今回の参議院選挙共産党は大躍進した!

    しかし、違った視点からの総括も必要。      


                      平成25(2013)年7月25日


今回の参議院選挙共産党は大躍進した

 赤旗はどのように評価しているかまず見てみたい。

 「7月21日の参議院選挙で、日本共産党は、比例代表選挙での「5議席絶対確保」の目標を達成し、三つの選挙区で勝利して、改選前の3議席から8議席へ大躍進しました。(中略)

  比例代表選挙の得票では515万4千票(9.68%)を獲得し、前回参院選の356万票を159万票、昨年の衆議院選挙の369万票を146万票、それぞれ上回りました。中略

 国政選挙で、日本共産党が議席を伸ばしたのは、1998年以来、15年ぶりの出来事になりました。(中略)

 今回の結果は、この数年来取り組んできた党員拡大を根幹とする党勢拡大運動、「綱領・古典の連続教室」、職場支部や青年・学生分野での活動強化のためのとりくみなど、強く大きな党をつくる努力が、第一歩ではありますが実を結んだものです。(後略)としています。

 選挙で勝ったか負けたかは、何を基準に判断すべきか、「それは議席数が伸びたか、獲得票数が伸びたか、政党間の力関係を変えたか」がまず指標になると思います。その次に目標に照らして達成できたかも大事な指標だと思います。

  以下選挙結果からそれを見ていきたい。

参院比例代表党派別得票数と率











 

今回

前回

票数の増減

日本共産党

5,154,055

9.70%

3,563,557

6.10%

1,590,498

144.63%

自民党

18,460,404

34.70%

14,071,671

24.10%

4,388,733

131.19%

民主党

7,134,215

13.40%

18,450,140

31.60%

-11,315,925

38.67%

公明党

7,568,080

14.20%

7,639,432

13.10%

-71,352

99.07%

維新の会

6,355,299

11.90%

 

 

6,355,299

 

みんなの党

4,755,160

8.90%

7,943,650

13.60%

-3,188,490

59.86%

生活

943,836

1.80%

 

 

943,836

 

社民党

1,255,235

2.40%

2,242,736

3.80%

-987,501

55.97%

みどり

430,673

0.80%

 

 

430,673

 

 まず獲得議席数は、8名と改選数3を大幅に上回り、これは大勝利である。次に得票数であるが、

5,154,055

9.70%

3,563,557

6.10%

1,590,498

144.63%


  前回選挙比、159万票、率にして145%と言うのは大勝利である。他の政党と比較した場合、自民党は前回比131%、公明党は99%であり、みんなの党も60%であり、共産党の躍進が目立つ結果になっている。

 ★ 維新の会は前回参議院選挙時はまだ結成されていなかったので、衆議院比を参考に

 参議院議員

 率

 衆院議員選挙

 率

獲得票数の差

比率

維新の会

6,355,299

11.90%

12,262,228

20.61%

-5,906,929

51.83%


 橋下共同代表の慰安婦問題の発言もあり、その退潮傾向は歴然としている。先の衆議院選余のおよそ半分にまで得票数を減らしている。

ここまで見てくると、共産党は今回の選挙における最大の勝利者であるかに見える。数字的にはその面があるが、それはこの間の結果が悪すぎたために、そう見えている面もある。今回の選挙の総括をここ17年間の選挙結果から見れば、2005年の衆議院選挙及び2009年の衆議院選挙を少し上回った水準である。

 停滞期に入った中で奮闘した選挙戦結果の水準でしかない。(下記参考資料17年間の選挙結果参考)

 選挙の総括のもう一つの視点、目標に照らして、どうであったか、さらには情勢が求めている点から見ればどうであったかを見れば、厳しい面もある。

 まず目標であるが、比例区5議席、650万票であったが、5議席達成したので目標達成である。獲得目標数は650万票であったので、これは達成率86%、票数では約85万票足りないのである。それとこれは私の勘違いかも知れないが、今回の参議院選挙戦で、共産党は、比例区目標決定はしたが、選挙区選挙での獲得議席数の設定を行っていなかった。議席を取れるのは比例区のみであり、選挙区選挙は、比例区の票の掘り起こしの役割以外にないと最初から敗北主義でこの選挙戦臨んだ節がある。

  実際の選挙戦が始まって、初めてマスコミ等の各種選挙予想を見て、選挙区でも勝てる展望がある選挙区に気が付いたのではないかと私は見ている。(もしこの私の指摘が正しいのなら、この件についてもしっかり総括する必要がある。)

 この弱点は選挙を科学にせず、赤旗の部数との関係だけで見ているから、東京、大阪、京都ともに赤旗拡大に成功していないから、選挙で勝利できないとみていたのではないか。

 今回の選挙で、東京で山本太郎が当選した。彼は赤旗の機関誌を持っていないし、党員も持っていない。「自分ひとり」である。しかし彼は勝利した。それは原発反対の世論は未だに根深くある。彼はこれを掘り起こしたのだ。選挙は選挙戦と言う特殊な運動である。この情勢を切り開いた者が勝利する。(裏で中核が組織していたのかも知れないが・・・)

参議員選挙の勝因は何か

 赤旗の参議院選挙の結果について 2013年7月22日
 日本共産党中央委員会の常任幹部会の声明に基本的に異論はないが、勝因については異論がある。
 赤旗はこの勝因を、相も変わらず党勢拡大運動に求めている。この論理では説明できない。それなら選挙区選挙で勝った選挙区は他の都道府県より党勢拡大が成功していたのか?さらには和歌山県や山口県が結構奮闘している。和歌山県では、選挙区選挙で比例区の2倍近い得票を獲得している。それらを個別具体的に見ていくことが必要である。

 今回の勝因は赤旗の部数ではなく、
 第一は、野党陣営の総崩れの中で、自民党との対立軸を明確にしている共産党に国民の目が行った事にある。これはその前に戦われた東京都議会選挙の結果が大きく影響している。東京都議会選挙は議席数が2倍以上に増え、共産党が大躍進を遂げてイメージを多くの国民に与えた。
  マスコミも相当大きく取り上げてくれた。この共産党が自民党との対立軸だという設定と、元気があるというイメージが相当大きな影響力をもたらした。

 第二は、東京、大阪、京都ともに候補者が良かった。東京大阪は年齢も若くはつらつとしており、共産党という暗いイメージが全くなかった。また京都の候補者はユニークな人であり、選挙戦はどうでしたと聞かれ「楽しかったです」と返した。三人ともマスコミインタビューの返しがうまく、ここの政治家としての能力に優れていると思った。
 また、選挙の戦い方でも、東京では若者による勝手連的運動が、大阪では若者の町アメリカ村でラップで応援する姿もあり、共産党の選挙戦としては一皮向けて感じがした。この選挙戦の戦い方も大きかったと思われる。
 選挙区選挙で勝った東京、大阪、京都で比例区の得票数と選挙区の票数を比較した場合、東京の票数の伸びが一番悪いが、それは山本太郎に食われたと思われる。

今回の選挙で得票率が10%を超えた都道府県(選挙区・比例区)

 

選挙区

 獲得率

比例区

 

獲得率

@

高知

24.14

16.49

A

146.39%

A

京都

20.75

17.21

@

120.57%

B

和歌山

19.04

10.31

H

184.68%

C

山口

16.63

 

 

 

D

長野

15.77

13.87

B

113.70%

E

奈良

15.16

 

 

 

F

滋賀

15.12

10.46

G

144.55%

G

岐阜

13.56

 

 

 

H

大阪

12.79

11.92

D

107.30%

I

東京

12.49

13.71

C

91.10%

J

富山

12.09

 

 

 

K

埼玉

12.03

11.34

E

106.08%

L

群馬

11.39

 

 

 

M

北海道

11.35

10.76

F

105.48%

N

神奈川

11.33

10.19

I

111.19%

O

大分

11.01

 

 

 

P

愛媛

10.09

 

 

 

Q

福岡

10.64

 

 

 

R

福井

10.57

 

 

 


 この表は共産党の今回の選挙で奮闘した順に並べている。(左側が選挙区で10%以上の県、右側は比例区で10%を超えた件である)選挙区と比例区の票の獲得比率を調べてみた。

 この表で分かるのは、選挙区の一番は高知で、2番が京都、比例の一番が京都で2番が高知である。さらに京都は、選挙区選挙は比例区の120%の票数を獲得、大阪は107%を獲得したが、東京では比例の91%しか獲得していない。

選挙総括は、革新全体の枠組みを含めた総括を

  さらには、今回の選挙では、自民党の躍進で自民党・公明党で絶対的過半数を取られてしまい、憲法問題、消費税問題等様々な分野で、悪政が一層進む可能性が生まれたという状況もしっかり押さて行くことが必要である。

 例えば社民党が今回の選挙で大幅に得票数(前回比56%)を減らし、いよいよ消滅の危機さえ生まれている。またみどりの党も解党の危機まで追い込まれている。共産党は原発反対や憲法改悪反対などを考えるなら、これらの政党にも手をさしのべ、革新勢力全体が伸びたか否かの総括を行うぐらい大人にならなければならない。

 共産党の獲得議席数がいくら増えたかも大事ではあるが、情勢から考えれば、護憲勢力が過半数を制するという事も大切である。すでに共産党は、革新の要としてこれらにも注意を払うことが必要になったことを自覚すべきである。

参考:選挙戦の勝敗をどう見るか?

 衆議院選挙結果の敗北を覆い隠す共産党幹部の卑劣さ(平成25年1月12日)から抜粋

<最近17年間の選挙結果を分析する>

  共産党常任幹部会声明(選挙総括)が如何に「嘘とペテンの産物」であるかを実証するため、ここ17年間の選挙結果から見てみる。

 1996年衆議院選挙から2012年衆議院選挙までに参議院選挙も加えて11回の選挙が行われている。この結果を時系列に見れば、共産党が既に危機的状況まで負け続け、解党的出直しが必要なことが判る。以下に資料を添付する。

★1996年衆議院選挙〜2012年衆議院選挙までの共産党の得票数の推移

@

A

B

C

D

E 備 考

1996年

衆議院選

7,268,743

88.70%

167.90%

高揚期

1998年

参議院選

8,195,078

100.00%

189.30%

高揚期

2000年

衆議院選

6,719,016

81.99%

155.20%

高揚期(すこしかげりが)

2001年

参議院選

4,329,211

52.83%

100.00%

@致命的な敗北

2003年

衆議院選

4,586,172

55.96%

105.94%

停滞期

2004年

参議院選

4,362,573

53.23%

100.77%

停滞期

2005年

衆議院選

4,919,187

60.03%

113.63%

停滞期(それなりに奮闘)

2007年

参議院選

4,407,932

53.79%

101.82%

停滞期

2009年

衆議院選

4,943,886

60.33%

114.20%

停滞期(それなりに奮闘)

2010年

参議院選

3,563,556

43.48%

82.31%

A致命的な敗北 深刻

2012年

衆議院選

3,689,988

45.03%

85.23%

上記敗北を追随 深刻

 ★この表をどう見るかについて説明する。

1.最近17年間の選挙結果を時系列で表している。

2.左から順番に、@選挙の実施年度、A衆議院選挙か参議院選挙か、B獲得票数、Cその次が1998年を
100%とした場合の各年次の比較、D次の欄は、2001年を100%とした場合の各年次の比較。E最後の欄は
  備考。

3.重要なことは、高揚期(1996年、1998年)と停滞期(2000年〜2009年)と衰退期(2010年〜2012年)があること 
  である。

以下もう少し詳しく見てみたい。

 共産党が最大の得票数を獲得した、1998年の参議院選挙の獲得票数(約820万)を基準に分析していく。この17年間を3期に分けて分析する。

<第一期:高揚期>

 1996年の衆議院選挙は、第一期橋本内閣の下で行われた。中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変わった第一回目の選挙である。主な争点は消費税の是非であり、共産党は比例で7268743票獲得し、議席数も26獲得(+11)で躍進した。ちなみにこの選挙では、民主党の比例代表の票数は8949190であり、共産党の獲得票数のすごさが判る。

 その次の1998年参議院選挙で、共産党は大躍進し獲得票数は、比例代表で8195078票取り、(選挙区では8758759票取り)、民主党の比例代表の9063939に迫りうる力を見せた。
  さらに、2000年衆議院選挙で後退(26名から20名)するが、獲得票数は参議院比81.99%で踏みとどまった。

これが共産党:第一期黄金時代である。(あくまでここ17年間に限ってではあるが)

<第2期:敗北及び停滞期>

 大勝利した1998年の参議院選挙から3年後の2001年の参議院選挙で獲得票数(433万)得票率52.83%と半減した(1998年参議院選比)。この原因を究明する必要があったが、共産党はその作業を行わなかった。しかもその後の5回の選挙で挽回を目指すが、微増はしても、2度と1998年参議院選挙の水準の戻ることはできなかった。

2001年以降の5回の選挙(7年間)はそれなりに奮闘し、433万票を上回る結果を出している。とりわけ2005年の衆議院選挙と2009年の衆議院選挙では奮闘し、2005年衆議院選挙で492万票、2009年衆議院選挙で494万票を獲得し、最悪だった2001年参議院選挙比114%の得票を獲得している。この段階(2009年衆議院選)でおそらく長期低落傾向には止めをかけたと共産党は認識したと思われる。

<第三期:敗北が決定的になる。衰退期>

 しかし、2010年の参議院選挙で、決定的(歴史的)な敗北を期する。1998年の最大得票数の43.48%、まで落ち込んだ。これは1998年参議院選挙の最高時から、2001年の参議院選挙で半減し、2010の参議院選ではその最悪の数字(半減した数字)から82.31%まで落としている。(つまり共産党の凋落は2段階で行われていることに注目する必要がある。)この2回目の凋落は共産党の幹部すら予想だにしなかった結果だと思われるが、今回の衆議院選挙で、650万票、18議席を獲得目標にしたが、結果は369万票、8議席(−1)という共産党の現在の実力が突きつけられた。(ここまで現実を突きつけられたら、普通の人間なら、何が問題か真剣に考えようと思う。しかし共産党の幹部は性懲りもなく、来るべき参議院選挙にまた650万の目標を設定した。・・・よっぽど楽観主義か馬鹿かのどっちかであろう。)


<7月の参議院選挙に望むにあたって、何を考慮すべきか>

 今回の選挙では共産党は650万票の獲得目標を掲げた。これは最大獲得した820万票の8割を狙ったものと思われる。しかし結果は、369万票で、最大獲得した820万票の45.03%であった。(2010年参議院選挙とほぼ同じ結果になった。・・・共産党はわずかですが前進と主張しているが、総得票数が12年衆議院選挙の方が1726456票多いので(分母が大きいので)率的にはほぼ同じである。)

  先に見たように、共産党の凋落は、1998年の820万票から、2001年の433万票に大きく後退し(第一次凋落)、その挽回を図る取り組みを行い、その後の5回の選挙は、433万票以上の獲得を達成していた(停滞期)。しかし、209年の参議院選挙で第二次凋落機を迎えたにもかかわらず、この現実を受け止められず、今回の衆議院選挙では、一足飛びに、650万票の獲得狙ったが、2010年の参議院と同じ結果になってしまった。第一次凋落時は巻き返しを測り、この7年間一進一退ではあるが、それなりの水準を維持した。しかし2010年第二次凋落機に入ったことを気づかず、今回の衆議院選挙で650万票の獲得目標を掲げ、惨敗した。(負けた)選挙総括を行ってこなかったことのツケが回ってきた。

共産党は、選挙の勝利の最大の保証は赤旗拡大だと言って来ている。選挙前1年数ヶ月赤旗拡大に取り組み、結局は不成功に終わった。(注2)であるなら、650万票取れるはずがない。それにもかかわらず運動員に650万票の獲得目標を与え酷使した。何の保証もないのに運動員に対して無責任に煽りたてるやり方は必ず破綻する。

注2:2013年党旗びらき 志位委員長の挨拶の中で、「昨年1年間で、全党の努力によって拡大した読者は、日刊紙と日曜版をあわせますと約32万人にのぼります。たいへんなエネルギーをここに注ぎ込み、これだけの数の読者を増やしているわけです。しかし同時期に、約35万人の読者を減らして、差し引きでは3万人の読者減になりました。かりに減らした読者を半分にすることができれば、拡大数が同じでも、年間約14万人の読者増 になるということになります。」と発言しています。

 党の全てのエネルギーを投入しても増えない、この事実を直視すべきである。これからの撤退が遅れば遅れるほど党は衰退し、立ち直れなくなる。「立ち枯れ日本共産党」になってしまう。物事には見切りを付ける眼力、引き際が大切だ。

 今回の選挙で通常の指導者(戦略家)なら、まず1番底(停滞期)の400万代を目標に戦いを組織したと思われる。最大限、前回衆議院選挙で獲得した494を梃子に500万票の目標設定が現実的設定と思われる。(この水準「400万代」を10年間維持した実績がある)しかし共産党中央は成果を焦り、最大得票数の820万票の80%の650万票目標に設定し、結果は369万票と見事に敗北した。この時点で目標設定は正しかったのかの総括が必要である。・・・しかしこれを放棄し、2010年参議院選挙と比較し、僅かではあるが勝ったとまたもや勝ちにしがみついている。・・この辺も宗教政党が負けることが許されないのと同じ範疇の思考形態である。負ければなぜ負けたか徹底的に分析し、勝つための方針を編み出せば良い。(自民党の再建案はその点で優れている。)