共産党は何故総選挙で敗北したのか?


令和3(2021)年11月5日


 お知らせでも書きましたが、実は大きな病気をし、9月20日から10月7日まで入院しました。手術は成功し、身体は元気ですが、体力がなく、気力が湧いてきません。今回の選挙戦の総括を書きたいのですが、十分な力が無く、とりあえず私が思ったことを書いてみました。いつもは得票率などの分析を行っていましたが、今回は雑感になります。今私が言いたいことだけ書きました。
 もう少し詳しい分析は再度書いてみたいと思います。


1.選挙戦の争点を放棄したから。

 共産党は何を思ったのか「政権選択の選挙」という抽象的言葉を選挙戦の争点の切り札にした。
 選挙結果のマスコミの評価は、立憲の敗北は共産党と組んだからだと盛んに報道されている。立憲を穏健保守という立ち位置を目指すように誘導しようとしている。
 私はこの判断は間違っていると思っている。選挙戦は「戦い」であって、お互いに相手の弱点を突き自己の主張をしっかりしたものが勝利を得られると思っている。今回の選挙で共産党が敗北したのも、共産党が国民目線で戦わなかったからだと思っている。(あとで述べるが大阪で維新が健闘した。この原因は、維新は自公路線をきっちり批判している。共産党のビラとは雲泥の差がある。)
 余談ですが大阪10区(私の選挙区)では立憲の辻元清美が落選した。予想外の結果であった。しかし今回の辻元氏は、選挙戦での争点を後ろに下げ、言い訳に終始した。辻元氏のビラの主張は「テレビで追及した画面だけが流され、本来の私が紹介されていない。私は実務でこれだけの成果を上げている」と言うビラを配布した。(彼女も戦いから逃げた)
 選挙後も敗れた原因は、「私の一面だけが切り取られ、実績を上げている私より、攻撃している私だけがクローズアップされた」ことが敗因であるかのような話をしていた。私は辻本議員の優れたところは、国会論戦で総理をも打ち負かすリベート力にあると思う。その利点を宣伝することが一番大事だと思っている。(言い訳をしているような候補者は負ける。)
 辻元議員は、今までの選挙では「総理、総理、総理」を売り物にしてきたが、今回はこれを弱点だと主張してしまった。これが敗因だと私は思っている。(逃げた者は負けると思っている。)

2.選挙の争点から共産党は何を放棄したのか? なぜ放棄したのか?

 共産党が放棄したのは「階級対立」という考え方を放棄した。そして国家間の利害対立である「気候変動対策」や「ジェンダーフリー」という新しい言葉を持ち込むことによって格差社会の進行や、国民の貧困の課題をこれらの課題の陰に隠してしまった。
 そんなことは無い、言いがかりだという批判が来ると思うので、赤旗の記事からそれを証明したい。昨日付け(11月3日)赤旗1面トップ記事に「選挙結果 私はこう見る」という欄があります。その見出しは「ジェンダー平等に光当たった」です。本日付け(4日)赤旗は同じ見出しで「気候変動が世論にかなり浸透」という記事が大きく載っています。更には同じ一面に「COP26」の記事を載せ、「もう石炭はいらない」「政府は耳を傾けて」「首相発言に日本の若者ら抗議」という記事を載せている。
 もっと言えば選挙期間中の10月24日付け赤旗、一面トップで「多様性の統一で新しい政権を」という大きな見出しを掲げ、その横の記事は「気候危機を打開し、未来を守る政治へ」という見出しを掲げています。私はこの見出しに大きな違和感を禁じ得ません。
 選挙は戦いです。誰と戦うのですか?自民党や公明党と戦わず、共産党は「気候危機」と戦うのかあきれてものが言えません。この日の赤旗めくってみました。2面の【主張】「エネ計画閣議決定」「世界の決定にどこまで逆らう」、ついでにジェンダー平等に反響、5面にまた「気候対策」「総選挙の大争点に」という記事が大きく載っています。コロナより気候変動を大きく捉えています。労働者の戦いやコロナ禍での国民の生活等の記事は全く現れません。低所得者の財布に大きな負担をもたらす消費税廃止等を前面に立てて戦うべきです。
私もうかつでしたが、24日の赤旗新聞を見て、共産党の大きな変質に気が付きました。
 これは複雑な心理が働いていると思われますが、共産党が「階級対立」という視点で戦ってきた歴史を隠蔽し、すべての国民の利益を求めているという姿を見せたいと言う思いがあるのだろうと思います。
 例えば安保条約破棄という共産党の政策は、「アメリカを敵視しているのか?」という突っ込みが入る。そこで共産党は「軍事的同盟は破棄するが、アメリカとの友好関係は保っていく」と答えている。アメリカや欧州など優れた面からは学びたいとも言っている。
 「大企業を敵視しているのか?」と聞かれても、「大企業を敵視しているのではない。雇用している労働者の生活改善を求めているだけだ」という。

3.共産党はアメリカ帝国主義や日本独占資本主義が敵だという従来の党の方針の脱皮を  狙っていると思われる。

 この共産党の変質を見事に表したのが、「気候危機打開の政治」、「ジェンダー平等の日本」という2代政策だと見ています。確かに重要な課題ではあるが、この2たつが天下分け目の戦いの争点とは思われない。共産党は欧米からも学ぶことがあると言ったがまさにこの2代政策は欧米から学んだものである。
 しかし、ヨーロッパでは、元々緑の党などが出現し、一定の政治勢力が存在したが、日本では、「気候変動」が未だ政治課題と大きな位置を占めていません。にも拘わらず、共産党は取れもしない政権を夢に描き、欧州型の政党の主張から学び、その衣替えで支持を増やそうとしているのだと思いますが、この戦略は全く当たっていません。現に選挙戦では共産党は議席を増やすと予想されていましたが、逆に議席を減らしました。国民は戦わない共産党を支持しません。共産党にとっては深刻な事態です。

4.共産党の敗北の原因は、政権奪取を夢見、争点を誤った事

 先にも述べましたが、敗北の原因は、選挙戦の争点は、階級間の対立が最大の争点であるのに、共産党はその戦いを放棄して、政権奪取に目をくらませ、気候変動やジェンダーフリー(欧米化)に逃げ込んだからだと思っています。
 全くの余談ですが、「タカアンドトシ」の漫才に「欧米か!」という突っ込みがありますが、共産党は欧米型の政党、「自然を守るやジェンダー平等」に共産党の主張をスライドさせようと思っていると見ています。
 共産党は全党を上げて戦いを放棄し、選挙戦の争点の4項目に、「気候危機の打開の政治」と「ジェンダー平等の日本」という課題を掲げた。これが、コロナ禍での選挙戦の争点か極めて疑問である。この2つの課題は重要な課題ではありますが、「政権選択の選挙」と大きな争点を打ち出しながら、これが政権を揺るがす課題か、共産党幹部の政治的センスのなさにあきれ返ります。
 これらの言葉から、国民に未来は見えるのか(想像できるのか)全く浮かんでこないであろうと思います。共産党が政権を担う政党に成長するとは多くの国民は思っていないし、期待もしていない。期待しているのは、与党の暴走を阻止して、国民生活の向上・安定を望んでいる。自らの政党の持っている魅力・実力等を客観的に認識できることが大切である。
 国民の目からすれば、共産党が与党になることを現状では求めていない。共産党にこの国の運営を任そうとは思っていない。共産党に望んでいるのは、例えばコロナ禍で多くの国民が苦しんでいるときに、国民に最も寄り添ってくれるのが共産党だと思っている。
 共産党が本当に与党になることを求めるのであれば、「地球温暖化」や「ジェンダーフリー」という問題ではなく、真正面から国防の問題を語らなければならない。中国の脅威は半端なものではない。この問題をどう解決するのかを国民の前に示さない限り、「地球温暖化問題」で発言をしても誰も政権を共産党に任せようとは思わない。
 国民の安全安心を如何にして守るのか、安保条約破棄以降の具体的政策を国民に説明しきれない限り、共産党に政権を任すという世論は育たないと思います。
 共産党は政権奪取に深い興味を持ち、野党や市民との共闘を進める上で、市民活動が積極的に行われている「気候変動問題(脱炭素)」、あるいは「ジェンダーフリー」に近寄り、そのことを梃に立憲民主党等と共闘を進めてきたが今回の選挙では上手くいかなかった。(共闘は成果を上げたが、立憲民主党は枝野代表が辞任に追い込まれるなど問題を残してしまった。)

5.共産党は政権奪取作戦の総括が行われるのか?党内部での議論が必要

 選挙で勝った自民党は甘利幹事長を更迭した。野党共闘を進めた立憲民主党の枝野幸男氏は代表を辞任する羽目になった。共産党志位委員長に新聞記者が責任問題を聞いたが、何ら責任は無いと答えたそうだ。
 世間では今回の野党共闘は小選挙区は成功したが、立憲民主党の比例区当選者が大幅に落選した。この原因は共産党と連携を組んだことがマイナスになったと騒がれている。この話が本当か嘘かは分からないが、日本国民の8割位は共産党に拒否反応を持っているのではないかと私は思っている。
 これは社会主義国と名乗っている国(ほとんど無くなったが)の実態から日本共産党が天下を取れば、自由のない世界になると信じている人たちがいる。この人達の偏見を払拭しない限り共産党支持者が2割を超えることは無いと思っている。
 共産党は自分の事だから気付かないのだと思うが、やはり他の政党と違うところが沢山ある。これを克服せず「欧米化」を図っても共産党の支持は増えない。

 今回の選挙戦で志位委員長は反省することは無いといった。批判されそうな所は必死になっていま封じ込めを行っている。どう見ても選挙の争点(4本柱に)「気候変動」や「ジェンダーフリー」が入るのはおかしい。この批判を抑えるために、赤旗紙面一面に「選挙戦の結果 私はこう見る」という見出しを作り上げ、第一回「ジェンダー平等に光があたった」第二回「気候変動が世論にかなり浸透」という記事が書かれているが、これは明らかに党中央の判断は正しかったという狼煙である。これに異を唱える者は裏切り者だという合図である。
 素直にこの4つの命題は正しかったのか、もっと幅広い人々の意見を聞くべきだ。私は完全に間違っていると思う。とんでもない失敗をしたと思っている。 これらの議論を行わず党中央は無謬性だという主張の仕方に国民は違和感を持っている。
 他の政党は選挙戦に負ければ幹部がその責任を取って辞任するが、共産党は、「責任は常に末端の党員にある」で済まされる。この構図を日本人は絶対に受け入れることはできない。
 もっと党内で議論を戦わせ、それぞれの個性が見えない限り共産党の躍進はない。昔々
38人ぐらい共産党員が当選した際は、それぞれに個性があり、面白かったのですが、今は個性が全く感じられない。人物がすべて小さくなって面白くない。まず議員の風格を持った人物を作り上げていくことが重要だと思われる。

追記:


 11月4日毎日新聞一面はトップは「火力継続」日本に逆流、首相『新技術で脱炭素』「COP26」という記事が載っている。更に「NGOから化石賞」という記事が載っている。
 この毎日新聞に木曜日には、週刊文集と週刊新潮の宣伝が載りますが、週刊新潮の見出しの中に、「軍事力ばかりか経済戦争でも覇権膨張」「中国が富み栄える『脱炭素』追随なら日本落日」
■「EV作れば作るほど『習近平』が肥え太る」「自動車産業550万人の雇用崩壊」という週刊誌の広告が載っています。
 これらの記事が明らかにしているように「脱炭素」問題は、国家間の覇権戦争の最大の課題になっている。共産党が衆議院選挙で4つの争点に掲げた「脱炭素」は、階級闘争とは全く無縁な、国家間の主導権争いの道具になっている。
 またこの「脱炭素」は「脱原発」と共に語られないと、火力発電が原子力発電に代わることになり、人類の危機は増すばかりである。
 共産党は政権選択の選挙と名乗って自らが政権を担うことを考えて、こうした国家間の駆け引きが行われている」「脱炭素」問題に首を突っ込み、気候変動問題が選挙戦の争点だとして戦ったが、多くの国民に取れば、私たちはコロナ禍で生活が破たんしている。この私たちの生活を守ってくれるのは誰かで選挙に臨んでいる。 ここに共産党の大勘違いがある。
 もう少し本日付けの毎日新聞(11月4日)を見れば、3面に、「脱炭素 先進・途上国に溝」「資金援助巡りさや当て」という記事がある。先進国同士の主導権争いである。
 少し記事を拾えば、「バイデン氏は2日の会合終了後の記者会見で、中露首脳の欠席を名指しで非難。これに対して中国外務省の副報道局長は3日の定例記者会見で、「気候変動への対応に必要なのは、言葉でなく具体的な行動だ」と反論した。また露タス通信によると、ロシアのぺスコフ大統領補佐官も3日、「ロシアの気候変動対策は何かの行事に合わせるためのものではない」とのべた。と書いている。
また欧州と日本の対立ついても書いている。「批判をかわす『追加支援策』」「議長国・英国を筆頭に欧州側は石炭火力の全廃を強く求めた。一方で日本政府は、原爆再稼働の見通しが立たない中、当面は石炭をはじめとした火力発電を新技術で温室効果ガス排出を抑制しながら活用する立場。大きな溝があると書いている。
週刊誌は見出しを見ただけであるが、おそらく中国は積極的に脱炭素に取り組んでいるのではなく戦略的に取り組んでいると書いていると思われる。
 中国は、豪州と喧嘩し豪州からの良質な石炭が輸入できず、電力不足に困っているそうだ。さらのガソリン自動車を全て認めず、電気自動車に切り替えようとしている。これは日本からの自動車の輸入を押さえ、電気自動車にすべて切り替え、日本の自動車業界をつぶそうとしている。
 トヨタはガソリン車から、水素を利用した自動車を模索している。すべての自動車が電気に変われば、エンジンがいらなくなり、日本では自動車産業550万人の雇用崩壊(週刊新潮)になるからである。
何が言いたいのか、つまり「脱炭素」は綺麗ごとに見えるが、その裏では国家間の主導権争いがある。
 最後にアメリカのバージニア州(民主党の強固な地盤)の州知事選挙で、民主党が破れ、共和党が勝った市民の反応は「気候変動に力を入れるのはいいが、自分たちの生活が苦しくなっている。もっと身近なことに力を入れてほしい」と言う反応があった。と敗因の理由をテレビ朝日ニュースステーションでアメリカから伝えていた。
 私もこの分析を支持する。政党は国民生活に寄り添うべきである。


最後に

 大阪維新の会の選挙ビラと共産党の選挙ビラの違い!

   資料として載せています。
 1.日本維新のビラ(資料1)
 2.日本共産党のビラ(資料2)

 大阪維新のビラの優れたところ
(表面)
1.まず、大きく維新はやる。と意気込みを示しています。
2.経済成長と格差解消で持続可能なニッポンを創る。
   維新の会の基本姿勢を明確にしています。
3.社会保障制度の改革を訴えています。
(裏面)
4.深刻な課題から逃げているいまの政治
5.将来生活に募る不安
   国民に寄り添った思考
6.維新はやる!次の時代を創る。
 (1)無駄をなくす徹底した凝視改革
 (2)公平公正で効率的な税・保険料の徴収管理
 (3)経済を成長させる規制改革

   これらをどのようにして実現するかも書いている。

 日本共産党のビラの劣っているところ(維新と比較して)
(表面)
1.日本共産党へ期待の声が寄せられています。
  5人の有名人の推薦
2.気候危機打開の「2030戦略」
 (1)2030年度までにCO2 最大60%削減
 (2)石炭火力・原発ゼロ
 (3)省エネ・再エネで雇用254万人増(年)
3.ジェンダー
 (1)男女の賃金格差ただす
 (2)痴漢ゼロ性暴力を本気でなくす
 (3)選択的夫婦別性 同性婚を実現
4.選挙ではフェアな論議をーーーデマはやめるべきです。
 (1)公明党 批判
 (2)自民党幹事長、自民・公明 批判 
5.いのち・くらし守る政治は、政権交代でこそ 
(裏面)
6.なりより、いのち・くらしを大切にする政治に
  政権交代で
   具体性に欠ける。政権交代さえすれば世の中はかわるという主張
7.コロナから命を守る第6波は起こさせない
  これは具体策を書いている
8.消費税5%への減税などくらしの底上げで経済UP
  これも一応具体策を書いている。
9.実現できます。
   野党で共同の法案も国会に提出しています。
   財源も示しています。
  政権交代を求めながら、野党でも国会で戦えますは、論理矛盾。
10.維新の会は、新しい政治づくりへの攻撃はやめたらいかがですか
 (1)野党共闘の批判はやめるべき、自公政権を延命させる
(2)岸田政権と対決ポーズ!?
   いのち・くらし切り捨て政治のけしかけでは?
    
 共産党のビラで一番目立つのは、期待の声が寄せられています。と「気候危機打開」
と「ジェンダー」です。衆議院選挙のビラとしては極めて違和感を禁じ得ません。
 このビラはどういう発想のもとに作られたのか思いました。