選挙戦で政治的切り結びを避けた者は敗北する。


平成31(2016)年4月15日


 このページは読者の広場の「辰巳孝太郎フアン」さんからの投稿「大阪は死んだ。大阪の共産党も死んだ」に応えたものです。コメントが余り長くなりましたので、このページからお応えします。

 投稿ありがとうございます。
 貴方のこの投稿全面的に支持します。私の思いと完全に一致しています。

共産党は自らの陣営が30%侵食されていることに気付いていなかった。

 今回の選挙結果に私も驚いています。惨憺たる敗北です。ここまで維新にやられるとは私も思っていませんでした。
 赤旗を読んでいると、「今度の選挙で維新政治に決着をつけようではありませんか」と書かれていたので、私もいつの間にか維新はじり貧になっていると思っていました。(赤旗・大阪民主新報に洗脳されていました。)
 私は政治の第一線から離れていますので、維新がこのように増殖している事に気が付いていませんでしたが、政治の最前線で戦っている共産党がこの事態に気が付いていなかったことに驚きを感じます。


維新は4人区に2名出馬し、公明党を落とすと公言した

 私の選挙区は、高槻・島本地区ですが、維新が公明党の出方に反発し維新候補を2名出し、公明党を落選させると宣言しました。私はこの選挙で維新が2名出す事は公明党の排除より共産党の落選が決まったような問題だと捉えていましたが、選挙結果は、驚くべき結果になりました。
 維新候補は2名で81,806票とりました。これは得票率で49.19%(ほぼ5割です)になります。大阪で過去にこれだけの得票率を上げた政党は私の知る限りではありません。
 維新の掲げた公明党を落とすという結果は実現しませんでしたが、公明党の候補は最下位当選であり、自民党がもう少し善戦していたら落ちるところまで追い込まれています。

維新に吹き飛ばされたのは共産党、と自民党、公明党は辛うじて踏ん張り、立憲民主は漁夫の利を得た。

 共産党は、15,974票で9.61%です。前回の選挙で共産党は同じ候補者で21,580票、(15.46%)獲得しています。維新は前回選挙で52245票(37.42%)取っていますが今回の得票数は大躍進です。
 維新が前回以上に力をつけてきている事を共産党は全く把握していませんでした。(あるいは知っていたが、我々には隠していたのかもしれません。)
 今回の選挙での勝者は維新であり、敗者は明らかに共産党です。
以下政党別の票の流れを追ってみます。

今回選挙前回選挙前回との差


共産党は同じ候補者でありながら前回比約26%も得票を逃がす

 共産党の「−5606票」は21580票の25.97%に当たり、約26%も票数が減ったことは相当深刻な状況です。
 一方維新は29,561票増やしています。共産党から見れば、維新は2名出したから票が増えるのは当然と主張するかもわかりませんが、この批判は当たりません。もし共産党が2名候補者を出していたら、この票は増えたでしょうか、恐らく全く変わらないと思います。
 確かに維新は当初の予定だった池下卓氏だけであれば、5万票前後だと思われます。そこに松波ケンタ氏が入ることによって、さらに3万票の票を積み上げたことに維新のすごさがあるのです。
 共産党は完全な組織政党であり、人物ではなく、党に対する投票です。それに対して松波ケンタ氏が参戦戦することに3万票の上積みができる維新の方が正当な感じがします。

共産党・自民党・公明党全てが維新と真っ向から戦っていない。=戦いを回避する者は敗北する=

 今回の選挙では自民党も大きく負けました。また公明党も振るいませんでした。それらは全て大阪都構想と真っ向から戦いこの誤りを暴き切っていないからです。新聞報道によると自民党支持者の半数は大阪維新に入れたと言われています。自民党も脆さが暴露されました。自民党は鉄壁だと思いましたが、維新は自民党の5割、共産党の3割を吸い込んだ、正にブラックホール政党です。そのエネルギーは無限にあるようにすら見えます。

昔話ですが、選挙の勝敗は候補者の実力が半分はある。

 私はこのブログで何回もこの話を書いていますが、昔京都2区では田畑シゲジ氏という共産党の候補者がいました。昔は中選挙区制で5人ぐらい当選できたのですが、この候補はいつも5万票近辺で次点でした。そこで候補者が寺前巌氏に代わったとたん10万票以上の得票を得てトップ当選でした。
 私はこの事実から、選挙の当落は候補者の実力が大きく影響すると思っています。
 今回の府会議員選挙でも、宮原氏の個人票はおそらく「ゼロ」に等しいと思います。この選挙区で共産党の候補者として衆議院選挙や市会議員選挙やいろんな選挙で出てくる「A氏」という泡沫候補がいますが彼でも1万5千は入ります。この1万5千は共産党のこの地域での最低票です。(島本町を除く高槻だけで)
 例えば立憲民主は前回は人気の出ない候補を立てていたので16,727票で落選しています。今回は、ののうえ愛氏という人気のある市会議員を立てて、25,240票獲得しています。約8,500票上乗せしています。
 これが選挙です。いい候補者を出すことは必須条件です。人間的に良い人とかは判断基準ではなく、人気が出る候補かどうかが重要です。

選挙で共産党が負けた最大の理由は「戦いを避けたからである」

 ここまでは、人物論で偏った選挙評になりましたが、政策も大きく影響します。この方が選挙にとっては重要です。今回の選挙で共産党が負けた最大の理由は、大阪維新とかみ合った論議を避けて、あさっての方向を向いたような選挙戦を戦っています。
 この間の知事選挙でも私が一貫して批判してきたのは「安全・安心・やさしい大阪」というような警察の安全標語みたいなスローガンを押し立てて戦う共産党にものすごい違和感を禁じえません。
 宮原氏のビラは、大阪都構想に対して全く触れていません。それよりも「消費税値上げ反対」を重視したビラを撒いています。この選挙の争点は消費税でしょうか、絶対に違います。大阪都構想の是非が問われているのです。そこを避けて選挙に臨む馬鹿らしさが選挙民からソッポを向かれるのです。

選挙戦の総括(共産党の声明)にも都構想は触れていない。

 ここに「大阪府議会選挙の結果について」日本共産党高槻島本地区常任委員会の声明があります。その中に敗戦の弁がありますが、大阪都構想に関連した文言は一切ありません。選挙戦で何をうったえたかは「『消費税増税ストップ』『国保料5年連続値上げ中止』『カジノよりくらし、防災を』の訴えに共感が強まりました。今回の選挙戦結果を分析しつつ、維新政治の高槻市への持ち込みを許さないため高槻市議候補4人全員の当選へ全力を尽くします。」と書いています。
総括でも大阪都構想には全く触れていません。

大阪維新はゾンビのように成長拡大している

 今回の選挙で分かったことは、維新は衰退せずに、@未だに増殖を続けている。Aこれは予想に反する事態であり、維新の政策と真っ向から対決しないと大阪の政界では、共産党は蹴散らかされる危機にあることです。
 これはまず新聞等の出口調査で「大阪都構想支持者がいつの間にか60%になっている」あるいは「共産党の支持者も30%の人は、大阪都構想賛成である」というショッキングな世論調査です。
 共産党はこんな事態になっていることを把握していたのか、していなかったとしたら、自分たちの考えが甘かったことを自己批判すべきなのに、維新とのチカラ関係で決定的な差をつけられ、支持者の3割までが維新に唾をつけられている状況でも危機感を感ぜず、漫然と対処している。
 何かの裁判で負けた理由が「漫然と対処していた」というのがあったが、「漫然とした対応も」罰せられるのである。私の見方は「漫然と」は「ノーテンキ」と同じように捉える。敵がどんどん浸食しているのに、それと戦わず、府会議員選挙としては全く争点ではない「消費税増税ストップ」を最大の争点として戦う姿勢にはあきれ返るばかりです。

選挙は政治的路線の戦いであり、「お涙ちょうだい」では勝てない。

 最近私のブログに、宮原府会議員に対する私怨でこのブログを書いているとの批判を受けた。私はなぜこのような批判を頂くのかと思っていたが、このブログを立ち上げた時に、「私の人生を変えた1枚のビラ」という文章を載せた。それが根拠になっているのだという事が分かった。私はその文書の中で、「府会議員選挙が戦われようとしているが、宮原候補者のビラを見てびっくりした」と書いている。その内容は以下の通りだ。
一つめは、母親と子どもで貧しい家庭を生き抜いてきた。母親は行商をして息子を支えてきた。
  二つ目は、立身出世話物語で、苦労の中から立ち上がり京都大学を卒業した。
  三つ目は、府会議員としての実績が書かれていたが、その内容が府民の出費を500円抑えたという極めてしょうもない手柄であった。
 彼のこの出馬にあたっての基本指針が「お涙ちょうだい」的なビラであったことに驚いた。これは8年前のビラであるが、彼の出馬の際の決意は未だに代わっていない。有権者の側からすれば、そんな貧乏物語や親孝行の話や、出世話と共産党のイメージは一致しない。


府会議員選挙は府民の要求を前面に出して戦わないと勝てない

 今日の状況では、大阪都構想やカジノの誘致が大阪府民にどう影響を与えるのかを、描き出し、その先頭に立って私は戦うという姿勢の方が共感できる。しかし彼は、自分の自叙伝で「お涙ちょうだい」で選挙戦を戦おうとしている。このやり方で3回目の戦いに挑み、見事に惨敗した。誰もこんな話に乗ってきていない。それを理解できない大阪府委員会も相当な馬鹿者の集まりである。

大阪府委員会はこの選挙戦をどう総括したか


 最後に大阪府委員会の声明を見ておきたい。共産党は如何に戦ったかを以下のように表現している。
「『都』構想・カジノより暮らしの安心と希望―国保料引き下げ、教育、防災、中小企業支援を」「消費税10%増税ストップ、9条改憲許さず平和外交を」と訴えて、日本共産党の値打ちを広げました。と書いているが、府会議員選挙の争点を「消費税反対や9条改憲阻止や、平和外交」に求めるのはいかがなものかと思う。
 都構想反対は『都』構想・カジノよりと比較の次元でしか語られておらず、「都構想」こそが市民生活を破壊するという運動を全く行っていない。この共産党の争点隠し、(「安全・安心」などの一般的な用語で対置する手法)が全く効果のない宣伝であることを共産党は気づくべきだ。

安全・安心など誰もが望むことをスローガンにしても選挙は勝てない。

 共産党は「安全・安心・やさしい大阪」というスローガンを掲げたことにより自らの陣地がどんどん浸食されていることに気づくべきだ。共産党は守りでは絶対に前進しない、攻撃こそが共産党の武器である。これを放棄することは、自ら敗北路線を選択し、闇の中を歩いている。そのことに気づくべきだ。