正月から赤旗を読んでいて「アレ?」と思う記事がいくつかある。



                                  平成30(2019)年1月12日
 それは、長崎地裁の「元徴用工を被爆者認定」判決の記事、二つ目は「安倍首相のサンゴ発言」三つめは「雇用・労災保険 過小給付」の記事である。何がおかしいのか毎日新聞の記事と比較しながら見ていきたい。

第一番目の記事は、1月9日赤旗は、「元徴用工を被爆者認定」という記事である。

 赤旗は、「元徴用工を被爆者認定」した長崎地裁判決の重要性を報道せずベタ記事扱いである。この記事を抱え込むように「新日鉄住金資産差し押さえ」「徴用工問題」「韓国裁判所が認める」という記事を載せている。(15面【社会】の左下に)この「差し押さえ」の記事は【ソウル=時事】配信の記事であり、何ら価値判断を伴わない事実関係を示しただけである。一般紙はこの記事は韓国側に節度が無いと批判している記事である。赤旗もこの記事に評価を加えないと一般紙と同じ立場でこの記事を書いたと見られてしまう。
 さらに重要なのは、赤旗はこの徴用工関連記事2本の重要性をどう見たかである。「差し押さえを重視し」「元徴用工を被爆者認定」記事を重視していない紙面取りを行っている。

 同日の毎日新聞は、この二つの記事をどう扱ったか、毎日新聞は一面左に「元徴用工に被爆者手帳」トップに載せている。さらには25面【社会】に大きく「元徴用工証言伝わった」「一刻も早く被爆者手帳を」という記事を載せている。
 赤旗は日本のマスコミや言論界の中で唯一元徴用工の訴えを支持した。にも拘わらず、毎日新聞と赤旗を読めばどちらが「元徴用工」の立場を尊重しているかは一目で分かる。一貫性のない主張にはあきれ返る。

第二番目は、首相サンゴ移植発言 フェイク発言は許されない(琉球新報【社説】)

 このサンゴ 事前移植の話は、1月6日の日曜討論で安倍首相が語った内容である。具体的にはNHK解説副委員長の質問に対して、「土砂投入していくに当たってですね、あそこのサンゴについては、移しております。また、絶滅危険種が砂浜に存在していたのですが、これは砂をさらってですね、これもしっかりと別の浜に移していくという、環境への負担をなるべく抑える努力もしながら行っているということであります。」と事実と異なる発言をおこなった。この発言を受け、玉城デニー沖縄県知事は1月7日うそだとすると他ユーザーの投稿をツイートし、こう疑問を投げかけた。「安倍総理。。。。それは誰からのレクチャーでしょうか。現実はそうなっておりません。だから私たちは問題を提起しているのです。」また琉球新報はこれらの発言を受け、1月9日の社説で「一国の首相が自らフェイク(うそ)の発信者になることは許されない」と断罪した。
 この重要な首相の発言を各マスコミはどう伝えたのか、インターネットで検索していたがなかなか見つからず、大手マスコミは安倍首相の批判は出来ないのかと思ってみていたが、赤旗もこの問題を取り上げない。日本のマスコミは死んだのかと思っていたが、毎日新聞デジタル版で1月10日21:09に、「サンゴ発信 政府打ち消し懸命」という記事をのせ11日朝刊に、「『「サンゴ移植』実は土砂区域外」「首相発言は不正確」という記事を載せた。朝日新聞はやはりデジタル版で、1月10日20時00分に「首相のサンゴ発言」、NHK「自主的な編集判断で放送」という記事を流した。
 毎日・朝日共に腰が引けており、琉球新報の「フェイク発信許されない」という立場から後退している。
 さらに朝日新聞は、安倍首相の「フェイク」を批判するのではなく、安倍氏の発言が「ウソ」と知りながらニュースを流したと、NHK攻撃を仕掛けている。
 我が赤旗はどのような論調かと思って見たが、赤旗はこれに関する記事が無く、志位委員長のTwitterが見つかった。その論調は朝日新聞と同じで、安倍首相を批判せず、NHK攻撃を行っている。以下に引用する。

 「首相のサンゴ発言、NHK『自主的な編集判断で放送』」沖縄知事が事実と違うと指摘し、ウソが明確になっている段階で、「自主的な編集判断で放送」と言い張れるのは、ウソも「自主的な編集判断」で垂れながすといっていることになる。公共放送として資格が問われる。

 と書いているが、沖縄知事が放送前に、首相発言を知っていたのかは疑問である。私の見たところでは放送は1月6日、沖縄知事の発言は、1月7日である。
 さらに共産党はこの安倍首相の発言の政治的意味(首相失格の証明)の価値に気が付いていない。NHKを攻撃するのではなく、いかに安倍首相がトランプに習ってフェイクニュースを平気で流す人物だと証明するのに極めて有利な証拠である。(この話なら誰でもわかる。)せっかく安倍首相を攻撃するいい材料が出ているのにそれに気が付かず、赤旗で取り上げず、志位委員長が的外れの攻撃をNHKにしている。
 もしNHKが安倍首相の弱点(知識があまりない、ウソを平気でつく)ことをカバーしこの記事を流さない方が犯罪的だと私は思う。せっかくいい材料の提供を受けたのにその料理方法が分からないだけである。

第三番目の問題は、厚生労働省の勤労統計不正の政治的重要性である。

 本日付け(11日)赤旗トップ記事を見て驚いた。赤旗はこの厚労省のとんでもない不正事件を怒らずに「予算修正へ調整」という大見出しを掲げている。大阪の芸人でヤナギブソンという芸人がいるがその人のギャグが「そんな事誰が興味あるのや」と自虐ネタがある。厚生労働省の「勤労統計偽装」事件は、失われた年金の再発であり、同時にこの間公文書が公然と書き換えられるという政府与党及び官僚の堕落事件の延長線上の事件である。この「統計偽造」が如何に重要な事件であるか、また個々の国民にどのような影響があるかを記事にすべきであって、この事件が発覚したため、と「予算案修正へ」という見出しに誰が興味があるのですか?この問題を追及していけば自ずから予算の変更が必要になることは明らかであり、今解明しなければならないことは、国のあり方として崩壊しかかっているという事を描き出し、国民に訴えていくことである。
 その主要な問題は、安倍首相が「ウソを平気でつく」ヒトラーと同じ処方を取っている事、さらには官僚が堕落し、出世のためには公文書を公然と改ざんするこのようなことが日本の国で起こっていることを明らかにし、政治の改革の必要性を訴え戦っていくことが重要である。
 ちなみに11日の毎日新聞の一面トップ見出しは、「過小給付各数百億円」「雇用・労災保険」「1000万人に影響」「勤労統計不正」と大きな見出しを掲げ、中見出しに「不足分支払いへ」「予算案組み替え」という見出しを掲げている。
 お客をどう掴むかという視点で見出しが書かれている。「過小給付各数百億円」と書いて、ただ事ではないと思わせ、次に影響「1000万人」のこの被害者が膨大であることを示し、さらに「不足分支払い」と書いてあれば、誰もがこの記事を読む。自分も対象者ではないかと確認してみる。最後に「不足分支払いへ」その為予算案組み替えまでする大きな事件だと押さえている。これがプロが書く見出しである。
 「予算案修正」と見出しにあっても、自分に関係がなければ予算案など読む人は限られていると思う。この記事はあなたのために書かれているのですよという姿勢が無い。 
 逆から言えば、庶民の怒りや要求が全く分かっていない。消えた年金があれだけ盛り上がり、安倍政権が崩壊してきた歴史を学習していない。それだけの戦いになる事件である。

 三つの記事に共通するのは労働者側の立場に立つという視点が失われつつあるからだと私は思っている。
 徴用工問題も本格的に戦う気があるのなら、なぜこの困難な状況の中、長崎地裁が画期的な判決をおこなっているのにそれが評価できないのか、サンゴ発言で安倍首相は明確なウソを言った、さらには嘘だったと誤らない。これを見逃し攻撃の相手をNHKにすり替える態度は、理解しがたい。マスコミが安倍内閣から相当絞めつけられている際、赤旗こそが輝かなければならないのに、他のマスコミに合わしてしまうのか理解に苦しむ。
 三番目の厚生労働省の勤労統計偽装は、労働者の生活に大きく関わっているのに、労働者の生活を守る事より国会の駆け引きを中心に見ているから、予算案が修正に追い込まれるという視点で記事を書いてしまう。三点合わせて相当重症である。