共産党は「原発の安全点検」から「脱原発」に何時方針転換したのか  意見書 8


日本共産党中央委員会 様

                                                                                                                    平成23年5月3日

  私は4月12日以来一せい地方選挙関連した7通の意見書を差し上げています。その主要な趣旨は一せい地方選挙の最大の争点に前半戦では「震災復興」を掲げたことや、後半戦の「命を守る政治」などの課題設定の誤りを指摘してきました。とりわけ「命を守る政治」の最大の課題は「脱原発」であって「安全点検」ではないと主張してきました。

 私は7通目の「意見書」でこれで最後にするといましたが、本日(5月2日)の赤旗、及び毎日新聞を見て、どうしても再度中央委員会に私の意見を申し上げたく再度「意見書8」をお送りするものです。この意見書は今までとは違い「怒り」が入っています。 

 本日(5月2日)の赤旗1面に「原発からの撤退を決断せよ」志位委員長 計画策定も提起という大きな見出しがあります。

   記事の中で「原発は冷却水がなくなると炉心が溶け、コントロール不能となる本質的危険をもった未完成な技術であることです。」これは極めて重要な指摘であり、選挙中に主張した「安全優先の原子力政策」が事実上破綻したことを認めたものです。しかしこの期に及んでも、「原発は冷却水がなくなると」と条件をつけたことです。今回の原発事故の原因がたまたま冷却水が無くなっただけで、原発の危険性はそんな単純なものではありません。

 今回はマグニチュード9の地震でしたが、もっと強い地震が来たら、それにより炉心が崩壊し爆発する事さえ考えられます。その際また「想定外の事故」というのですか。後半の「未完成な技術である」という指摘は正しく、なぜ前提条件をつけたのか理解に苦しみます。

 そうした弱点を持ちつつも、共産党の志位委員長の指摘は基本的に正しく、高く評価するものですが、ここで中央委員会に以下の要望があります。(非党員である私にこのようなことを言う資格が無いのかも知れませんが、非党員だから言えることもあります。)

  1. これは原発政策の転換を図ったものだということを明確にする事

       共産党はいつの間にか政策転換を行い、最初からそういっていたとこじつけます。
       これを行えば国民から不信を招きます。

  2. 選挙戦でこの方針を立てて戦えなかったことを、国民にお詫びする事

       国民の多くは共産党がこの方針を出すことを望んでいました。(注1)

    注1:下段の「1.共産党の政策転換を国民は歓迎しています」参照

         選挙戦を戦った党員やその支持者に、「原発の安全点検」という方針が、国民との対話の中で反撃にあ
       い、苦労したことに対してお詫びすること。

  1.  なぜ「安全点検」という誤った方針が、前半戦の結果を見た段階で克服できなかったのか、その理由を解明にする事。(吉井議員の優れた国会論戦をなぜ活用できなかったのかも)

  2. この方針転換が、何時、どの機関で行われたのか明らかにする事。

      4月29日の赤旗は共産党のメーデーのスローガンを掲載しています。そこには「安全優先の原子力行政の転換を。」「原発依存から自然エネルギー中心の低エネルギー社会へ」としており「脱原発」を明確にはしていません。(注2)

  4月30日付赤旗は、「原発・エネルギー問題対策委を設置」という記事を載せています。私はここで議論され党の原子力政策が修正されるものと期待していました。それが1日で方針が変わる(早くて良いですが、大衆は不気味な感じがします。)党の方針決定が党のもてる英知を結集して決められるのではなく、特定の幹部が決めているイメージを与えます。(それほどこの政策転換を行うことの必要性に迫られていたのかも知れませんが。メーデーを逃せば更に政治的に敗退するという危機感があったのですか。)

注2:5月2日付赤旗のメーデー記事(写真)を見る限りでは、脱原発というスローガンは見当たりません。朝日の写  真も「震災復興支援」を掲げた横断幕を先頭にデモ行進している姿だったと記憶しています。(志位さんが脱原発  を高らかに宣言されましたが、戦いの現場は対応できていません。・・ここに大衆の不信を招く要素があります。)

  以上のようなことを誠実に答えないと、共産党は大衆から見放されると思います。本日のこの記事の中で共産党は「「安全神話」と決別して正直で科学的な原子力行政へ転換すること」を求めていますが、同じことが共産党にも求められています。「正直で科学的な方針」を出してください。前からの一貫した主張だともしいわれれば、選挙を「原発総点検、自然エネルギーの促進」(M氏の選挙公報)で戦ったものは、党中央の方針を理解しなかった「うつけ者」になってしまいます。

 以下もう少し詳しくこの問題を見ていきます。

  1. 共産党の政策転換を国民は歓迎しています。」

     本日(5月2日)の毎日新聞を見て、共産党の政策転換の重みがよく分かりました。4面にメーデーの記事が載っています。この際、連合の記事と全労連の記事を比較した場合、全労連系のほうが2倍ほどの大きな記事になっています。その記事の4割ほどは志位委員長の発言です。この記事は「原発からの「段階的撤退」と自然エネルギーへの転換という従来の主張から一歩踏み込んだ発言。」と照会しています。(マスコミも政策転換と見ています。朝日の方が政策転換をもう少し強調していたように思います。・・手元にないので)

      さらに19面大阪版のメーデーの記事が面白いです。ここでは連合系の記事とユニオンのメーデーのほぼ同じ紙面が割かれ、大阪労連はただの4行です(10分の1もありません)

      ユニオンのメーデーの記事がなぜ大きいのか、それは「原発即時停止を」を見出しとし、「福島第1事故受け派遣労働者ら加盟労組」と中見出しをつけています。また反原発メーデーと書いた大きな横断幕を先頭にデモしている写真が載せられています。

       ここで判ることは、マスコミは反原発の運動が起こることを期待しているのです。それはマスコミなりに国民感情を捉え、今の政治課題はこれだと把握していることの現われだと思います。おそらく労連系の横断幕の文字は「震災復興」だったと思います。それはニュースにもならないスローガンなのです。


  1.   全てのメーデー会場で同じ趣旨の挨拶ができなかったのか

      私がここで言いたいことは、なぜ共産党は中央メーデーで「脱原発」を発表するなら、全国のメーデーで同じ趣旨の発言をしなかったのですか。おそらく、高槻のメーデーではM府会議員が相変わらず「原発の安全点検」の挨拶を行ったと思います。まさにピエロです。中央会場で志位委員長が「脱原発」を表明しているのに、高槻の地では「安全点検」を彼が訴えていたとしたら、当日の参加者が翌日の新聞を見て、志位委員長が脱原発を中央集会で発表したことを知れば、昨日のM議員の挨拶は何だったのか、あの人は自分の党の政策すら知らないで叫んでいる。ばかな人だと思われてしまいます。

      これは選挙を戦った全ての人にも言えます。なぜ脱原発がダメなの、なぜ原発反対がだめなのと聞かれた際、どのように応えるのかマニュアルがあったのか私は承知していませんが、みんな一生懸命応えたと思います。あの苦労は一体何だったのかと虚脱感が生まれます。(注3)

    注3:ここで私が大学時代に体験し、私のその後の活動で大切にしていたことを書きます。

        「意見書7」で書いた京都2区寺前巌選挙で体験した事例です。あの選挙で共産党は「後一歩で寺前氏
       は当選する」と党員に不眠不休の戦いを要請しました。(何時も次点だったのでこの話には説得力があり
       ました。)私の後輩のKという党員が本当に下宿にも帰らず不眠不休で戦いました。選挙結果はダントツ
       の1位でした。そのとき彼は喜ぶと思いましたが、喜びませんでした。虚脱感で抜け殻のようになりまし
       た。本当に後一歩と思って不眠不休で戦っていたのに、上の指導は「ウソ」だったと彼は思ったのです。
          私は彼の姿を見て、無責任な扇動はダメだとつくづく思いました。指導者は常に運動員の気分感情も大
       事にしなければなりません。今回でも自分は「脱原発」だと個人的に思いながらも共産党中央がいうのだ
       から「原発の安全点検」が正しいと一生懸命戦ってきた部分が多くいることを忘れてはいけません。それ
       を早く言ってくれればもっと戦いやすかったのにと思う運動員は沢山いると思います。

     そこで共産党中央にお願いしたいのは、何時、どのような判断で政策変換を行ったのかを丁寧に説明することです。これを中央は一貫している、あほな地方が方針を理解できず「安全点検」戦ったといえば最低です。メーデーでも原発の安全点検をシュプレヒコールして歩いたと聞いています。(その間抜けた姿をどうホローするのかが重要です。)

M議員の非礼(返事が全く無い)は、中央の方針を鵜呑みにして身動きが取れない

  私はM議員を友達だと思っていました。しかし彼はこの間の私の意見書を全て無視しています。それは中央の方針だから絶対正しいとの確信の下に、かれは私の主張を無視しているのだと思います。

  私は、彼に対して攻め込むことを考えています。あなたは府民の代表か共産党のための府会議員か、党中央の言うことを伝えるだけの府会議員なら要りません。I氏のための「どっかの党」と何処が違うのですか。府民のための議員であれば、府民の今の気分感情は何処にあるのかを察知して、党中央に意見具申するべきです。かれは党中央に忠実で府民の声に耳をかそうとはしていません。「意見書5」で市会議員のポスターを添付しています。中央の方針に従ったまずいポスターの見本のようなポスターです。これに顔を差し替えただけで5枚も張り出したのです。(候補者個人の個性も何もあったものではありません。旧社会主義国の選挙を連想させるようなポスターです。)他の候補は必死でポスターの図案を考え、一票でも多く取ることを考えています。

  このよう具体的な事務処理能力の無さも選挙での後退に結びついています。赤旗の拡大だけが選挙に勝つ方法では絶対ありません。選挙の勝利のために赤旗の拡大はどういう位置を持つのか、これを正確に位置づけないかぎり、今後の躍進は望めないと私は思っています。

選挙の雌雄を決するのは何か

  わたしは一貫して、赤旗の拡大より、正しい方針(この場合は正しい政策)の方がよっぽど選挙の勝利には必要だと思っています。この考えを排除してきた「つけ」が今回の選挙結果です。私は「意見書5」で「特筆すべきことは世田谷区長選で社民党の保坂氏が当選したことです」と書きましたが、正に「脱原発」という政策で勝った選挙です。

  共産党は是非この教訓を学んで欲しいと思います。共産党が掲げる旗は「尖閣列島」ではなく「脱原発」です。これを掲げてこそ国民は共産党を支持するのです。本日付けの毎日新聞がそのことを証明しています。
 
◆最後に野村監督の名言を送ります。
 「負けに不思議の負けなし、勝ちに不思議の勝ちあり。」
 負けには必ず理由があります。ぜひ再生につながる科学的な総括をお願いします。