橋下氏と安倍氏は瓜二つ、安倍氏に裏切られた橋下氏

       質問主意書をめぐる動き(安倍氏のいい加減さとヘタレが暴かれた)


                                                                                                       平成25(2013)年5月26日

<橋下氏は四面楚歌の状況>

 この間、橋下氏は「従軍慰安婦は必要であった」あるいは沖縄米軍もっとは「風俗の活用を」などの発言を行い、海外も含めた集中砲火にさらされている。気の早い週刊誌の見出しには「橋下徹の断末魔」という文言が躍っている。
 一方この陰に隠れて安倍首相は慰安婦問題からこそこそ逃げ出し、橋下発言と自分の考えは全く違うと逃げまくっている。
 もともと橋下氏の「従軍慰安婦発言」はどこから生まれたのか、それは安倍首相が、「村山談話」を見直す、「河野談話」を見直すと主張し、日本を普通の国家(戦争ができる国)にするため憲法を改正し、国防軍の創設を主張したことがすべての始まりである。
 橋下氏は公明党が、国防軍に消極的であり、またそのために必要な手立てである憲法96条先行改正に消極的なところを捉え、96条改正に必要な参議院での3分の2の確保を維新の会の躍進で勝ち取り、自公政権から、自民・維新政権へ安倍首相を招きいれるため、「慰安婦問題」で大暴れして、戦後のポツダム宣言受託下の日本からの脱出を狙い、安倍氏の関心を引こうとしたものである。

 しかし、功を焦った橋下氏は「従軍慰安婦は必要だった」と主張して、国内はもとより、韓国や中国、アメリカからも批判を喰らい、政党の指導者としての資質が問われる事態に陥っている。橋下市長は6月にサンフランシスコを訪問予定であったが、相手市長の面会拒否の動きもある。(注1)また自民党大阪市議団も訪米中止を要求している(注2)

注1:毎日新聞?5月22日(水)14時44分配信
     【ロサンゼルス堀山明子】米カリフォルニア州サンフランシスコ市の女性地位局報道官は21日、毎日新聞
    の電話取材に応じ、6月に同市訪問を予定している橋下徹・大阪市長に関するエミリー・ムラセ女性地位局
     長の見解について「橋下市長がもし(サンフランシスコの)リー市長と面会するなら、訪問前に慰安婦問題を巡
     る発言の謝罪と撤回を求める」と述べた。発言撤回がなければリー市長は面会を拒否すべきだとの立場を明
     らかにした。(後略)

注2:毎日新聞 5月23日(木)23時44分配信<「橋下大阪市長」6月訪米に慎重論 慰安婦発言で>

       旧日本軍の従軍慰安婦などを巡る発言で、橋下徹大阪市長が6月に予定している米国視察に慎重な対応を
    求める声が強まっている。訪問先のサンフランシスコ市幹部が「性奴隷は決して必要ではない」と地元紙に寄
    稿するなど批判が広がり、自民市議団は23日、「有益な視察が可能な状況ではない」と文書で中止を申し入
    れた。橋下市長も同日の定例記者会見で、「しっかり情報収集して判断しないと、大変なことになってしまう」と
    話し、状況を見守る意向を示した。来週中にも最終判断する方針だ。(後略)

<功名心を焦った二人の政治家>

 安倍首相は、「村山談話」や「河野談話」の見直しを主張し、国防軍の創設を訴えてきた。この安倍首相に最初に歩調を合わせたのは高市早苗氏であった。(注3)(この間こうした動きで一番早いのは片山さつき氏であったが、今回は高市早苗氏であった)

注3:朝日新聞2013年5月12日18時47分 <「村山談話の侵略、しっくりこない」自民・高市氏>
     自民党の高市早苗政調会長は12日、アジア諸国に対する「植民地支配 と侵略」への反省とおわびを表
    明した村山談話について「侵略という文言を入れているのは私自身しっくりきていない。自存自衛のために決
     然と立って戦うというのが当時の解釈だった」という認識を示した。福井市内で記者団に語った。
      また同日のNHK番組では「靖国参拝をここでやめたら終わりだ。国策に殉じて命を捧げた方をいかにおま
     つりするか、慰霊するかは国の内政の問題だ」とも語った。

 橋下氏の「従軍慰安婦は必要であった」発言が、5月13日、高市氏の「村山談話見直し」発言が5月12日とこれらの発言は関係しており、高市氏や橋下氏が、安倍首相の国防軍創設の思いを実現させるために自らが露払いを行って名声を挙げる手柄の取り合いから来た発言であった。

<自民党に菅官房長官あり、橋下には支える人材が無い>

 しかし、自民党は腐っても鯛である。この高市早苗の跳ね上がり発言を菅義偉官房長官がすぐさま高市氏の個人的発言だと否定した。(注4)

注4:東京新聞:2013年5月14日朝刊  <高市氏「村山談話」疑問発言 政府・与党幹部が苦言>
     自民党の高市早苗政調会長が過去の植民地支配と侵略を謝罪した村山富市首相談話を「しっくりこない」
     などと疑問視したことに対し、十三日、政府・与党幹部から批判や苦言が相次いだ。
      菅義偉官房長官は記者会見で「個人の見解だと思う。政府の見解は、私が明確に述べており、それに尽き
     る」と指摘。高市氏に電話し、政府見解を説明したことを明らかにした。
         高市氏が極東軍事裁判(東京裁判)の結果の受け入れを含めた歴史認識について「国家観、歴史
    観については、安倍首相自身(歴代内閣と)違った点もあるかと思う」と述べたことに対しても、菅氏は
    「あり得ない」と批判。「政府として正式に(裁判結果を)受け入れている。首相もきちんとした形で受け
    入れている」と反論した。(後略)
   
 自民党は、高市氏の発言が橋下氏の発言とオーバラップして国内はもとより国際的にも批判されることを恐れ、高市氏の発言の翌日には否定するという離れ業を見せた。一方橋下氏以外は烏合の衆である維新の会は、この橋下氏の発言を否定することすらできず、石原氏や西村真悟氏がさらに追い打ちをかけ(25日毎日新聞では、さらに中山成彬議員がハレンチな発言をしている)(注5)終始がつかなくなっている。

注5:毎日新聞:5月25日朝刊
     中山成彬代議士会長が24日、ツイッターで元慰安婦側が面談を拒否した(橋下市長との)ことを「化けの皮
    が剥がれるところだったのに残念」などと批判。足並みの乱れを浮き彫りにした。

<菅義偉官房長官は、安倍氏に火の粉が被らないように獅子奮迅の戦いを行っている>

 この従軍慰安婦発言(橋下氏)、村山談話見直し(高市早苗)の発言は安倍氏のそもそも持論であり、安倍氏の発言が無ければ、この二人のお調子者の発言はなかった。しかし、自民党の菅義偉官房長官は、この二人の発言と、安倍氏の発言に何ら関係が無かったように必死でつくろっている。マスコミもこの関係を少しは書くが、やはりそもそもの元凶は安倍氏だという事を隠ぺいしている。
 そのことを如実に表すのが、辻本清美氏が行った国会での追及、及び質問主意書の回答に対する政府(とりわけ安倍首相)の迷走ぶりははなはだしい。
 
 辻元清美氏が、二〇一三年三月八日の衆議院予算員会において「ブッシュ大統領に慰安婦問題について釈明したのではないか」と質問したのに対して、安倍首相が「今、事実関係において間違いを述べられたので、ちょうどいい機会ですから、ここではっきり述べさせていただきたいと思いますが、ブッシュ大統領との間の日米首脳会談においては、この問題は全く出ておりません(略)その事実関係が違うということだけははっきりと申し上げておきたい」と回答した。
 これに対して辻元氏は本年5月8日、国会での首相の答弁と官邸や外務省のホームページに書いてあることが違うので、どちらが正しいのかと質問主意書を提出した。
 この回答が、5月17日に閣議決定された答弁書で、安倍首相の答弁が間違っておりホームページの記述が事実であると政府が認めた注6)にも関わらず、安倍首相は最後の悪あがきで、5月20日の参議院決算委員会で民主党・神本議員の質問に対しても、安倍首相は「申し上げていない」と再び否定した。(注7)

注6:平成二十五年五月十七日
   内閣総理大臣安倍晋三
   衆議院議長 伊吹文明殿

      衆議院議員辻元清美君提出慰安婦問題についての安倍首相とブッシュ大統領との会合に関する質問に対
     して。別紙答弁書を送付する。

    答弁書
       三について
          平成二十五年三月八日の衆議院予算委員会における御指摘の安倍晋三閣総理大臣の答弁は、当該委
       員会における御指摘の辻元清美衆議院議員の発言の趣旨に対し、平成十九年四月二十七日(現地時間)
       にブッシュ大統領と行った記者会見において、安倍晋三内閣総理大臣(当時)が、慰安婦についての考
    え方として、「辛酸をなめられた元慰安婦の方々に、人間として、また総理として心から同情するとと
    もに、そうした極めて苦しい状況におかれたことについて申し訳ないという気持ちでいっぱいである、    二十世紀は人権侵害の多かった世紀であり、二十一世紀が人権侵害のない素晴らしい世紀になる    よう、日本としても貢献したいと考えている、と述べた。また、このような話を本日、ブッシュ大統領にも話
     した」旨の発言を行ったこと、また、このような安倍晋三内閣総理大臣(当時)の考え方について、ブッシュ
     大統領が評価を述べた事実関係を説明したものである。

注7:毎日新聞:5月21日朝刊  <首相、慰安婦発言の答弁書否定
    安倍首相は20日の参院決算委員会で、首相が第一次内閣時代の2007年に行ったブッシュ大統領(当時)と
   の首脳会談で従軍慰安婦問題について「申し訳ない」と発言したとの政府答弁書に対し、「共同記者会見の場
    で記者の質問に私が答えた。首脳会談の中で私がそう申し上げたわけではない」と否定した。(後略)
     ここで有能な菅氏が登場し、5月21日に菅官房長官が、「精査する」と引き取り、翌日に安倍首相の答弁を修
    正した。
       そもそも質問主意書の回答は内閣総理大臣名で行われ、閣議決定までして出される代物である。ここで、具
    体的に安倍氏がどう答えたかが書かれているのに、そんな発言はなかったという翌日の回答はまさに「殿ご乱
    心」の姿である。菅官房長官が引き取り、翌日こっそりと、2007年日米首脳会談で安倍氏はブッシュ大統領に
    謝ったことを認めた。これ以上否定すれば、安倍氏が橋下氏と共倒れすることを菅氏は嗅ぎ取り安倍氏を説
    得し再修正を行った。(注8)

注8;毎日新聞5月23日  <首相の慰安婦発言「あった」
      菅義偉官房長官は22日の記者会見で、安倍首相が第一次内閣の2007年4月にブッシュ大統領と会談した
      際、従軍慰安婦問題で「申し訳ない」と発言したかどうかについて「(首相が当時、米)議会の場で言ったこと
      を大統領にも説明した」と述べ、事実上認めた。首相は20日の参院決算委員会で「大統領との会談で言った
      わけではない」と否定していた。
 
 この安倍首相の発言(ウソ)は見逃されない重要な問題を含んでいる。橋下氏や高市氏など右翼政治家は、安倍氏を右翼の星と思いたてまつってきたが、この男は、すでに2007年訪米の際、ブッシュ大統領に慰安婦問題で「申し訳ない」と誤っていた。この事実を隠して、「村山談話」や「河野談話」の見直しを行い国防軍の創設と右翼の旗手のような振る舞いを行っていた。今回の辻元清美氏の質問主意書は、安倍首相が二枚舌を使うとんでもないヘタレだという事を暴露した。
  「注7」、「注8」の毎日新聞の記事は重要事項であるがベタ記事扱いであり、マスコミは橋下市長には言行不一致を暴露しているが、安倍首相については、追及の手を弱めている。


<最後にこの重要な問題を赤旗はどう伝えたか>

  赤旗は、まずこの件に対しては、沈黙を守ってきた。要するにセクト主義であり、辻元清美氏の質問主意書が、安倍首相の政治的立場がきわめていい加減なものであることを暴露しているにも関わらず、この質問主意書を題材として安倍首相に対する追及記事を書いていない。唯一5月23日赤旗に「首相がブッシュ氏に「申し訳ない」」「「慰安婦」発言で政府が統一見解」という記事をNEWS@ニュース欄で載せている。この赤旗のNEWS@ニュースの欄の位置づけは、時事通信などの配信記事であり、赤旗の主張は含まない欄である。事実今回の記事も毎日新聞の記事と同じ論調である。
  安倍首相の従軍慰安婦問題に対する発言のブレを時系列で追わない限り、この記事だけ載せても読者には何のことか分からない。この記事の重要性は、最初の辻元議員の追及と安倍首相の否定から質問主意書に発展し、その答弁書でいったん認めた内容を記事として報道し、さらにそれを安倍首相が否定した可笑しさを暴き、最後の最後、やっぱり認めたと書かない限り分からない。
  おちの部分だけ聞いても落語はつまらないのと同じだ、一連の流れの中でこの記事を報道しない限り、この記事の重要性は伝わらない。
 セクトに走り他党派の優れた活動を伝えない赤旗は、ジャーナリズムとして失格だし、本当に共産党が安倍首相と戦おうとしているのかその政治姿勢すら疑われる対応である。
 一国の総理が国会でウソの答弁を行い、質問主意書を出され、閣議決定までしてウソを認めたのに、それをまた否定する。最後に菅官房長官に助けてもらって本人は知らん顔をする。こんなことが許されるはずがない。
  おそらく安倍首相は、閣議決定を行い、自分の名前で出した質問主意書の回答を理解もせずに、伊吹議長に提出していたのではないか、この件は絶対に認めないウソを続けようと腹を固めていたのではないか、事務方が簡単に事実を書いてしまい、それを確かめもせず、提出してしまった。安倍首相は慌てて否定したが、菅官房長官は、アメリカが真実を知っており、これ以上ウソを重ねれば、橋下氏に対する追及が、安倍氏に代わることを恐れ、質問主意書の答弁が正しいと安倍総理を押し切ったと思われる。(有能な官吏である。)
  共産党はこれを追及できずただ眺めているだけである。この原因はセクトなのか能力が無いのか、敵に塩を送ろうとしているのか真意は分からない。