日本共産党 最近おかしくないですか

共産党の新たな原発政策


  「原発即時ゼロ」(9月14日赤旗)は、原発反対運動の追い風になるのか、

    はたまた運動の分裂につながるのか?




<はじめに>

 共産党は3.11震災後一部の例外を除き選挙に敗北している。(一斉地方選挙後半戦選挙結果の特徴(no.1no.2)、最近の箕面市議会選挙和泉市議会選挙参照)この原因を共産党は赤旗の部数の減少と反共攻撃に求めている。しかし、この分析は本当に正しいのか、私はそうでなく、自民党や民主党と同時に共産党も橋下・「維新の会」を始めとする第三局の登場で、既存政党の液状化現象に巻き込まれている。(公明党だけは巻き込まれていない。)

 その最大の原因は、3.11大震災で原発のメルトダウンという国民の生命財産に対する重大な危機に対して、そのことの本質がつかめず、「安全優先の原子力政策」を掲げた時点で、共産党は日本の政治勢力の中で、その存在価値を失った。国民の痛みや苦しみが判らない自己中心の政党だということが露呈してしまった。(注1)

 私は共産党にこの原子力政策の誤りを指摘し、克服されることを要望したが、その際いくつかの注文を付けて
いる。

<政策転換に当たっては・・・以下が必要と条件をつけた。>

  1. これは原発政策の転換を図ったものだということを明確にする事
      共産党はいつの間にか政策転換を行い、最初からそういっていたとこじつけます。これを行えば国民から
    不信を招きます。

  2. 選挙戦でこの方針を立てて戦えなかったことを、国民にお詫びする事 
      国民の多くは共産党がこの方針を出すことを望んでいました。選挙戦を戦った党員やその支持者に、「原
    発の安全点検」という方針が、国民との対話の中で反撃にあい、苦労したことに対してお詫びすること。
  1. なぜ「安全点検」という誤った方針が、前半戦の結果を見た段階で克服できなかったのか、その理由を解明
    にする事。(吉井議員の優れた国会論戦をなぜ活用できなかったのかも)

  2. この方針転換が、何時、どの機関で行われたのか明らかにする事。
     4月29日の赤旗は共産党のメーデーのスローガンを掲載しています。
    「安全優先の原子力行政の転換を」「原発依存から自然エネルギー中心の低エネルギー社会へ」としており「脱原発」を明確にはしていません。

以上「意見書8」から抜粋

注1:さざ波通信のスターである原仙作氏は、さざ波通信で、共産党の衰退の原因を「09総選挙で、政権交代支
     持の国民に「ムジナ」論を(自民も民主も同じ)説いて水をかけ、小沢の国策捜査では偽造報告書を書く検察
     の尻馬に乗って小沢の「政治とカネ」と騒いだことが致命傷なのである。」(2012年4月24日)と指摘されてい
     る。

        私は、検察権力の犯罪より、小沢の「政治とカネ」が重要という判断の誤りという点では同意見だが、国民
     大衆から共産党が見はなされた最も大きな原因がこれかと言われれば、原発問題が決定的であったと思う。

<揺れ動く原発政策>

 しかし共産党は私の要望に対して、何ら応えることなく、原発政策を猫の眼のように変えている。(すり替えている。)(注2)こんなことをすれば国民から批判を浴び、ますます支持されないことを、共産党の傲慢な幹部たちは判っていない。嘆かわしいことだ。

注2:共産党の原発政策の変遷(3.11震災以降)

    @ 一斉地方選挙では、「安全優先の原子力政策」(赤旗4月9日主張)

    A メーデー直前の赤旗(4月29日)は、「安全優先」の原子力の政策点検を」、「原発依存から自然エネル
      ギー中心の低エネルギー社会へ」としており「脱原発」を明確にしていません。

    B 5月1日メーデー会場、志位発言「原発ゼロ」宣言

    C 翌日(5月2日)の赤旗記事、共産党中央本部の部隊は「安全優先の原子力政策」をシュプレヒコール
         して歩いた。と報道した。・・・政策変更に気付いていない。

    D (赤旗6月13日)は「原発からのすみやかな撤退、自然エネルギーの本格的導入を」「国民的討論と合意
      を呼びかけます」(2011年6月13日 日本共産党)の内容は、「1.福島原発事故が明らかにしたもの
      は何か、」、「2.原発からの撤退の決断、5〜10年以内に原発ゼロのプログラムを」としています。
     その「(3)で「原発ゼロ」にむけ、原発縮小にただちに踏み出す。」といています。ここで確認しておく必要
           があるのは、共産党は「原発絶対反対の立場」を取っていないことです。

(以上2011年)

    E 2012年9月15日赤旗1面トップ「即時原発ゼロ」実現をという記事を載せています。
             この記事で注目すべきは、共産党の政策は一貫していると常々主張するのに、今回は、国民の多数
        が「即時原発ゼロ」を求めている状況をふまえて、昨年の提言を一歩すすめ「即時原発ゼロ」の提
        起をおこなうものである。と政策を変えたことを認めていることである。(「安全優先」から「原発ゼロ」
          の際は、変更の理由を語っていない。)

<呼びかけ人の「全国連絡会」とはなにものか・・・分裂のための組織でないことを願う>

 この前日(9月14日)の赤旗には、「今すぐ原発ゼロへ」「11月11日に全国いっせい行動」という「全国連絡会」のよびかけが赤旗1面に出ている。この「全国連絡会」とは共産党系の団体をすべて網羅したものである。この記事を読んで気になったのは、3.11以降の「原発反対」のデモの主催者が、大江健三郎氏などを中心とする知識人であり無党派の人が中心であった。また事務局は原水禁系が担当していたと思われる。

 共産党は今日までは、「さよなら原発10万人集会」や、「7.29日国会大包囲」では一参加者にすぎない。(しかし赤旗の報道ではあたかも自らが組織したように報道していたが・・・・)今回の「呼びかけ」は、現在まで原発反対を主導してきた人たちと手を切り、これに代わるものとして共産党が主導権を握った運動を巻き起こそうとするものであるのか(?)今日までの赤旗は、「原発ゼロ」の一致点で共同する戦いの意義を説いてきたが、急に別の団体を組織し、新たに共産党の主導権で国民を組織しようとするものだと思われる(?)

 私は老婆心ながら、共産党は大衆運動と政党の関係でまた下手を打って、国民大衆から遊離するのではないか心配である。

 この呼びかけをするに当たっては、さよなら原発1千万人署名を推進していた大江健三郎さんたちとどのような話し合いを進めて来たのか、何ら報告がないので判らないが、なぜ共産党のこの間の主張「原発ゼロ」の一致点での共同の精神が生かされず、別団体を立ち上げたのか理解に苦しみむ。60年安保以降の大衆の決起という意味では最高の戦いを、政党のエゴを前面にだし、分裂させてしまう愚行を行わないことを切に祈るものである。

 原発反対の運動で市民派に主導権を握られ、忸怩たる思いですごしていた共産党はそのみじめさを跳ね返すため、別組織を立ち上げ、主導権を握ることを自己目的化するならば、共産党は逆に決定的な批判を国民から浴びるであろう。

<再度問う、共産党は「人類と核は共存できない」という境地に立てたのか>

 さよなら原発1千万人署名の運動の原点は「人類と核は共存できない」という考え方がその根本にある。だから当然の帰結として原発反対運動は即時全面撤退(脱原発)となる。それに対して共産党は、科学の進歩で核は平和利用できるという考えがその根底にある。だから一斉地方選挙で「安全優先の原子力政策」という方針を打ち出した。その後メーデー会場で「原発ゼロ」宣言を行ったが、「直ちにか将来か」は不明であった。赤旗6月13日付けで「原発ゼロ」宣言の内容が明らかにし、共産党の「原発ゼロ」宣言は、5〜10年をかけた段階的解消論であることが判った。

 しかし、国民の原発に対する感情は、段階的解消論でなく、即時撤退論である。(これは政府が取り組んできた「国民的議論」のまとめで国民の過半数が原発ゼロを望んでいることが判明し、寄せられた意見(パブリックコメント)では8割が即時の原発ゼロを求めていることが明らかになった。)

 今回の政策転換が「国民の多数が「即時原発ゼロ」を求めている状況をふまえて」という説明がなされているが、その共産党の政策変更をもたらした判断の根拠になったのはこのパブリックコメントの集計からきている。

<共産党の政策(原発ゼロ)が国民に乗り越えられたことを共産党は認めたのか>

 =それとも。さよなら原発派とたもとを分かち、自らの主張の運動を立ち上げるのか?=

 共産党は自らの政策:原発ゼロ宣言(「段階的解消論」)が、国民大衆に追い越され、国民の多数が原発即時撤退(脱原発)であることに気付き、初めてさよなら原発派と同じ「原発即時ゼロ」(脱原発論)に立った。これで「さよなら原発派」との共闘が進むかに見えるが、逆に別組織を作って運動の主導権を握ろうとしているのか不明である。原発は即時撤退(脱原発)で一致しても、共産党の基本的姿勢、「科学の進歩を受け入れる、今後の平和利用の可能性を閉ざさない」という立場性を放棄し、「核と人類は共存できない」というこの思想を受け入れたのかが、明らかでない。

 共産党は、さよなら原発10万人集会などに参加しながらも、そこに流れる基調、「人類は核と共存できない」という考えを受け入れることができず(正義の味方真実の友参照)、新たな運動を立ち上げようとしているように見える。なぜなら原水禁と原水協の分裂の根底にはこの議論があった。

 共産党は、「核兵器対人類の対立」という考え方を「絶対的平和主義」、「修正主義」として批判していた。(共産党は帝国主義者の核と戦うという主張をしていた。・・・上田耕一郎「マルクス主義の平和運動」)現在「さよなら原発」派は、まさに「人間は核と共存できない」という「絶対的平和主義」である。共産党はこの間、赤旗で「核と人類は共存できない」という主張をしたことが無い。現状においても、共産党は「人間は核と共存できない」という考え方に批判的なのか。これについても明らかにしなければならない。

 この問題の克服抜きには、国民的運動の主導権を握ることもできないし、共産党の原発政策は国民の支持を得られないであろう。