ついに「カルト化」した共産党?
   選挙戦を戦う共産党は正気か狂気か?


                                                                                      平成24(2012)年11月22日

11月21日赤旗1面は、「日本の命運かかった総選挙「全国は一つ」で必ず躍進を」という記事が載っている。

 この記事は、総選挙に向けた全国いっせい決起集会で(党本部と全国の会場を党内通信で結んで行われた)志位委員長が報告した内容を伝えている。委員長の報告は、@総選挙の歴史的意義と政治的対決の構図A躍進の条件に確信をもってたたかいぬこう、B1日1日の奮闘が勝敗をわける、C党員人生をかけ、悔いのない戦いをという報告であった。Bを除く、各段落の中身を見て行きたい。

<総選挙の歴史的意義と政治的対決の構図>


 まず、「自民党型政治を断ち切る改革に踏み出す選挙と位置付けてたたかいます。」としている。非常に抽象的で分かりにくい「歴史的意義」になっている。
 昨年のいっせい地方選挙では、共産党は、いっせい地方選挙に当たって「選挙戦全体を、日本国民が、国民的エネルギーを発揮して、被災地の救援・復興をやりぬき、戦後最大の国難を打開して、それを通じて新しい社会をつくる契機にしていく」という基本的政治姿勢を確認して臨んでいた。
 今回の総選挙を望むにあたってこの延長線上で歴史的意義を語るべきであった。そうすれば、選挙戦の最大の争点が原発問題であることが浮かび上がったであろう。

<躍進の条件に確信をもってたたかいぬこう>

 次に、「確信をもってたたかう」では、@政治的・政策的条件、A国民運動との共同の広がり、B総選挙の攻勢的方針と党作りの努力―「党躍進の三つの条件に確信を持ち」と躍進の条件を列記しているが、もうひとつピンとこない。
 @の政治的・政策的条件は、この間の「経済提言」「外交ビジョン」「尖閣列島の提言」「即時原発ゼロ宣言」などを指すらしいが、党員がこれを消化し、有権者に話せる水準にあるのか党幹部は分かっていない。現在の日本の政治は官僚が牛耳っていることが最大の問題だという議論があるが、共産党のこの議論も、東大卒業の幹部が作文を書き、立派に仕上がっているからこれで勝てるというまさに戦いを知らない官僚的発想である。

 この決起集会での報告で5中総の読了率が29%と報告している状況で、これらの政策を読んだ者が、いったいどれだけいるのだろうか、私の経験では、おそらく市会議員クラスでも、この内容を説明で来る者は限られていると思う。自らの党の知的水準も把握せず進軍ラッパを鳴らしても何ら力にならない。(誤解されたらいけないので、断っておくが、市会議員クラスが馬鹿だと言っているのではない。日常の活動スタイルが、赤旗拡大の点検に追われ、こうした問題を論議する場も時間も保証されていないことを問題にしている)

 Aは国民運動との共同の広がりであるが、安保反対闘争以降、日本の国民は政治的に立ち上がらないと言われていたが、生命の危機を伴う原発事故に遭遇して、原発反対で国民が久しぶりに立ち上がった。しかしこれはまさに無党派の市民が立ち上がったのであり、共産党はこの政治的高揚のなかの参加者でしかなかった。(志位報告はこのあたりを正直に述べているところがあって面白い)注1

注1:「即時原発ゼロ提言」は、私たちが、毎週金曜日の官邸前抗議行動などに参加するなかでみんなの声を体感
     しながらつくりあげたものです。(中略)みんなの声が私たちの体にもしみこんでそれを政策化したのがこの
    「提言」であります。・・この主張は正直であり極めて面白い。共産党が「前衛」でないことを自ら認めた発言
   としても貴重である。

  ただ、それならば、福島など未だ震災からの復興がなし得ず困っておられる方がたくさんおられるのだから、もっと現地に入り、現地の声を政策化すべきだ。本日の赤旗日曜版(11月25日号)に翻訳家の池田香代子さんが登場し、共産党に対して、「「提言」に加えて脱原発社会へどう軟着陸するか、住民や原発労働者の健康管理をどうするかも具体的に提案してほしい。「原発ゼロ」の政党として、情報を収集し、分析するシンクタンク的役割も期待します。」という談話が載っていたが重要な指摘である。

 B総選挙の攻勢的方針と党づくりの努力と書かれているが、もうひとつピンとこない。例えば「三つの角度から勝利の条件を作った」の中の3番目は、「綱領・古典の連続教室」を挙げている。学習の大切さは分かるが、それぞれの支部で学習できる力量・体制を組まない限り、前進しない。常に「党中央の言うとおり」と主体性のない発言を繰り返していては、個々の党員の成長は勝ち取れない。(悪く言えば、この古典の学習会は、不破さんに喜んでいただけるように出番を設定しているに面があるのでは。)

 ここまで書いて表題と中身が相当違ってしまったが、今日一番言いたかったことは「カルト」化の問題である。この躍進の三つの条件の中で志位委員長の発言の中に見逃せない発言がある。少し長くなるが以下それを引用する。

 今回の総選挙への同志のみなさんの思いを示す象徴的な出来事を報告したいと思います。最近、わが党の神奈川県委員会に、ある女性党員から1000万円のカンパがよせられました。この同志は、自らの思いを次のように語りました。

 「日本共産党への募金の準備を始めたのは20年前。自分は、共産党に1000万円募金をするのが夢でした。金額の問題ではないけれど、自分の思いが本当に託せるのは共産党だけです。自分は、仕事で毎日精も根も尽きるような厳しい状況です。子どもたちも若者も、みんな大変な状況に置かれていることを、自分は職場で毎日実感しています。今の社会を変えなくてはならないと強く感じています。だから今度の選挙で必ず勝ってほしい。最近になって1000万円に到達しました。うれしくなって走ってきて届けました」(大きな拍手)

  私は、こういう同志たちの心によって支えられて党の一員であることに、心からの誇りを感じます。そしてこうした気持ちに必ず応えねばという決意を新たにしたいと思います。(拍手)

   私はこの志位発言に嫌悪感をかんじます。これは「カルト」集団の手法・話術です。この女性は、マインドコントロールされた状態にあると思われます。常識ある共産党の幹部なら、この献金は断るべきだ。今後のその女性の生活設計などの話をして、最高にもらっても10万円位にしておくべきだ。

 もしこの女性のカンパを受け取るのであれば、幹部はそれ以上の決断をすべきだ。すべての共産党の幹部(不破さんも含め)は、自分の全財産を投じてこの選挙に臨むべきである。(この女性の行動が素晴らしいのであれば、幹部はすべて率先垂範、自分も寄付すべきだ。それができないのであれば断るべきである。)

 この女性は、おそらく共産党の志位さんの主張に感銘し、「日本の命運がかかった総選挙」だと信じ、共産党が650万票を獲得し、議席を倍加することを夢見てこの献金をされている。(自分が歴史の転換点で役に立てると興奮されている。)しかし選挙後の結果が、共産党が今より後退した時、この女性は、私が20年間も苦労してためたお金の値打は何だったのであろうかと悩むだろう。現実的な不安がもたげてくる。老後は本当に大丈夫かと・・・(おそらくですが・・・)

 この1000万円の募金を受けることは極めて危険な行為である。(注2)こんなことも分からない共産党の幹部の常識のなさに驚くばかりだ。これが分からないのはカルト化している証拠だ。

注2:もしこのような献金者が100人発生したとする。選挙後、このうちの何人かは、こんな選挙結果なら10000
      万円も寄付しなかった。あの時点では志位発言を信じて寄付したが、「話が違う、お金を返してくれ」と党につ
      きつけてくる。現在食べることにも困っている、あの1000万円を返してくれと裁判沙汰にすらなる可能性が
      ある。その時点で、党は、世間からヤマギシやオウムと変わらないとの評価を受ける。すべてが終わりであ
   る。

 例えばヤマギシは入会時、すべての財産をヤマギシ側に出すように迫られる。退会時返さないことも承認させられる。このようにすべての財産を寄進させるのはカルトの一つの特長だ。(この女性の1000万円はそれにあたると思われる。・・・一般常識として20年かけて貯めたお金(1000万円)を寄付する者はない。これは明らかに洗脳だ。)

<党員人生をかけ、悔いのない戦いを>

 さらにこの志位委員長の報告の最後は、「「日本の命運がかかった政治戦」だとして、「すべての日本共産党員が、これまでの党員として苦労して積み上げてきた党員人生のすべてをかけて、この歴史的政治戦に総決起し、必ず躍進をつかみとろう」と呼びかけました。」とありますが、この呼びかけも「カルト」集団の話し方と似ており、あまり感心はできない。注3

注3:無責任な扇動は良い結果を生み出さない。15通の意見書でもこの点にふれたと思うが、いま該当箇所が見
   つからないので改めて書くが(学生時代の話だが)、寺前巌の初陣の戦いの際、後一歩で勝敗ライイに到達す
   ると党幹部はあおった。私の後輩の者がそれに応え、学校にすべて泊まり込み選挙戦を不眠不休で戦った。
   選挙結果は断トツの1位だった。前回候補者の倍以上獲得した。その結果を見て後輩は喜ぶと思ったが、喜
   ばず、抜け殻のようになった。もう一歩と思って一生懸命すべてを投げうち戦ったのに、圧倒的1位であった。
   (だまされたショックの方が大きかった。・・私はこの事態から学んだ。無責任な扇動は一切しまいと。)

  ただ、今回の状況で、救われるのは、個々の党員がそれほどこの呼び  かけに応えていない状態にあることだ。先ほども引用したが5中総の読了者が29%程度だということは、すべてがカルト化していない証拠でもある。