大阪府会議員の白紙領収書発覚事件について



平成28(2016)年11月21日

白紙利用領収書問題で、当事者意識を欠如した共産党大阪府委員会

 2016年11月6日付赤旗は、「朽原前府会議員を除名」「共産党府委が処分を決定」という記事を載せています。以下その内容を引用

 「日本共産党大阪府委員会は5日、総務会を開き、日本共産党の杤原亮府会議員が『白紙領収書』を使い政務活動費を221万円を不正に受け取り、私的に流用していた問題で、同氏の行為が「市民的道徳社会的道徳をまもり、社会にたいする責任を果たす」とした党規約に照らし、党員の立場とは両立し得ないものとして除名処分を決定しました。」と書いています。

 具体的内容は、すでにマスコミで流されているので省きますが最後のまとめの部分を引用します。

 「党府常任委員会は、府民のみなさんに心からおわびするとともに政務活動費の活用報告が議員団任せになっていたことに重く反省し、政務活動費の活用について厳正に点検し、議員団対する指導・監督責任を果たしていくことを表明しました。」という記事を載せています。

 この記事ってこの間社会的にいろいろな不正が発生した時の「トカゲの尻尾切」発言とそっくりではありませんか?

 共産党大阪府常任委員会は、政務活動費の問題は議員団に任せており我々は把握していなかった。「悪いのは議員団であり、今後議員団に対する指導・監督を果たして行く」ということで自らの責任回避を行っています。

 この件はすでに10月初旬に発覚し、産経新聞等の取材に対して杤原議員は領収書は自分で書いたことを認めていたにも関わらず、共産党大阪府委員会は、

 10月16日には「領収書の記入によって、金額を上乗せしたり、他に流用した事実はないかを、党として調査しましたが、そのような事実はないことを確認しました」と説明しており、その責任は重いと思われる。

 大阪府委員会は、10月26日府政記者クラブで会見し、「杤原府議が領収書実際より上乗せして作成し、私的に流用していたことを明らかにしました。同府議は同日付で議長あてに辞職願を提出し『自筆領収書』分(2011年から5年間)の全額を返還すると表明した。」(赤旗10月27日付)

 この記事の中で以下の行があります。

 「16日付コメントで『不正はない』としていた点について、党府委員会としては、すぐに調査を始め、『中央委員会からも、さらに詳しく調査し、報告するよう求められた』とのべ、調査結果、誤りであることが明らかになったとして、同コメントを「お詫びして撤回します」と表明しました。と書いているが、十分な調査もせず、16日の段階で『不正はなかった』というコメントを出したことの政治的責任は大きなものがある。(大阪民主新報にもこのコメントが掲載されていた。)

杤原前府会議員を除名処分することで幕引きを図ろうとする姿勢は許されない。

 大阪府委員会は、この問題の責任は、府会議員団にあり、その指導監督を怠ったという限定的な責任に矮小化し、当初(16日)の時点で「不正はなかった」とウソのコメントを出し終止を図ろうとした自らの政治的責任を全く感じていない。中央委員会に言われ、初めて事実を発表するという重大な失態を犯した責任には大きなものがある。

 また杤原議員の除名は、大阪府の松井知事が、杤原議員を刑事告発すると発言したことに驚き、共産党に被害が及ばないように、早々と杤原議員を除名処分にしてしまった。

 大阪府下では政務調査費を巡る不正事件は、大阪維新の会の議員に最も多く発生しており、維新側は居直っていると状態があるにも関わらず、松井知事は共産党の議員の不正問題を最大限に利用しようと刑事告発をチラつかせ脅かしをかけた。この際、維新の不正を暴露して戦うのでなく、杤原前議員の除名で逃げ切る姿を私は「良し」としない。

 この議員を私は全く知らないが、今日までの彼の活動が府民本位の立派なものであるのであれば、府会議員の辞職は「やむを得ない」としても、共産党の除名処分にまで行う必要があるのか疑問に思う。すべては大阪府常任委員会の自己保身のための「首切り」のように見える。

 大阪府党常任委員会は、16日の「コメント」で府民をだまし、党中央をだまそうとした重罪であり、ある意味では杤原議員の不正より重大な問題だと思われるが、当事者意識が全くない。(注1)

 以下の当事者である「大阪府議団団長のビラ」からそのことが読み取れる。

注1:この事件の白紙領収書を発行したのは、党東大阪地区委員会であり、不正

    か不正でないかは、調べればすぐに分かる事件であった。(以下に詳しく述
   べる)

杤原前府会議員白紙領収書事件に対する大阪府議団長のビラ

=党府常任委員会は責任は「議員団」、議員団は、本人の個人的「悪事」=

 日本共産党大阪府議員団団長の「宮原たけしレポート」が本日(11/21)赤旗に折り込まれ配布されてきました。以下引用して説明します。

 責任問題について、「白紙領収書は東大阪地区委員会に本人が要求していたので私(宮原たけし)はこの事実を知りませんでした。しかし団長として責任を痛感しています。」と書いています。

 この彼の文書には重大な「文言」が含まれています。赤旗の記事では、杤原議員の個人的資質の問題で処理しようとしているのに対して、これは杤原議員と東大阪委員会の「共犯」事件だと匂わせています。

 杤原議員の政務調査費の不正流用は、「書籍の購入費」や「府政ニュース印刷代」の上乗せを行ったことから発生しています。この書籍の購入先や印刷会社が党東大阪地区委員会の「あづま書房」や党委員会であり、実質的には党委員会そのものであったと思われます。

 宮原レポートは、まさに支払先は東大阪地区委員会そのものであると認めたものであり、この発言は、「議員団長の俺の責任か、違うであろう杤原善議員とその出身母体である党東大阪地区委員会の責任ではないか」と言っています。(「白紙領収書は東大阪地区委員会に本人が要求していたので私(宮原たけし)はこの事実を知りませんでした。」)責任のたらい回しです。

 このビラ(「宮原たけしレポート」)には、まだまだ突っ込みどころが沢山あります。

 ビラの発行日付は11月8日ですが、杤原議員の除名処分に触れていません。(除名は11月5日)

 共産党の決着(処分)としては、議員辞職と党の除名だと思いますが、彼はあえて除名は外しています。このビラ(「宮原たけしレポート」)が政務調査費で発行されているため、党内のことには触れられなかったのかと思いましたが、このビラには注意書きがあり「このビラはお詫びのため「全額自費」で作っています」と記載されています。

そもそも私はこの「宮原たけしレポートが」政務調査費で発行されていることを知りませんでした。高槻市会議員団が「市政資料」というビラを出していますが、これも政務調査費で発行されています。私はこの「市政資料」いつも批判してきました。市役所の広報の二番煎じであり、発行の値打ちが全くないと、例えば手元に最新号がありますが、私の嫌いな「安全・安心」という言葉が2度でてきます。(共産党の事務所のポスターも「安全」です)

 「宮原たけしレポート」も常に批判してきましたが、この政務調査費を利用したビラという限界を抱えていたことを今回知りました。しかし問題だらけです。

 このビラはまず、10月26日の記者会見での元府会議員の発言を載せています。その次に、宮原議員の補足説明があります。その内容は、

 「この事実が発覚した10月16日以来、@本人や関係者からの聞き取り、A報道で指摘された2013年度〜2015年度だけでなく、資料のある2011年度にさかのぼって、大阪府の資料や私たちの資料を精査しました。その結果、実際に政務活動費として使っていた費用でも自筆で領収書を書いたものは全額返還することにし、11月7日大阪府に返還しました。

 この文書の主語と述語が良く分かりません。(宮原たけしレポートの特色ですが)例えば「私たちの資料を精査しました。」これは何を指すのかよくわかりません。他の府会議員にも同様のことが無いか点検したという意味か、杤原議員の不正を暴くため「私たちの資料を点検」したのかよくわかりません。

 さらには、最後の「11月7日大阪府に返還しました」これも誰がという主語があいまいです。杤原元議員が自費で返したのであれば、「返還させました。」ではないのでしょうか?それとも、党として返還したのでしょうか?分かりません。さらには、杤原元議員は、11月5日に除名されています。11月7日の返還は党に関わりなく、彼自身の行為でしかないと思います。(注2)

注2:杤原氏の敬称ですが、マスコミは杤原前議員という言葉を使っています。「宮原たけしレポ
   ート」では「元」を使っています。この違いに政治的意味があるのか分かりませんが、「宮原
   たけしレポート」に関連した言及の際は私も「元」を使っています。

最後に責任の取り方を書いています。(責任の取り方は2つです。)

 @;今まで以上に、府政をチェックし、みなさんと地元の要求実現にがんばるとともに、くらしと日本の平和を守ってがんばる。

 A;よりいっそう「政治とカネ」について厳格な態度をつらぬく。

  としていますが、何か間が抜けています。「言うだけ」と受け止められる責任の取り方です。通常なら議員団長の辞任というのが普通だと思いますが、3人しかいない議員団で一人が辞職し、2人では辞職もままなりません。

根本的な解決は、より一層がんばるというような精神論でなく党の体質改善

 私は、今回の事件で気になるのは、杤原前議員の発言、「生活が苦しかった。着服したお金はローンの返済等生活費にあてた。」という発言であった。かれはその原因を「大阪維新の会が主導した歳費の引き下げで」と答えていた。(注3)

注3:府議の報酬は月額93万円と定められているが、平成23年3月の府議会で3割削減の条
   例改正案が可決。同年4月からは、都道府県議会レ ベルの実支給額では全国最低(26
   年4月現在)の65万1千円となっている。

 府会議員の収入が実質どれだけあるかは承知していませんが、この65万円が彼の収入であれば、そんなに生活に困るとは思えないが、党へのカンパ党が相当の額になり、本当に彼の生活が行き詰ってしていたとすれば、不幸な事件である。

 共産党は地方の専従者の給与等の根本的解決に取り組まないと、こうした生活苦からの事件を防げないことにも注意を払うべきだと思っている。

 清潔さだけを売り物にしても限界があり、つねにこうした事件は発生する。やはりしっかりした賃金保証を行うべきである。そのためには政党助成金をもらうことも必要だと思っている。

資料:宮原たけしレポートNo。3 (2016年11月8日)