日本共産党第26回大会決議案批判(第2回)


平成25(2013)年11月21日

はじめに

  前回、「第二章 世界の動きをどうとらえ どう働きかけるか」に無定見で踏み込んだが、再度この問題を考える視点を整理してみたい。

世界情勢をどう見るかに肝がある

  世界の共産党の基本的概念は、万国の「労働者よ 団結せよ!」あるいは「世界の労働者と抑圧された民族と国よ、団結せよ!」であり、さらに「すべての歴史は階級闘争の歴史である」、「プロレタリア革命は一階級の解放でなく人類全体の解放である」ことこれらの視点から世界の情勢を分析していかなければならない。
 我々が学生時代には、社会主義国の成立で、「資本主義の全般的危機の状態に入った」と言われ、情勢分析は、資本主義が如何に危機的状況にあり、社会主義をはじめとする人民の闘争が如何に進んだかという視点で世界の情勢は語られていた。
  しかし、ソ連をはじめとする東欧社会主義の崩壊で、この図式主義(資本主義の全般的危機論)は成り立たなくなり、共産党もこの主張を引っ込めたが、しかし、社会主義という確固たる勢力は消滅したが、各国の労働者や世界の人民の戦いで資本主義の危機は深まっているのではないか、この視点で世界情勢を語るべきである。
  そうした視点で見た場合、この第二章の世界情勢の分析は、これが資本主義の悪政と戦い、働くものの生活や人権を守る立場からの分析か疑問に思わざるを得ない。
  その第一は、国際情勢の中でアメリカ帝国主義の果たしている役割の分析があまりにも弱い。アメリカ帝国主義は、相変わらず世界の警察官の立場で、自国の利益のため、他国への侵略を公然と行い、多くの国民の命を奪っている。過去においてはベトナム侵略戦争反対を最重要課題として闘った共産党が、今回の決議案では、「オバマ政権は、歴代米国政権の基本戦略である軍事覇権主義の立場を継承・固執しつつ、他国間・2国間の外交交渉による問題解決に一定の比重をおくという世界戦略をとっている。」この客観的第三者的な情勢分析の立場は一体何なのか、共産党のやるべきことは、アメリカが如何に不当なことをやっているかを描き出し、国民に訴えて行くことである。過去に闘った、ベトナム戦争反対のような戦いが求められている。

決議案はアメリカの外交姿勢(世界戦略)を評価している

 決議案は、アメリカ帝国主を「軍事的覇権主義の立場を継承・固執しつつ」とその本質に触れながら、その後に「他国間の外交による問題解決に一定の比重をおくという世界戦略をとっている」と書くことで、アメリカ帝国主義を評価することに重点を置いている。
 しかしこれは、アメリカがベトナム戦争で敗北し、イラク戦争でも勝利を得られず、アフガニスタンでも、タリバン等の自国を守る戦いに勝利できず、アメリカ自身が軍事的力で他国をねじ伏せることが困難だと学び始めた結果である。
 これを、アメリカがオバマ政権の登場で、政策転換を図りつつあるように評価する姿勢は、「世界の労働者と抑圧された民族と国よ、団結せよ!」という視点を全く放棄した立場である。

共産党は平和を獲得する道筋が語れなくなっている

 共産党は、全般的危機論を放棄したため、アメリカ帝国主義を中心とした資本主義勢力とそれに対置した各国の労働者の戦いや民族自決の戦いの立場からの情勢分析ができず、各国の労働者や民族自決の戦いと連帯する運動を提起すら一切できないところまで追い込まれている。
 アメリカ帝国主義が現在行っている侵略戦争を糾弾せず、その目をそらすために唐突にASEANの動きを、平和を目指す動きだと評価し、さらにこの動きが中南米カリプ海に生まれた平和の地域共同の新たな機構と紹介し、この流れの中で平和が実現するような幻想を振りまいている。
 平和は基本的には、アメリカ帝国主義の軍事的な力を持って世界制覇を図るという企みを叩きつぶす中でしか生まれない。そういう意味では、現在の中東でのアメリカの軍事行動を終わらせることが最大の課題である。
 さらに世界平和を実現する上で、中国の役割を分析することが重要である。中国は、平和の勢力か、それともアメリカと同じく、世界第二位の経済力でそれにふさわしい軍事力を身につけ、覇権主義に乗り出すのか分析が必要である。
 すでに大会決議案批判(第一回)で述べたが、「米国がこの地域(東南アジア)での影響力を強めようとする動きがあり、中国も影響力を拡大しようとしている」と書いただけでは不十分である。
 衆議院選挙の際、共産党は尖閣列島の問題のビラを多く出したが、尖閣列島も含む中国の意図を分析し、国民に提示する必要がある。

共産党という党名で改善しなければならないものは?

  第1回目は、大会決議案の個々の文書の批判を書いたが、第2回目は「そもそも論」になってしまい全く論調が違うが、この章はどうしても「そもそも論」にならざるを得ない。共産党の基本的視点が問われている。これを失えば共産党がレーニンの提起した共産党である唯一の証は、党の組織論「民主集中制」のみになる。しかもこれこそが一早く放棄すべき課題である。共産党としての一丁目一番地の課題はすべて放り捨て、悪名高い組織論のみが残るといういびつな共産党になっている。

化学兵器廃絶の延長線上に核兵器の廃絶があるのではない

 この章の最後に(8)「「核兵器のない世界」をめざすたたかい」にふれておきたい。
  共産党は、「いかなる国の核実験反対」とスローガンに反対した歴史がある。資本主義の核は侵略の核であるが社会主義の核は平和のための核だと主張し、社会主義の核を擁護した歴史がある。ところが最近は核兵器全面禁止なっているが、同時にアメリカの核戦略に同調したような動きを行っている。現在核保有国は自らの核は保有しながら後進国が核兵器を持つこと禁止しようとしている。大国は軍事力において、核の絶対的優位性によって自国の利益を守ろうとしている。しかも、国によって色分けを行い、北朝鮮やイランの核兵器保有は許さないがイスラエル、パキスタン、インド等の核保有国の参入は認めている。さらにアメリカは日本の核保有も認めていない。(イラク戦争も核保有の意思があると言うことでアメリカに侵略されている。事実は何も出なかった。)
 北朝鮮がいくら世界的圧力をかけても、核兵器を放棄しないように、アメリカやソ連・中国が核兵器を放棄することは考えられない。
 決議案には「化学兵器の全面禁止・廃絶は実現できるのに、なぜ究極の破壊的・非人道的兵器である核兵器の廃絶はできないのかという声がひろまっているが、これには強い説得力をもつものである。」という行があるが、当たり前の話である。化学兵器はオウムでも作れる貧乏人の兵器である。核兵器はお金と知識と技術が無ければ作れない兵器である。アメリカやロシアなど大国は、核兵器で地球を何回も破壊できるほど持っており、化学兵器を必要としていない。しかしオウムでも作れる(サリン)によって自国民の命を奪われることは避けたいのである。確かに非人道的武器であり廃絶が望ましいが、基本的にはテロに怯える大国のエゴである。
  化学兵器が廃絶できたから核兵器も廃絶できるなどと宣伝するのは政党として無責任である。全く次元の異なる世界である。アメリカがすべての核を放棄するときは、アメリカ帝国主義の崩壊以外にはあり得ない。アメリカ帝国主義との戦いをやめて、核兵器廃絶運動でもって世界平和が訪れるような扇動は責任政党とは言えない。平和団体が、核兵器廃絶を求めて闘うことは正しいし、共産党がこの運動を支持・応援することも正しい。しかし共産党としては、はアメリカ帝国主義の本質に触れず、平和運動で世界が変わるような扇動行ってはならない。

  
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