
蚊帳の外におかれ、ほっかむりする共産党(従軍慰安婦問題)
平成26(2014)年9月13日
吉田清治証言を真実と捉え、それを元にした記事を書いた朝日新聞は、他のマスコミから集中砲火に会い、ついに社長が記者会見してお詫びするまで追い込まれた。(9月11日)
これに対して、同じように吉田清治証言を取り上げ、従軍慰安婦問題を報道してきた赤旗は沈黙を守っている。朝日は攻撃されているが、赤旗は攻撃されていないのだから(誰も相手にしてくれない)、ここはほっかむりして逃げ切ろうという戦術に見える。(ただし、関西ローカルであるが「たかじんのそこまで言って委員会」で明治天皇の玄孫と言われる竹田 恒泰(最近の右翼論壇のエース)が、「赤旗は何らコメントを出していない」と批判したらしい。(私は直接見ていないが人から聞いた。)
赤旗は朝日社長の記者会見をベタ記事で伝える。
沈黙を守ってきた赤旗は、朝日新聞の社長記者会見を無視するわけはできず、記者会見翌日「福島第1そのとき・・・」という記事を載せ、福島原発の吉田調書問題を大きく取り上げながら、最後に7行だけ「従軍慰安婦問題」について触れた記事を出した。
その内容を全文引用すると「『従軍慰安婦問題』の記事を取り消した点についても『誤った記事を掲載し、訂正が遅きに失したことを読者におわびする』と話しました。」と書いた。
朝日放送の報道ステーションは大きく報道
記者会見当日、報道ステーションでは朝日新聞社長の記者会見の模様を大きく取り上げ、、メインキャスターである古舘伊知郎氏は、朝日新聞社長が「従軍慰安婦問題」の記事の訂正とお詫びを、福島原発の吉田調書のお詫びのあとに付け足しのような扱いであったことは、納得ができなかったと、批判したが、赤旗新聞の記事はまさにその通りで、吉田調書に98%ぐらい割き、「従軍慰安婦問題」はワープロで打てばたったの2行である。
「従軍慰安婦問題」ここで逃げれば、赤旗(共産党)は今後発言権を失う。
共産党は朝日新聞の従軍慰安婦問題の記事のうち、吉田清治証言に関わる「慰安婦刈り」的強制連行記事をすべて取り消すという発表(8月5日、6日)以降沈黙を守っている。
唯一報道「2001年」に出た小池議員の発言を載せたことに留まり、赤旗として、あるいは共産党としての見解を発表していない。(しかし赤旗では毎日のように「志位和夫著書の『歴史の偽造は許されない』『河野談話』と日本軍『慰安婦』問題の真実」の宣伝がなされている。)共産党はこれが党の立場だ、これを読めという指令を出しているつもりかも知れないが、この志位論文は、朝日新聞の吉田清治証言取り消し前の論文であり、現在の争点に応えていない。
現在の世論は、「従軍慰安婦」と言うのは吉田清治氏の証言がその原点にあり、「これがコケればすべてコケる」という産経新聞や読売新聞の攻勢にあっている。これとどう戦うかが緊急の課題であるのにダンマリを決め込めば、「従軍慰安婦問題」は、なかったという「吉田証言の反対側の嘘が」市民権を得てしまう。(この方が恐ろしい。)
今大事なことは、過去の間違いを精算し、改めて「従軍慰安婦」の真実を描き出すこと。
朝日新聞が追い込まれたように、吉田清治氏の証言とキッパリ手を着ることがまず大切である。報道「2001」に出演した小池副委員長は、吉田清治証言が「ウソ」だということはみんな知っていた。河野談話にも吉田証言は影響を与えていない。だから今更吉田証言を云々しても意味がないと主張したが、そう言い切れるであろうか、国連人権委員会に報告されたクマラスワミ報告では、吉田証言が引用されている。
この間の報道を見ると、すべてのマスコミは吉田証言を自らがどのように扱ったかの検証を行い、朝日新聞以外は早い段階で吉田証言のイカサマに気づき、それ以降それを取り上げていないと報告している。赤旗にもこれが求められている。これを処理しておかねば赤旗がいくらこの問題で話しても、相手側は、この点をついてくるだろう。
誤りを認めない不誠実な対応は、国民から支持されない。朝日新聞がやっと気づいたことを赤旗だけは気づいていない。
保守系の読売テレビはどう報道したか
今日、読売テレビ「ウイークアップ現代」でこの問題を取り上げていた。この論議の参加者の中に、在日本大使館政治軍事部部長、在沖縄総領事、国務省東アジア・太平洋局日本部部長などを歴任した。ケヴィン・K・メア 氏(Kevin K. Maher、1954年8月21日- ) がいたが、「吉田証言」が「ウソ」だったとしても、河野談話には何も影響を与えないと釘を刺した。おそらくこれがアメリカの立場であろう。
さらにその次の番組あさパラ!(関西ローカル)では兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科准教授 中野雅至氏という官僚上がりの学者が、やはり、朝日新聞はこれからも「従軍慰安婦問題」を主張することをやめる必要はない。これは一つの立場だから、追求をやめる必要はないと何回も言った。
毎日新聞は朝日新聞にエールを送り続けている。
共産党はダンマリを決め込んでいるため朝日新聞を応援することすらできない。毎日新聞もこの問題発生以来、批判は批判として行いながら、朝日新聞を常に擁護している。例えば、9月12日朝刊(会見の翌日)「誠実さ信頼の礎」東京本社 編集編成局長 小川 一氏の名前で「今回、多くのメディアが過剰な朝日批判を繰り広げた。感情的な、あるいは利害関係から行う批判は、報道機関の信用毀損を拡散し、報道機関全体の信頼を失わせることになる。今私たちに求められるのは、朝日報道から、メディアとして自らを鍛え続けることだ。」と書いている。
また同日の社説で「朝日社長会見」メディアの重い責任という主張を出している。そこには問題点を指摘しながらも、以下のような形で産経新聞などの批判に対する反論を加えている。以下引用する
「吉田証言のような『慰安婦狩り』がなかったからといって、慰安婦がいなかったことにはならない。慰安婦問題は植民地支配と侵略戦争の過程で起きた悲劇であり、元慰安婦の人々境遇への理解こそが、この問題を論ずる入口だからだ。河野談話も見直すべきではない。
談話は組織的な強制連行を認めたものでなく、吉田証言も採用していない。軍の一定の関与を認めて過去を反省し、女性の人権擁護に前向きに取り組む、というメッセージを国際社会に送ったものだ。見直せば、日本はこうした問題に後ろ向きな国と受け取られるだけだろう。」(後略)という主張を掲げている。
非常に見識のある見解である。これに対して赤旗は何も語らない。ただの二行で淡々と事実だけを伝えている。この最大の原因は、吉田清治調書と赤旗の関係の総括ができないため、何も発言できない立場に追い込まれている。朝日新聞はなぜ見直しに立ち上がられたのか、それは読者の声を大切にし、内部の記者からの進言も受け止めたからである。
共産党にはその機能が働かない。今日の「あさパラ!」で、朝日新聞を擁護した学者中野雅至氏が「一番官僚的なのは、財務省、朝日新聞、共産党だといった。」このような批判を受けないように、共産党の柔軟性を示すべきだ。
共産党は志位論文で答えていると主張すると思われるが・・・・
志位論文はすでに時代遅れである。現在の争点は「20万人の従軍慰安婦」という前提に誤りがあると批判されている。この問題に対する見解が志位論文にはない。さらに、「従軍慰安婦とは、なにか」定義がなされていない。日本軍が中国に侵略し、拉致・強姦した女性と従軍慰安婦とを混同した議論を行っている。言葉を変えて言えば、罪と罰の使い分けができていない。
共産党が主張するオランダ人慰安婦問題(スマラン事件)はすでにオランダの軍事法廷で裁かれ、有罪となったのは、将校7名と慰安所経営者(軍属4名)である、慰安所開設の責任者であった少佐は死刑(銃殺)、陸軍の司教官と下士官は無罪となった。なお計画の中心的役割を果たしたとみられた大佐は日本に帰国していたが、47年1月オランダの追求を知って自殺している。(従軍慰安婦 岩波新書188ページ 吉見義明から)
拉致・強姦など法的に違反した事例は、基本的にはすでに裁かれており、あとは朝鮮人慰安婦の問題である。この場合は、植民地化の慰安婦の募集であり、それが甘言を用いたり騙したりして連れてきたという種類の問題(道義的責任:罪)が、原罪解決を求められている問題であり、これについては河野談話そのものであり、河野談話の線に乗った解決が求められていると思う。
従軍慰安婦問題をことさら政治問題にすれば、日韓友好は損なわれる。
従軍慰安婦問題を、日本の軍国主義糾弾や、現在の軍国主義化反対の闘争に利用するためにことさらこの問題を取り上げ闘うのではなく、まず韓国との友好を第一に考え、慰安婦の方々の訴えをよく聞き、それにあった対応を行い、この問題の早期決着を図ることが重要である。
「従軍慰安婦」問題を「日本軍の『慰安婦』」とか、ただ単に「慰安婦」と呼ぶ共産党の姿勢の中に、「従軍慰安婦」問題を先に挙げたオランダ人に対する強姦行為などとゴチャ混ぜにし、問題の複雑化を意識的に図ろうとしているように見える。
しかし、今回の朝日新聞の吉田証言の虚偽性の認識と、自己の記事16本を取り消すという「従軍慰安婦問題」の論争の天下分け目の闘いに、共産党が参加しなかったことは、今後この問題に対する共産党の発言権は小さくなるであろう。ダンマリ戦術で逃げ切れると読む共産党指導部の力量の無さには呆れかる。
参考:従軍慰安婦関連文書
★討論の広場
☆『嫌韓風潮反対!』には賛成だが、朴大統領の『反日』にも反対 エガリテ
☆従軍慰安婦問題は重要だが、強制連行の有無など再検討が必要 エガリテ