「保育園落ちた 日本死ね!」「賃上げで経済の活性化」「安保法制(戦争法)」


平成28(2016)年3月20日

 小ネタ集です。最近の赤旗や地域新聞を読んだ感想を書いてみます。取り上げたのは、見出しの三つの記事です。
 最初は、この間政治の世界に最もインパクトを与えた一主婦のブログでの発言です。

【1点目】

「保育園落ちた、日本死ね!」何なんだよ日本。一億総活躍社会じゃねーのかよ。


 日本中を揺るがした鋭い言葉。このブログは2月15日UPされましたが、たちまち大きな反響を呼び、2月17日には、「保育園落ちた日本死ね!!!」の匿名ブログに共感殺到「一億総活躍社会じゃねーのかよ!」にシェア3万超すという記事がインターネット上に出ています。
 このブログの内容を更に広げたのが、民主党の山尾志桜里氏が2月29日衆院予算委員会で取り上げたことにある。この際、安倍首相が「匿名である以上、実際本当に起こっているか、確認しようがない」と無責任な答弁をしたことや、自民党や大阪維新の議員が無責任な野次(「中身のある議論をしろ」「誰が書いたんだよ」「ちゃんと本人を出せ」等)を飛ばしたことから、このブログが大きな政治問題へと発展していく。
 3月5日には、「保育園落ちたのは私だ」と書かれたプラカードを手にした母親たちが、国会前に集まる抗議集会へと発展する。この自民党の無責任さと母親たちの闘いが影響したのか、毎日新聞が3月5、6日に実施した世論調査では、女性の内閣支持率は前回から11ポイントマイナスの37%急落、不支持率は8ポイント上昇した。
 

「保育園落ちた」悲鳴受け止め打開する政治を 赤旗主張(3月14日)


 この問題を赤旗はどう受け止めたか?私は非常に興味を持って見ていたが、やはり赤旗はダメであった。赤旗の主張がなぜダメなのか、赤旗はこのブログがなぜ受けたのか、その根本問題を理解せず、重要な所を切り捨てて記事にしているからである
 このブログが受けた唯一の理由は、「保育園落ちた、日本死ね!」と書いたところにある。この最後の「日本死ね!」に重要なインパクトがあったのだが、共産党はこのような過激な発言を好まない。意識的に「主張」の見出しから「日本死ね!」の部分を切り落としてこの問題を取り上げている。
 また、3月16日赤旗は、「保育所確保 緊急に」 「衆院予算委員会で田村智子氏 国の支援・解雇防止など提案」 「保育所の待機児童問題」という見出しを掲げ、記事を書いているが、その内容は「日本共産党の田村智子議員は14日の参院予算委員会で、「保育所落ちた」という匿名ブログを機に改めて社会問題となっている待機児童問題を取り上げました。という記記事書いています。

 この一主婦のブログは、「保育園落ちた、日本死ね!」の見出しの次に「何なんだよ日本。」「一億総活躍社会じゃあねーのかよ。」とつないでいる。保育園落ちたという現実から、安倍政権の政策全般と対置し、怒りをぶちまけている。ここにこのブログのすごさがあるのに、共産党は意識的に「保育園落ちた」だけを切り離し、待機児童の問題に矮小化して議論を進めている。

「言葉の持つ力」というものを共産党は重視しない。

 私は大学卒業後、共産党の「新日和見主義批判」を読んでビックリした。共産党は我々の時代の学生運動のやり方を批判した。学生の本分は学ぶことであり、まず学習しなければならない。運動は常識を持って戦わなければならず「パッション」に訴えるような運動は慎まなければならない。というようなことが書かれていた。私が覚えていのは、この「パッション」を否定したことだけである。何を言っているのかと思い辞書を引いたが「情熱」という意味だと知った。
 レーニンは宣伝と扇動を政治闘争に不可欠なものとし、「宣伝扇動」(agitprop)という名で それを表したが、共産党は学生運が持っていたこうした側面を否定した。
 この間の政治の動きを見ていても、例えば小泉劇場や大阪での橋下維新のすさまじい勢いは、言葉の持つ力である。アメリカの大統領の予備選のトランプ氏の躍進も言葉の力である。
 今回の「保育園落ちた、日本死ね!」についても、言葉は汚いが、そのことを表した主婦の気持ちは理解できるというのが一般的受け止め方である。特ダネの司会者小倉智昭は「日本は『どうなっているのだ』を『死ね』に置き換えた気持ちは伝わってきますよね」と感想をのべた。
 赤旗は、このブログの「死ね!」や「何が少子化だよクソ」「ふざけるな日本」などの言葉の汚さに驚き、このブログを正確に伝えず、一部だけを切り取って報道している」。

【2点目】

「ベア獲得も定額」労働者の怒りが伝わらない記事 赤旗春闘記事(3/?)


 赤旗の春闘記事は労働者の生活の現状や戦いの様子が全く伝えられず、安倍首相と同じ立場から春闘を見ている。
 以下赤旗を引用する。
 「春闘集中回答」「経済の好循環」に背
 自動車、電機などの金属大手の企業が16日、労働組合の2016年春闘要求にいっせいに回答しました。3月期決算の営業利益が過去最高の2.8兆円を見込むトヨタ自動車が、ベースアップ(ベア)を前年(4000円)の半分以下の1500円としたのをはじめ、全体としてほぼ半額のベア回答になりました。
 ・・・賃上げによる消費拡大で「経済の好循環」をはかる重要な春闘とみとめられましたが、結局は、財界が応えなかったことを示しています。

春闘は誰の為にあるのか?経済界のため、労働者のため

 赤旗の記事を見ていると、春闘とは一体何なのか訳けがわからなくなってきます。赤旗の記事は「『経済の好循環』をはかる重要な春闘」という位置づけを行っています。本来主役であるべき労働者がどっかに置き忘れられています。これが、私が言う「日本共産党最近おかしくないですか」の核心です。共産党は労働者の味方なのか経済界の味方か分からなくなってしまいます
 自民党政治を倒す戦いと、労働者の賃上げや労働条件の改善の闘いを結合して闘わない限り、政治は変わりません。労働者の生活改善に無関心で「経済の好循環」が図られれば、自動的に労働者の働く環境や賃金が上がると想定するのはお人よしでしかありません。
 現に過去最高の2.8兆円もの利益を上げたトヨタ自動車が、前年の4000円から半分以下の1500円に引き下げた姿こそが資本の側の本質である。さらには今回の結果は、アベノミクスを評価して、首相に協力してきた財界が、いち早くアベノミクスの失敗を悟り、安倍首相の要請に応えず、自らの企業の防衛に走ったからです。
 共産党が政権に入れば、企業の民主的統制で、企業が政府に協力してくれるという共産党の思いが幻想であることが示されて結果です。
 
【3点目】

安保法制(戦争法)反対の説明がとんでもなくおかしい。(街の灯)


 この間「街の灯」(日本共産党高槻市西部地域後援会ニュース)を取り上げているが、この「ニュース」は共産党の正式な機関が発行したものではなく、あくまでも後援会ニュースだと言えばそれまでだが、発行に当たっては共産党の地区委員会の「検閲」受けていると想定される。それを前提に批判していくことをあらかじめお断りしておきたい。

 この「街の灯」2016年3月号で「読者の声」という形で、「2千万署名運動と中国と北朝鮮の問題で思うこと」という記事を紙面全体の4分の1以上のスペースを割いて載せている。その中身は「なぜ『安保法案』(戦争法案)に反対するのか」であるが、その主張が面白い。

「北朝鮮・中国にリアルな危険があるのではなく」志位委員長

                         (2015/11月テレビ東京)

 志位委員長が、安保法制成立直後の2015年11月にテレビ東京の番組で「北朝鮮、中国にリアルの危険があるのではなく実際の危険は中東・アフリカにまで自衛隊が出て行き一緒に戦争をやることだ」と述べていたのに、北朝鮮の核実験が行われた事に対して「核実験の強行は地域と世界の平和と安定に対する極めて重大な逆行だ。暴挙であり、厳しく糾弾する」との談話を出したことが矛盾していると、産経新聞などか攻撃されていることを念頭に、その反論を書いた物であるが、その主張が共産党の正式な主張と全く異なっている。以下「街の灯」の該当」部分を引用する。

中国や北朝鮮などからの攻撃に十分対応できる。

 しかし、いわゆる安保法制=「戦争法」は中国や北朝鮮の脅威に対する法律ではない。もし中国や北朝鮮などから攻撃を受けるとしても「戦争法」がなくても十分に対応できる。・・・中国と北朝鮮、この二つの国は困りものである。しかし・・・・話せばまだわかる国かも知れない。もう一方の北朝鮮は・・・これが核兵器やミサイルを所有すれば、世界各国が危機感を抱くのは間違いない。(「街の灯」)
 この表現は、「中国や北朝鮮よりも、日本の自衛隊の装備が上回っており、十分勝利することが出来るから、安心してください」と言っているようなものである。この論理を認めるのであれば、自衛隊は常に中国や北朝鮮よりもより強大な軍隊として存続させることが要求され、まさに軍拡競争に加担する論理であり、憲法9条を守り、平和国家としての日本を維持していくという共産党の基本理念と全く異なる考え方である。

「憲法を破壊し『殺し殺される国』ではなく「9条を生かした平和外交戦略で!」

 この主張こそが共産党の主張であり、いま流行りコメディアンのセリフ「安心してください日本の自衛隊も結構強いのですよ」というような主張は、「安保法制(戦争法)」反対の立場と相いれない。