党単独で議会の過半数を得ることは現実的ではない。そうである以上議会を通じて政権を取るためには他党派との共闘がどうしても必要になる。しかしこの間共産党は全選挙区に候補者を立てることに狂奔して、他党派との連携を全く視野に入れていないように見える。日常的な信頼関係を育てない限り、急に連合政権など生まれない。
 共産党は、統一戦線を革新懇型の共同と言っているが、この組織は共産党の後押し(裾野を広げる)にはなっても、統一戦線の相手方にはなれない。(そのような発展は予測できない)、同時に一点共同においても、共産党の排除の壁が破られた、地域の従来型のボスが共産党も相手にしてくれるようになったと言うだけであり、これが、統一戦線の基盤にはなり得ない。
 それどころか、私は一点共闘には落とし穴があるとみている。例えば高槻市では自民党から共産党までが共闘して選挙戦を戦い辛うじて勝利したが、その後の共産党市議団のビラは全く与党思考であり、市政の問題点を全く追求しなくなっている。(市の広報紙なっている)無所属革新議員のみが市政を批判し続けており、市民を組織しつつある。
 府会議員なども街の有力者が自民党の議員と対等に扱ってくれるからいつの間にか自分が偉くなったと勘違いし、有力者に嫌われない政治志向を身につけてしまう。
 最近の大阪民主新報を見ていても、大阪市会議員団は、議長(維新)不信任案は維新とともに反対に回ったが(自民・公明・民主は賛成:可決)、それ以外では、維新政治の問題点を系統的に取り上げているが、府会報告では、維新政治の問題点がほとんど出てこない。(「どうしようもない大阪府会議員団」参照)
 一点共同は、従来の保守基盤の中に入っていく戦いであり、ミイラ取りがミイラになる危険性を含んでいる。
  また、共産党は決議案で統一戦線の相手は「従来の保守の流れも含む修正資本主義の潮流であることも、大いにありうる」と表明したが、これが何をさしているのか分からない。
  私は、現時点で原発反対の勢力、秘密保護法反対の勢力、あるいは消費税反対の勢力が国会内にも存在する。それらの政党がすべて弱小政党になってしまったが、まずこれらの政党と院内共闘を、誠意を持って推し進めていかなければならない。革新統一戦線を投げ出し、いつ発生するか分からない、保守を基盤とする修正資本主義の勢力との統一戦線など絵に描いた餅である。もし成功しても相手との議席差が大きければ飲み込まれるだけである。
  高槻市議団という小さな経験であるがそれが結果を暗示している。

以下第4回に続く