日本共産党第26回大会決議案批判(第1回)


平成25(2013)年11月19日



  日本共産党第26回大会決議案の批判を書き始めたが、長文であり、それに伴い批判も長文になり、何回かに分けて掲載したい、まだ全体を書き上げておらず当面書き上げた分を第一回として掲載する。全体ができあがった時点で全体のバランスを調整する可能性があるが、現時点での私の主張と受け取っていただければ幸いです。

第一章「自共対決」時代の本格的始まりと日本共産党

(1)「自共対決」時代の始まり

 まずこの決議案の最初の出だしの文書が「民主党の裏切りへの国民への失望と怒りの高まりのなか」と言う表現はやり過ぎではないか、第三章(20)統一戦線の現状と展望についてで「私たちの連合の対象となる相手が、従来の保守の流れも含む修正資本主義の潮流であることも、大いにありうることである。」と記しているがこれとの関連性が見えない。
 民主党と手を組むことはないが、自民党の中の反安倍勢力とは組む可能性があると主張しているのかわからない。民主党の政権運営は、政党としての一体感がなく、小沢問題を常に抱え、自らが掲げた施策の追求が十分できなかったが、それは反動勢力が一体となって民主党の積極的な方針を実行させないと言う嫌がらせの中で、実施できなかったものも多い。
 これを単純に「民主党の裏切り」と一刀両断に切り捨てるのは、今後「秘密保護法」や「憲法改悪反対」「原発即時ゼロ」「戦争できる国作り」などの統一戦線をくむ場合にも障害なる

 つぎに、日本の情勢は、「自共対決」時代の本格的な始まりというべき新たな時代を迎えている。この表現も正確でないのでは、その兆しは見られるが、まだまだ、「自共対決」が政治の主軸だという認識は一部にとどまっている。例えば政党支持率で、自民党は50%を超えており、共産党は民主党や公明党に続いて野党第三党の調査結果が主流である。調査によっては共産党が野党第一党の場合もあるが、第三党が定位置と思われる。本格的な自共対決は、共産党の支持が10%超える支持率を得るような状況でないと言い切れないのではと思っている。
 全く卑近な例で申し訳ないが、今日(17日)テレビのクイズ番組で日本の政党名を5つ上げ、その党首を答えよという問題があったが、その5つは自民党、公明党、民主党、みんなの党、日本維新の会、であり、共産党はなかった。この辺から見てもまだまだ自共対決が、国民全体の意識になっていないと思われる。
 また、18日毎日新聞一面トップ記事は、「福島主要都市現職3連敗」、「福島市長選新人が圧勝」、「進まぬ汚染不満噴出」、「与党支援も空振り」という記事を載せている。当選者は無所属新人で72441票(64.15%)、現職の候補者は自、公、社民支持でありながら32861票、(29.10%)ダブルスコアーで負けている。さらに共産党候補は全く圏外で7620票、(6.75%)であった。これが共産党の実力である。
 問題は、このニュースを赤旗は全く伝えていないことである。(18日朝刊で)自らに都合のよい記事は伝え、都合の悪い記事は伝えない、これでは党員支持者に真実を伝えずに洗脳する姿勢であり、国民的支持は得られない。(赤旗しか読んでいない人はだませても、一般紙も読んでいる人はすぐにおかしさに気づいてしまう。)

(2)これまでににない新しい特徴はどこにあるのか

  @「自民党と共産党との間の「受け皿政党」が消滅した」これも言い過ぎであろう。少なくとも、民主党は参議院選挙で17議席獲得しており、非改選と合わせれば59議席を有している。それに対して共産党は躍進したといえ8議席であり非改選議員と会わしても11議席に過ぎない。これは議案提出権を得て、政党としてやっと一人前になった言える状況でしかない。共産党の議席数の5倍もある政党を捉えて消滅したという分析は、相手政党に対する礼を欠いた態度であり、科学的分析と言える代物ではない。

 A「社会の土台では、「二つの異常」を特徴とする政治が崩壊的危機に」と書かれているが、この「二つの異常」が何を指しているのかは、共産党員以外はほぼ知られていない政治的言葉だと思われる。なぜなら共産党は25回大会で「二つの異常」という言葉を使ったが、その後四中総で「二つの害悪」と言ってみたり、七中総では「三つのゆがみ」と言う言葉を使っている。
 この「二つの異常は」、「二つの敵:アメリカ帝国主義と日本独占主義」の言い換えであり、日本共産党の綱領の根幹部分であるが、それが「異常」や「害悪」や「ゆがみ」に変質し、さらに二つが三つになったり二つになったり、揺れ動いている。
 共産党は7中総で「三つのゆがみ」という言葉を使い、三番目に「歴史逆行」を加えた。しかし、これは決定的な誤りである。二つの異常は、現在の日本を支配している勢力(権力)は誰かを規定した文書である。(本来は打倒すべき権力は何かという規定である)にもかかわらず、安倍政権の政策の特徴を三番目に入れることにより、打倒すべき権力構造ではなく、まさしく単なる「ゆがみ」に変えてしまった
 私は「異常」→「害悪」→「ゆがみ」と共産党なりにこの位置づけを進化させてきたものと理解していたが。今回26回大会決議で「異常」に先祖返りしている。共産党に取って最も重要な概念をコロコロ変えるようでは、国民の中にその言葉は入っていかないであろう。

B「「一点共闘」がさまざまな分野で広がる画期的動きが生まれている。」と主張しているが、果たしてそうであろうか?
 共産党は本来革新統一戦線を作ることを目標としていた。しかし最近共産党はこの言葉をあまり使わない。社会党が大きな勢力を占めていた当時は、この主張を行い、社会党を看板として扱い、裏で共産党が組織戦を戦い、革新自治体を日本全国に確立してきた。この革新の統一戦線は、時の権力者と直接戦う組織であり、自治体選挙で偉大なる力を発揮した。(1+1=2でなく、3にも4にもなると言われ、事実その結果を出していた。)この革新の統一戦線は、社会党が「社会・公明」共闘に舵を切り、社会党の裏切りによって分断されて行くが、その後社会党の凋落が明らかになると、共産党は革新統一という言葉を引っ込めてしまった。
 共産党は議会での勢力は小さかったが、大衆運動では社会党を上回る勢力を持ち原水爆禁止運動などでは新聞報道でも共産党系の原水協の方が大きく取り扱われていた。また学生運動の分野でも共産党の影響力は大きなものがあり、社会党はほぼ足場を持っていなかった。また労働組合運動では、多数は社会党系であったが、共産党は公務員労働者を中心に一定の勢力を有していた。
 これら共産党が主導する運動があって、さらに運動を進める為には「一点共同」を推し進めるというのなら分かるが、すでに共産党の指導する大衆運動が消滅する中での一点共同の呼びかけに見え、この一点共同が日本の政治に与える効果は限定的である。
 例えば衆議院選挙前、北海道で一点共闘が進み「オール北海道」路線が定着しつつあると叫ばれたが、選挙戦の結果は、北海道は票数を相当落としていた。農村の住民が共産党もTPPに反対してくれるなら、集会に参加してくださいと言っているに過ぎず、政治を変える勢力にはなり得ないし、個々の参加者の政治信条を変える取り組みにまで到達し得ない。
 確かにこれが化ける可能性はあるが、今の共産党の大衆運動を引っ張る力の現状からすれば、成功は難しいのではないか。 
 共産党は一点共闘や、赤旗の購読で、国民が共産党支持に変わると理解しているようだが、今日の日本社会の中で共産党を支持することは、相当自分に不利益が発生することが予想され、そう簡単に共産党支持者に変えて行くことはできない。
 共産党の支持者を生み出すのは要求課題を掲げて、ともに闘い、共産党に対する信頼を強める中でしか、共産党支持者に変えて行くことはできない。すべての出発点は戦いにある。
 共産党は「オール北海道」みたいな運動、北海道の名士が一同に介した集会に共産党も参加が求められたことを過剰評価し、これで共産党の支持が増えたように宣伝するが(赤旗1面トップ記事が2回あった。)このようなひな壇的集会で人間の心を変えることはできない。この集会はあくまで共産党を排除しない。共産党にも協力を求めるというものであり、「反共主義が克服された」という次元で捉えるべきである。
 かつて、革新自治体を作り出してきた社共の統一戦線とは次元が異なり、この組織は要求で一致しているだけであり、直接政治にかかわるものではない。共産党への支持獲得はさらなる戦いの中で得られる。これが衆議院選挙での答えであった。 

(3)日本共産党の不屈の奮闘がこの時代を切り開いた

 「この中で「二大政党づくり」の動きは、反共作戦である」という位置付けは、果たして正しいであろうか。共産党は自らに不利益な問題はすべて「反共攻撃」という言葉で片付ける。この言葉を聞いたら条件反射的に党員の戦闘の能力が発揮されるように仕組まれている。これは解放同盟の「部落民に取って不利益な問題は一切差別だ」という議論に似ている。
 このような単純な言葉(姿勢)で政治を語ることを改めない限り共産党の支持は増えないと私は思っている。
 例えば民主党で闘っている人や議員は、本当に共産党をやつけることを目標に政治活動を行っているのであろうか、自民党で闘っている人でも、共産党を最大の敵と思って本当に政治活動を行っているのであろうか、私は違うと思っている。確かに政党の歴史を見た場合、自民党は権力政党であり、基本的にはアメリカや大企業の代弁者である。これらの利益を最優先していることは間違いが無いが、彼らのすべてが私利私欲で活動しているのではなく、この自由社会こそが国民の生活や安全を守り自由な世界を築くものだと思って、高い意思を持って闘っている政治家も多くいると思っている。これはすべての政党に当てはまることである。
 それぞれが自らの信念に基づいて闘っているのであり、相手側の考え方思想にも敬意を払うべきである。
  ソ連や東欧の崩壊を見て、あるいは現在中国や北朝鮮を見て、あのような国になってはならないと思うことは、一般的に考えられることであり、そのような政治心情を持って活動することに何らおかしさはない。
  自民党等が、共産党が権力を握った場合、北朝鮮や、中国のような国になるという批判に対しては、反共攻撃だと反撃せず、理を持って説明すべきである。民主主義社会において、相手の政治姿勢の弱点を捉えて攻撃するのは当たり前の姿であり、自由な議論ができるところに民主主義の良さがある。
  共産党自身、安倍政権に対して「海外で戦争できる国作り」を推し進めていると批判している、そうであれば当然彼らは逆に、「社会主義こそ、他民族の抑圧を行い、自国民の言論の自由を奪い、生活できる保証すらしていない」と攻撃を受けるのは当然である。これと有効に闘う政治的力量が必要であり、「反共攻撃」だと一刀両断に切り捨てた論議は、味方陣営ではそれで勝ったように見えても、一般市民から見れば、共産党が権力を握れば共産党の批判ができない。自民党は権力を握っているが、何を言っても自由だ、この方が住みやすいと思ってしまう。
  この民主主義の持っている言論の自由という価値の重要性を、相手の攻撃には使うが、自らへの攻撃には認めない態度は、国民の中に相当の反発があることを知るべきだ。「反共攻撃」とは何かを整理し、もっと限定した使い方をしないと、自由主義社会における民主的な政党として社会的には認知されない。

(4)この情勢に日本共産党はどういう政治姿勢でのぞむか

 「対決」、「対案」、「共同」でまとめたのはわかりやすい。

第二章 世界の動きをどうとらえ どう働きかけるか

(5)「世界の構造変化」が生きた力を発揮しだした。

 20世紀におこった世界の最大の変化は、植民地体制が完全に崩壊し、民族自決が公認の世界的な原理となり、100を超える国々が新たに政治的独立を勝ち取って主権国家になったことにあった。
  20世紀におこった世界最大の変化を、植民地体制の崩壊と民族自決から語っているが、これは20世紀の歴史を偽造するものである。一言で言えば20世紀は戦争の時代であり、列強による植民地獲得闘争で二度の世界大戦を経験した。また20世紀は革命の時代でもあり第一次大戦(1914〜1918)の最中、ロシア帝国では史上初の社会主義革命(1917年)が行われ、世界最初の社会主義国であるソビエト連邦が成立した。ロシア帝国同様、第一次大戦後ヨーロッパにおいては、ドイツ帝国など他の帝国も崩壊し、ローマ帝国以来およそ1900年以上の長きにわたって続いてきたヨーロッパにおける帝国支配の歴史は終焉した。
 その後1930年代に世界恐慌が発生し、ここで日本・ドイツ・イタリアと植民地大国である連合国との間で第二次世界大戦が勃発した。大戦後、アメリカ合衆国は超大国になり他の資本主義国を勢力下においた。一方ソビエトは、大戦中(および後に)に東欧諸国を衛星国化して超大国となった。もう一方では、1949年10月1日中華人民共和国の建国を宣言した。これに伴い、アメリカ帝国主義を中心とする資本主義陣営とソ連・中国を中心とする社会主義国陣営がにらみ合い冷戦体制が実現する。
  民族自決や植民地体制からの独立を、それを支援する社会主義陣営の創設という時代的背景抜きに語ることは許されない。
 日本共産党は、東欧やソ連の社会主義体制が雪崩を打ったように崩壊した際、その崩壊をもろ手を挙げて歓迎する、そもそも、ソ連は社会主義社会でなかったと言い切ったが、それと同時に20世紀の世界の歴史から、世界最初の社会主義社会の役割まで否定してしまう動きは、受け入れることはできない。まさに歴史の偽造である。
  例えば、戦前の女工哀史のような労働から、我々労働者の8時間勤務の実現や、様々な社会保障制度の実現は、社会主義体制の実現と大きな関わり合いを持っている。(注1)

注1:八時間労働制は、二十世紀に入ると大きな国際的な流れとなって定着し、前進しました。この流れの促進に
   大きな影響を及ぼしたのは、一九一七年のロシア革命でした。レーニンの指導した革命ロシアは、一九一七
   年、全労働者を対象にした八時間労働制を宣言(布告「八時間労働日について」)。これを契機に、一九一九
   年、国際労働機関(ILO)が創設され、八時間労働制が第一号条約として結ばれました。  
     八時間労働制は、一九一七年から一九二三年までの数年間に、ヨーロッパ大陸のほぼ全土に広がりました。
    (2000年10月23日(月)「しんぶん赤旗」から引用)


(6)アメリカをどうとらえるかー党綱領の立場を踏まえてー

  この中で注目すべき表現は、Aアジア太平洋重視の戦略的「リバランス」(再配置)についてで「米国がこの地域での影響力を強めようとする動きがあり、他方で、中国も影響力を拡大しようとしている。」しかしそのもとでも、ASEANの国ぐには、どんな大国の支配も認めない自主的なまとまりをつくるとともに・・・・
 この文面から、中国の外交方針が、アメリカと同じく覇権主義だと言うことを暗に臭わせているように読める。しかしASEANの国ぐには、大国の支配を認めず自主的なまとまりを追求しているとASEAN諸国の外交姿勢を評価している。

 中国が社会主義の大義に反し、大国主義で覇権主義であることを共産党が認めた文書として注目している。


以下次号に続く