東京都議会選挙の結果について!
    一言でいえば久しぶりの大勝利である。
            ただし、多くの問題も内包している。

                                                 平成25(2013)年6月29日

 都議会選挙の勝利の意義は、選挙と言えば負け続けて居た共産党の凋落傾向が単純に一直線に転がり落ちるもので無いことを示したことである。

<東京都議会選挙は大勝利>

  今回の選挙に対して様々な論評が加えられているが、選挙は結果がすべてであるから、現有勢力を倍加したことは、大勝利である。この意義は、この間選挙で常に負け続け、選挙で勝つという事を体験したことが無い人たちに対する大きな励ましになったと思われる。

党中央は、選挙戦が自共対決の様相を示しつつあると位置づけ、自民党や公明党ではダメだという人の受け皿として、一定程度認められたことは大きいと思われる。また、議席数で民主党を抜き、野党第一党になったことの政治的意義も大きいと思われる。さらに、東京都議会において明らかに無視できない勢力を勝ち取った。

 自共対決を掲げ、その受け皿が共産党だと主張が、国民から無視されず、選挙結果として現れたことは、今後の活動展開に多きい影響力を与えるであろう。

<選挙結果の分析は、多くの視点から見ることが必要。>

 最初にも言ったが議席数が2倍を超えたことは、誰が何と言おうが躍進だ。しかしこの躍進が、本物か、間近に迫った参議院選挙にどのような影響を与えるか等については冷静な分析が必要だ。

 選挙戦は議席数で勝利した者は「勝った」と叫ぶ権利がある。しかし党内では冷静な分析が必要である。ここ20年間の都議会選挙おける党派間の勢力がどのように動いているかをまず見てみたい。(資料1参照)

資料1

選挙年

1993年

1997年

2001年

2005年

2009年

2013年

首相/知事

宮沢/鈴木

橋下/青島

小泉/石原

小泉/石原

麻生/石原

安倍/猪瀬

投票率

54.43%

40.80%

50.08%

43.99%

54.49%

43.50%

自民党

1,443,733

1,160,762

1,721,603

1,339,548

1,458,108

1,633,303

31.10%

30.82%

35.96%

30.66%

25.88%

36.04%

44議席

54議席

53議席

48議席

38議席

59議席

民主党


388,928

647,572

1,070,893

2,298,494

690,622

10.33%

13.53%

24.51%

40.79%

15.24%

12議席

22議席

35議席

54議席

15議席

公明党

603121

705,816

722,464

786,292

743,427

639,100

1351%

18.74%

15.09%

18.00%

13.19%

14.10%

13議席

24議席

23議席

23議席

23議席+

23議席

共産党

626,870

803,378

748,085

680,200

707,602

616721

13.51%

21.33%

15.63%

15.57%

12.56%

13.61%

13議席

26議席

15愚席

13議席

8議席

17議席


 まずこの資料から分かることは、今回の共産党の勝利は、低投票率であったこともあるが(前回54.49%、今回43.50%、―10.99%)得票数では前回の707,602票、今回616,721票と90881得票数を減らしている。(1997年の最高得票数803,378から見れば、186,667票少ない。得票率で7.72%少ない)

<共産党が野党第一党になった>

 今回共産党が民主党を抜いて野党第一党になったが、この内容を見ておかなければならない。今回の選挙では、総得票数では、民主党690,622票、共産党は616,721であった。民主党は共産党より73,901票多く獲得しながら、共産党より2議席少ない15議席にとどまった。これは前回の当選者が多かったために、候補者調整ができず共倒れになった選挙区も多い。(4選挙区ある)

<民主党は2人区で善戦【16中10人】、共産党は3人区以上で手堅く【19中16】>

 さらに共産党と民主党を見れば、おかしな特徴がある。民主党は2人区で10名(10/16)の当選を勝ち取っているが3人区で1人、4人区1人、5人区0人、6人区で2人、8人区で1名(5/19)と当選者数が多い選挙区で振るわない。

 それに対して共産党は、2人区は1人(1/16)であるが、3人区で2人(5選挙区中)、4人区では6人(全選挙区)、5人区では3人(全選挙区)、6人区では3人(全選挙区)、8人区では2人(全選挙区)と手堅く勝っている。(16/19)

 これが民主党の方が得票数が多いが議席数が少ないに結びついている。

<上記結果は、国民は自民党の対抗軸はまだ民主党と見ている。>

  先にも述べたが、共産党は自共対決を訴え、民主党を抜いて野党第一党の議席数を方取ったのだから、共産党が自民党に対する政党として認められたと胸を張るが、実際は2人区では、共産党の候補者は1名に対して民主党は10名も当選している。多くの国民は2人区では自民党と民主党を選んでいる。それは未だに民主党が野党第一党の受け皿だと認識しているからであろう。

  民主党は自らの現在の位置が分からず、二人区では善戦しながら、多人数の当選者を出す選挙区では5名(19選挙区中)しか当選していない。これに対して共産党は、2人区では1名だが、3人以上の当選者を出す19選挙区中16選挙区で当選者を出している。(落としたのは3人区の3名だけである。)

  ここに今回の選挙の特徴がある。国民は安倍首相や猪瀬都政を必ずしも支持していない。その受け皿が共産党とみているかと言えば必ずしもそうではなく現状ではまだ民主党だと見ている。それが民主党の二人区での10名の当選である。

  しかし、共産党を全く信用していないかと言えばそうではなく、三人区以上であれば、その一角を共産党が占めることを期待している(あるいは容認している)とみられる。

 

<共産党は今回の都議選での躍進で参議院選挙も躍進できるか?>

  議席数では躍進したが、投票数では前回よりも下がっており、必ずしも、参議院選挙で勝利する保証は勝ち取っていない。今回の選挙でたとえば民主党の候補で最高に取った武蔵野市で43.28%という数字を出している。(同じ武蔵野の共産党候補者は11.88%でしかない。)その他でも小金井市では38.55%確保している。(同じ小金井の共産党候補者は11.75%でしかない。)やはり政党の持っている本来の強さは、1人区2人区で現れる。上記武蔵野市、小金井市は両方とも1人区である。

共産党の候補者で最高得票数を挙げたのは、文京区の候補者で26.58%であるが(2人区で当選)、どうあがいてみても30%を取る候補者が生まれない。ここに共産党の限界がある、 

 ちなみに、公明党の最高得票数は荒川区の27.69%であり、この政党も強そうには見えるがアキレス腱があり、やはり30%を上回ることはできない。

  参考に自民党であるが、島部の80.96%は例外ではあるが、青梅市では75.11%を獲得している。(対立候補は共産党だけであるが、24,89%である。)これが自共対決の共産党の力である。(力不足は否めない)

 つまりその党の最高得票率が、伸び代であり、その数値までは、候補者がよかったら、前進するが、共産党がいくら頑張っても現状では、得票率30%を超えることができない。自民党は、得票率75%まで伸び代があり、民主党は43%位まで伸び代がある。つまり候補者が良ければ勝てる選挙区も出てくるという事である。

<公明党と共産党の将来性>

  公明党と共産党は、公明党が30%の壁が乗り越えられず、共産党は25%の壁を乗り越えることができない。これは候補者の善し悪しや、政策の善し悪しで乗り越えられるものではない、その政党に対する忌避意識(拒絶反応)があるという事である。

  何があっても共産党だけには入れないという人が、75%も抱えてしまっている。青梅の選挙では自民党と共産党の一騎打ちであった。この選挙で自民党は30,208(75.10%)、共産党は10,013(24.89%)である。この選挙区では前回の共産党の得票率は(8.92%)であり大躍進しているが、おそらく自民党以外の立候補者があったと思われる。自共対決の真剣勝負になった場合、共産党は25%の壁が乗り越えられないことを示している。自民対共産党の一騎打ちは、他党派の支持者の多くは、共産党に流れず自民党に流れる。これが現実の姿である。共産党は25%の壁を打ち破れないのである。

  この克服に力を入れない限り共産党の躍進は絶対に実現しない。この場合、公明党は創価学会を基盤としていることがこの壁であるが、公明党はこの壁をはずせない。これをはずせば、公明党の存在価値がなくなってしまう。

  これに対して、共産党は、党内民主主義が無く開かれた国民政党に脱皮できていないところに拒否反応がある。これも人によってはこれをはずせば共産党でなくなるから、やはりこの政党も頭打ちだという人もいると思うが、今の共産党に、民主集中制や国民から遊離した行動が必ずしも必要と思われない。

  現在の指導部の頭は固いが、何時の日かこれらは乗り越えられる日が来るのではと私は希望的観測を持っている。

<おそらく参議院選挙では、>

 今回の選挙は維新がコケ、民主党がコケタ状況で戦われた。共産党が勝利間で沸いている中に水を差すようで悪いが、今回の選挙前に橋下の慰安婦問題の発言が無く、また民主の選挙戦術がしっかりしていれば、共産党は現状維持が良いとこであったのではと思っている。

 最近の選挙では維新が勝利し、そのあおりを一番受けていたのは共産党であった。今回は維新に票を奪われることが無かったため、共産党は躍進した。維新の復活は考えにくいが、また新たな仕掛けが用意される危険性は常にある。自共対決を唱え自民党と対等に戦うにはまだまだ非力である。

 私は一斉地方選挙以降の共産党の衰退を維新との関係で見てきた。たとえば高槻市の選挙結果や枚方市や箕面市、和泉市や茨木市の選挙を見てきたが、いずれも前回より大幅に負けており、その大きな原因は維新の躍進であった。冷静に見れば前回比2割ぐらいの票が減っているが、その多くは維新に引きはがされているのが実態である。

 維新の影響力が減った今、参議院選挙は一定有利に働くが、先にあげて忌避意識の克服を本格的に取り組まない限り共産党の躍進は無い。


以下参考に、今回の都議選の共産党の候補の数字を資料として添付する。

1.得票率順






当落

定員

候補者

選挙区

現新

得票数

全票数

得票率

当選

2

小竹 ひろ子

文京区

19693

74084

26.58%

 

1

みねざき拓実

青梅市

10013

40221

24.89%

 

2

畠山まこと

北多摩第四選挙区

13647

64457

21.17%

 

2

ちかざわ美樹

日野市

11818

60343

19.58%

当選

4

そねはじめ

北区選挙区

25108

131130

19.15%

当選

4

大山とも子

新宿区

18496

103795

17.82%

 

2

岸本なお子

北多摩第三選挙区

16379

96249

17.02%

 

2

中町さとし

立川市

8792

52606

16.71%

当選

3

尾崎あや子

北多摩第一選挙区

18403

111561

16.50%

当選

6

大島よしえ

足立区

37683

234502

16.07%

当選

4

植木こうじ

中野区

16909

111352

15.19%

当選

5

とくとめ道信

板橋区

28010

188446

14.86%

当選

3

米倉春奈

豊島区

13320

90191

14.77%

 

2

杉山 光男

台東区

9193

62315

14.75%

当選

4

あぜ上 三和子

江東区

25918

176691

14.67%

 

2

坂口いくみ

南多摩選挙区

12386

84491

14.66%

 

2

井上たかし

西多摩選挙区

12314

85496

14.40%

 

2

西尾かつひ

三鷹市

8513

60031

14.18%

 

2

森住孝明

小平市

7316

53638

13.64%

当選

5

清水ひで子

八王子市

28473

209779

13.57%

 

2

鈴木けんいち

荒川区

9798

72954

13.43%

 

2

渡辺じゅん子

北多摩第二選挙区

9249

70095

13.19%

 

2

おりかさ裕治

渋谷区

8027

61855

12.98%

 

1

冨田なおき

千代田区

2231

17309

12.89%

当選

6

吉田信夫

杉並区

24565

191912

12.80%

当選

6

松村ともあき

練馬区

31218

254456

12.27%

当選

8

かち 佳代子

大田区

30486

249001

12.24%

当選

4

和泉なおみ

葛飾区

18912

156073

12.12%

当選

4

白石たみお

品川区

15338

127228

12.06%

 

1

小川明弘

武蔵野市

5895

49643

11.87%

当選

5

河野ゆりえ

江戸川区

25783

217617

11.85%

 

1

田辺七郎

中央区

4992

42169

11.84%

 

2

いのくま正

港区選

6737

57353

11.75%

 

1

渡辺しんじ

小金井市

4457

37947

11.75%

 

2

金子めぐみ

府中市

9221

78993

11.67%

 

1

大野まこと

昭島市

3986

35273

11.30%

 

3

松村りょうすけ

町田市

16739

158290

10.57%

 

3

村本 ひろや

墨田区

9047

91928

9.84%

 

2

朝倉文男

西東京市

5841

61201

9.54%

 

3

松嶋祐一郎

目黒区

8211

88960

9.23%

 

1

綾とおる

島部

1062

13570

7.83%

当選

8

里吉ゆみ

世田谷区

22541

307070

7.34%

※この表は、共産党の候補者の得票順に並べたものである。

★黄色は善戦、白はまあまあ、赤は前進とは言えないという物である。

★ただし青梅は得票率では2位であるが、候補者が自民党と共産党だけであったからである。(そういう意味では他党派の立候補との関係で見ないと正確ではない。)

★たとえば、世田谷区はすべての党派が立候補しており、政党間の力関係が読みやすい選挙区であるが、共産党は当選いたものの、8名区だから受かったものである。(7位である)つまり本格的に他党派が挑んだ選挙区では7.3%と最低の得票率(共産党内で)を示している。この現実を直視すべきだ。

  この区の1位、2位、3位は自民党、4位、5位は公明党、6位がみんなの党、7位が共産党、8位ネットである。この実態を見れば、自共対決などとは言えないお寒い状況である。民主党は35044票取りながら、候補者を2人たてたために敗北している。一人にしていれば、2位で当選できる実力あった。

資料2:前回の選挙との得票率比較

 

選挙区

 

定員

 

現新

今回得票

全会得票

前回比
得票率

得票数

得票率

得票数

得票率

青梅市

1

 新

10013

24.89%

5329

8.92

2.79%

三鷹市

2

 新

8513

14.18%

6564

8.27

1.71%

西多摩選挙区

2

 新

12314

14.40%

8633

8.46

1.70%

千代田区

1

 新

2231

12.89%

1914

8.91

1.45%

杉並区

6

 現

24565

12.80%

22100

9.24

1.39%

足立区

6

 現

37683

16.07%

34130

11.8

1.36%

武蔵野市

1

 新

5895

11.87%

5623

8.88

1.34%

練馬区

6

 元

31218

12.27%

29575

9.32

1.32%

荒川区

2

 新

9798

13.43%

9823

10.89

1.23%

中央区

1

 新

4992

11.84%

4896

9.71

1.22%

府中市

2

 新

9221

11.67%

10547

9.96

1.17%

北区選挙区

4

 元

25108

19.15%

26962

16.79

1.14%

八王子市

5

 現

28473

13.57%

30927

12.08

1.12%

中野区

4

 元

16909

15.19%

19279

13.78

1.10%

南多摩選挙区

2

 新

12386

14.66%

13670

13.38

1.10%

北多摩第二選挙区

2

 新

9249

13.19%

9798

12.06

1.09%

新宿区

4

 現

18496

17.82%

20870

16.31

1.09%

北多摩第三選挙区

2

 新

16379

17.02%

19717

15.97

1.07%

小平市

2

 新

7316

13.64%

9087

12.83

1.06%

江東区

4

 現

25918

14.67%

28838

13.84

1.06%

文京区

2

 元

19693

26.58%

23125

25.22

1.05%

江戸川区

5

 元

25783

11.85%

30448

11.26

1.05%

立川市

2

 新

8792

16.71%

11442

16.05

1.04%

北多摩第一選挙区

3

 新

18403

16.50%

22333

15.9

1.04%

北多摩第四選挙区

2

 新

13647

21.17%

17943

21.48

0.99%

葛飾区

4

 新

18912

12.12%

23574

12.31

0.98%

世田谷区

8

 新

22541

7.34%

28386

7.48

0.98%

板橋区

5

 新

28010

14.86%

35455

15.33

0.97%

大田区

8

 現

30486

12.24%

40033

12.89

0.95%

台東区

2

 新

9193

14.75%

11400

15.73

0.94%

豊島区

3

 新

13320

14.77%

17863

16.13

0.92%

町田市

3

 新

16739

10.57%

22773

11.63

0.91%

品川区

4

 新

15338

12.06%

21742

13.67

0.88%

日野市

2

 新

11818

19.58%

16980

22.39

0.87%

目黒区

3

 新

8211

9.23%

12383

11.08

0.83%

港区選

2

 新

6737

11.75%

11144

14.59

0.81%

渋谷区

2

 新

8027

12.98%

14579

18.61

0.70%

墨田区

3

 新

9047

9.84%

15529

14.26

0.69%

西東京市

2

 新

5841

9.54%

12196

16.03

0.60%

小金井市

1

 新

4457

11.75%

#VALUE!

昭島市

1

 新

3986

11.30%

#VALUE!

島部

1

 新

1062

7.83%

#VALUE!

 

 

 

607215

 

707610

 

 


 大躍進と言っているが、前回選挙に比べ後退している選挙区も15選挙区ある。世田谷区の7.34%はひどい。この大選挙区で他党派との真剣勝負が戦われており、ここで力負けしている姿は今回の躍進の怪しいところであり、この分析をしっかりしないと、今後の前進につながらない。