安倍首相の「争点隠し」に波長を合わせた共産党


平成26(2014)年12月28日


選挙戦の最大の争点は「消費税10%値上げ阻止」ではなかったのか?

 1月4日付しんぶん赤旗日曜版に「衆院議員メッセージ」という8面9面ぶち抜きの記事がある。見出しには「新年も獅子奮迅」と書かれている。衆院議員20人(志位委員長を除く)の新年のメッセージが載せられている。
 このメッセージを見て驚いた。20名のほとんどが「海外で戦争できる国」づくり反対や「原発ゼロ」の立場からメッセージを寄せており、選挙中最大の争点としていた「消費税10%アップ反対」について明確に述べている者はたったの一人でしかない。
 それに対して、「海外で戦争できる国」づくりに反対する議員(8名)や原発反対を掲げる議員(8名)おり、本来の選挙戦の争点が選挙後には語られるという安倍首相と同じ政治姿勢を示している。
 私は今回の選挙戦の最大の争点は、国のあり方を根本的に変えようとしている安倍首相の「海外で戦争できる国」づくり路線に反対することだと訴えてきた。共産党は選挙戦の争点を「五つの転換」として主張したが、「この全てを語らずとも、それぞれが適当に選んで取り上げれば良い」と志位委員長は幹部会報告で語ってしまった。
 こんな主張を行えば、それぞれの候補者は、「消費税反対」を前面に掲げて戦い、最も大事な争点(安倍首相の狙い)が埋没してしまい、自・公の暴走には止めが効かなくなると批判してきた。
 この私の主張を裏付けるものとして、私は大阪民主新報に掲載された大阪小選挙区(19区)の立候補者(新聞に載ってのは18名)の決意表明を分析し、まがりながらも「海外で戦争できる国」づくり反対を唱えている候補者が6名(候補者の3分の1)、「原発反対」を上げた者が2名、「沖縄基地問題」を上げた人は、1名でしか無いことを指摘した。この候補者達の決意表明は、「2中総の選挙戦の争点「五つの転換」理解度が如何に低いかがわかる」と批判した。
 私が出勤時通る共産党の事務所のポスターも消費税10%値上げ阻止のポスターだけが大きくそれも2枚貼られていた。又駅頭で受け取ったビラも消費税反対のビラ(2枚)だけであった。候補者の立候補の決意のビラも、消費税10%値上げ反対のみの主張のビラであった。他には「政党助成金」の記事が記載されていたが、「五つの転換」という意味では消費税だけであった。
 これらは大阪という地区のあるいは大阪10区の特殊性かも知れないが、私は今回の選挙で共産党は消費税10%値上げ阻止だけで戦った印象をもっている。(大阪10区は、比例区の得票と小選挙区の得票を比較した場合7割にも満たさず、大阪府下でダントツの最下位になった。)この大阪10区の戦いから共産党の戦いを評価するのは公平性に欠けるかも知れないが、全国的にも消費税10%値上げ阻止を最大の争点に掲げたと見ている。(最も、最終版の志位委員長の演説は、「海外で戦争できる国」づくり反対を渾身の力で訴えていたが・・・テレビで見た限りでは)
 

衆議院議員20名の新年の抱負に「消費税10%値上げ阻止」を掲げたのはたった一人だけ

 日曜版の20名の新春の抱負は、選挙戦で共産党が訴えていたこと明らかに違う。20名の抱負の見出しの中で消費税10%値上げ阻止を掲げたのはただの一人である。ちょっとでも消費税に触れた者を含めても2名しかいない。「公約=消費税値上げ阻止」であったのでは?(毎日新聞の記事でも共産党の選挙公約は「消費税値上げ阻止」とまとめられていた。)
 この毎日新聞のまとめ方がおかしいという主張を共産党が行った兆候はない。これで納得(容認)していた。
  これでは小泉首相の述べた「公約=膏薬」は剥がせばおしまい。という主張と代わり映えしないのでは?(「消費税値上げ阻止」こそが、共産党の最大の課題ではなかったのですか?)当選した議員はもう自分たちが公約したことを忘れたのですか?


共産党の選挙戦術は真の敵と戦わず、大衆迎合路線に徹した

  共産党は「消費税値上げ阻止」が、今回の選挙戦の争点で無いことを初めから分かっており、選挙戦では「国のあり方」の議論より、「消費税値上げ阻止」の方が国民から支持を得やすいと判断し、選挙戦を「消費税値上げ阻止」を最大の方針として戦った疑いが持たれる。  
  そして選挙では大躍進した。この選挙戦でとった戦術(最大の争点に「消費税値上げ阻止」掲げたこと)は勝利の原動力であったかも知れない。共産党の幹部は「してやったり」と思っているかも知れない。しかし、私は「この戦術」は決定的に誤っていると思う。
  目先の議席数に目を奪われ、安倍首相が行おうとしている「海外で戦争できる国」づくりに反対して戦わず、与党勢力(自・公)の3分の2の議席を許し、憲法改正の危険性を孕む政治状況を許してしまった。現に安倍首相は選挙開票の最中(自・公の議席が3分の2を上回ることが明らかになった時点で)憲法改正の意欲を発言した。

このような戦い方は、一時的に成功したかに見えるが、必ずしっぺ返しを喰らう

  選挙戦という国民の中で政治に関心が最も深まる場で、安倍政権の危険性を暴く必要(政党と使命)があるにも関わらず、自らの政党の議席数の拡大だけ狙い、大衆に迎合するような戦い(「消費税10%値上げ阻止」争点として戦う)を行うのは、一時的に勝利しても、政党としての誠実性などの真価が問われ、結局は敗北していくであろう。
 この20名の抱負を見れば、選挙戦では「消費税値上げ阻止」最大の公約として掲げながら、抱負では全く触れられないのであれば、まさに二枚舌であり、国民を愚弄するものである。
 選挙戦では争点として国民に充分訴えてこなかった課題を、抱負で急に喋っても、「嘘つき」と思われるだけである。政治には「誠実さ」が求められているのである。