しんぶん赤旗から「イスラム国」が消えた


平成27(2015)年2月23日


志位委員長は代表質問で「イスラム国」と語らず「IS」と語った。

 「イスラム国」の日本人殺害警告を受けて、報道管制(報道の自主規制を求めた)が行われマスコミ各紙は一斉に政府側の立場に立った報道を始めた。
 この際、赤旗がどのような報道をするかが問われたが、赤旗も各紙と同じ立場をとり、安倍首相のエジプトでの発言の問題点など一切封印した。
 共産党の姿勢が最も明らかになったのは、池内議員がツイッターで安倍首相を批判した際、志位委員長が「政府が一生懸命人質解放に努力している状況下で、そのような批判は間違っていると叱責し」ツイッターの削除を行わせたことである。
 さらに後、後藤健二さんの殺害実行のビデオがインターネットで流されると、志位委員長による「声明」が出され、「イスラム国」を包囲し「解体」すると見栄を切った。この日の読売新聞や産経新聞を読んでみてもこのような過激な記事はなく、安倍首相も含めてその主張はテロとの戦いに限定されていた。
 志位「声明」は日本のどの政党よりも、マスコミよりも過激であり、人質の殺害という事に直面し、一時的な気分の高揚から発せられた「声明」かと思っていたが、志位氏は確信犯であり、国会での代表質問に当たっても、「イスラム国」の「解体」を政府に迫った。注1

注1:共産党のHPでは志位氏の代表質問を以下のように上手にまとめていますが
   テロへの対応は、「国連中心に、国際法、国際人道法を厳格に守って行動す
  ることが何よりも重要だ」と主張した志位氏。ISによる日本人殺害事件に関
  しては、「テロに屈する」の一言で異論を封じ、冷静な検証を拒否する首相の
  態度を改め、検証に必要な情報を公開するよう要求。事件を機に「海外で戦争
  する国」づくりを推進しようとする動きを批判しました。さらに、テロの温床
  を広げる結果となったアフガン・イラク戦争と日本政府の対応の歴史的検証を
  求めました。


  実際の志位氏の代表質問は、
   「ISへの対応で、いま求められているのは、国際社会が一致団結して、一
  連の国連安保理決議に基づき、外国人戦闘員の参加を阻止し、資金源を断ち、
  テロ組織を武装解除と解体に追い込んでいくことであります。」というのが志
  位氏の発言の「肝」です。これは志位「声明」と同じ内容です。変わっている
  のは。「イスラム国」が「IS」に変わっただけです。(この表現ではアメリ
  カとも安倍政権も同じ立場です。)

 この時点で志位発言の一番の問題は、軍事的手段に頼らず、平和的な手段で日本はイスラム国の「解体」に貢献すべきだとの主張を行わず、政府に迫っていることです。22日付け毎日新聞は、「対テロ国際会議」という【社説】を掲げているが、赤旗と違い道理ある主張を行っている。その締めくくりの文書だけ引用する「だが日本は人道支援に徹したい。米国や欧州と違い、日本は歴史的に中東・アフリカ地域の紛争にも植民地支配にも関与してこなかった。中東諸国から見ても、日本が軍事行動に関するのは違和感があろう。
 中東で日本が長年かけて築いてきた信用を大切にしたい。」と書いている。この主張が赤旗にはない。単に「イスラム国」の「解体」を目指すだけを声高に叫んでいる。その声は安倍首相によって、有志連合参加の後押しにしか聞こえないであろう。

安倍首相は「イスラム国」を「ISIL」と呼ぶように呼びかけた。

 この問題は1月26日自民党の役員会で、イスラム派過激組織「イスラム国」の呼称について、原則として「ISIL(アイシル)(イラク・レバノンのイスラム国)」か「いわゆるイスラム国」という表現を使うことを申し合わせた。(産経新聞 1月26日(月)18時35分配信)
 その理由は、「党内から『日本がイスラム国を独立国家として承認しているかのような印象を与えかねない』などという懸念が挙がっていたためだ。」とされている。(「ISIL」は「the Islamic State in Iraq and the Levant」)の略称。

 おもしろいのは、これに対してNHKは、ニュースウォッチ9で「日本政府や世界各国は "イスラム国" を "ISIL/ISIS" と呼びイスラム諸国と区別していますが、
NHKはこれからも日本語で『イスラム国』と呼んでいきます」(NHK 2015年01月27日22:12)と主張した。
 
 安倍晋三首相は30日の衆院予算委員会で、政府が「イスラム国」を使わず、英語表記の「ISIL(アイシル)」で統一している。マスコミ等もこの表現を使うように呼びかけた。

 この安倍首相の呼びかけを最も忠実に守っているのが、ここでもしんぶん赤旗である。「イスラム国」問題では共産党が安倍首相に最も近い応援団に成り下がっている。

 まず、しんぶん赤旗はどのように報道しているか見ていく。
◎ しんぶん赤旗2月22日付6面【国際】「IS爆弾テロ40人死亡」、「リビア
  報復の連鎖最悪規模に」という見出しで
   記事本文も「過激派組織ISが・・・」「IS関連施設」「ISは」などと呼
  び、「イスラム国」という言葉は一切あらわれません。

◎しんぶん赤旗2月23日付2面【政治】「政府・与党 恒久法制定で中東派兵に
道」という記事、
  中見出しで「IS戦へ軍事策次つぎ」掲げ、本文では、「過激派武装組織IS
による日本人2人の殺害」という文言から書き始めている。「イスラム国」とい
う文言は一切入っていない。
  ただ、同日付の5面【国際】でのトルコ飛び地兵士40人救出という記事で
は、「ISが包囲」という見出しを掲げながら、記事の中には、「過激派組織
 『イスラム国』に包囲された」という文言が出てくる。これは編集方針が確立し
 ていないのか、それともこれは時事の配信記事であり、そのような場合、記事内
 容を触ることができないのか分からない。

次に他のマスコミはどのように伝えているか見ていきたい。

◎ 朝日新聞  2015年2月23日05時00分 (以下トルコでの軍事作戦の記事は23日
  付)
  シリア飛び地から兵士救出 「イスラム国」が包囲か 
◎ テレビ朝日
  「イスラム国」と報道
◎ 毎日新聞
  トルコ:シリアで軍事作戦 IS包囲の飛び地、自国兵を救出 有志国に事前通
 告せず(見出し)
  イスラム過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)
◎ 読売新聞
 「イスラム国」、エジプト人21人「殺害」
 イスラム過激派組織「イスラム国」は
◎ 産経新聞
 【イスラム国】
  新たな映像をネットで公開 殺害予告か…おりの中にクルド兵士ら21人
  イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」
◎ 東京新聞
  シリア北部の飛び地領土 トルコ軍が越境作戦
  過激派組織「イスラム国」(IS)
◎ 京都新聞
  トルコ飛び地で大規模な越境作戦シリア北部のオスマン廟
  過激派組織「イスラム国」の脅威が迫り
◎ NHK
  ISがクルド兵殺害示唆の映像を投稿 2月22日 22時34分
  過激派組織IS=イスラミックステートは、という言葉を使っている。

 NHKは、1月27日には、「イスラム国」と今後も報道していくと主張したが、変えているようだ。

 この呼称問題は、トルコ大使館から2月9日、日本のメディアや政府に対して、「イスラム国」という名称の使用を止めるように 要請もあり、どのように呼ぶのがいいのかの判断はむつかしいが、赤旗はなぜ変えたのかその経緯が問われる。政府はこの目的を「『イスラム国』と呼べば、国家であるという誤解を与え、イスラム諸国と混同する恐れから、今後は「イスラム国」とは呼ばず「ISIL」で統一する旨表明し、安倍首相や管官房長官含め「ISIL」で通しています。
 この目的は明らかに「イスラム国」の殲滅を狙い軍事行動を行う場合、国民が「国家」と認識し、戦争になることは反対だという世論を抑えるため、単なる「テロ組織」だという印象を深めるための小細工でしかない。
 赤旗は政府のこの企みに乗ったのか、そうではなく、「イスラム国」という呼称が、イスラム圏の多くの国民に対して悪印象を与え、日本国内においても、イスラム圏の人たちへの誤った攻撃がなされることを防ぐためにこの手法をとったのか分からない。
 ただ状況としては、志位「声明」が出され、代表質問でも「イスラム国」の「解体」を安倍首相に迫った状況から、今回も政府の見解を受け入れ、他のマスコミよりもいち早くしんぶん赤旗から「イスラム国」という表現を削除し、優等生を演じているのでは勘ぐりたくなる。

 「イスラム国」問題で、何かがおかしい共産党・・・大政翼賛会に吸収されるのでは?

 イスラム国問題で共産党はおかしな動きを行っている。以下それを列挙すると
1.報道管制(自主規制)に協力した。
   安倍首相のエジプトでの発言を批判しなかった。
   池内議員のツイッターを削除させた

2.今回の事件は、あらかじめ仕組まれた事件では?
   関西ローカルで、民間シンクタンクの独立総合研究所代表取締役社長、近畿
   大学経済学部総合経済政策学科客員教授青山繁晴氏がはっきりと今回の安倍
   首相の意図を解説した。
    @人質が囚われていることを百も承知で安倍首相は中東に言った
    Aそのことによって「イスラム国」側から、身代金要求が起こることも想
     定していた。
    B身代金要求があった際、ビタ一文出さないことも打ち合わせて行った。
     Cその狙いは、ダッカ事件の時に福田首相が、テロリストと交渉し身代金を
       払ったことで、日本は世界から馬鹿にされており、その汚名返上にまたと
       ない機会である。
     D「海外で戦争できる国」づくりにまたとないチャンスであり、安倍首相は
       橋下氏と連携し憲法改悪を押し進める。(公明党の客体かを狙っている)    
これら一連の動きだと、日本人2たりの拘束がわかった時点でこんな解説を行っていた。このような視点での追求が全くない。

3.後藤健二さんの殺害が報道されると(報道管制解除だと思ったが)
    @志位氏はとんでもない「声明」をだした。
    A小池氏はエジプトでの発言に問題があったのではと質問したが、赤旗を見
      ている限りその視点で編集されていない。
    B有志連合参加へ前のめりの、安倍首相を批判せず、代表質問で「イスラム
      国」解体を主張するなど、応援派に見える動きを行っている。

4. 最後の仕上げに「イスラム国」の名称を赤旗から抹消し「IS」に変えてしま
  った。国会での志位氏の代表質問(17日)も、「イスラム国」を使わず
  「iS」という言葉を使っている。(この代表質問以降に赤旗も「イスラム
  国」から「IS」に変えているように見える。)
 
 本日付(23日)、毎日新聞に「籾井NHK会長」という【社説】がある。見出しは「国の報道機関ではない」この記事の中に重要な指摘がある。以下引用する。

 慰安婦問題で籾井会長は「政府の正式なスタンスがまだ見えないので、放送するのが妥当かどうかは慎重に考えないといけない」と述べた。・・・
 「これはおかしい。政府の姿勢にかかわらず、自律的な放送をするのが報道機関の仕事だ。慰安婦問題に関して、どう歴史を振り返り、問題を見出すのかはNHKの課題だ。その後、釈明したが説得力がない。
 
 ここで述べられているように、「自律的な放送をするのが報道機関の仕事だ」この気概が赤旗にあるのであろうか?
 「イスラム国」をなぜやめたのか、読者が納得する説明が必要であろう。でないと流れが流れだけに、また安倍首相の軍門に下り、優等生になろうとしているように見える。