赤旗の悲しむべき叫び、全党を挙げての拡大運動が空回り


令和2(2020)年5月11日


赤旗の悲しむべき叫び、全党を挙げての拡大運動が空回り


 5月9日赤旗に5月8日中央委員会書記局の声明「新型コロナ対策で国政をリードする党の役割への確信を力に、5月こそ党勢拡大の前進をはかり、政治と理論に強い党づくりを」という長ったらしい声明を出しています。

 この声明は何を訴えているのか
1.まず4月の活動を総括するに当たって、4月に出した方針の確認をしている。
(1)4月3日の常任幹部会「訴え」にもとづき
  @「国民の苦難軽減」という立党の精神に立ち、国民の命と暮らしを守る取り組みに全力をあげる。
  A感染防止の対策に最善を尽くしつつ、党活動を断固として維持・発展させ、強く大きな党をつく
   る。
  ――「二つの基本姿勢」を堅持・発展させ、国民とっても、貴重な成果を作りました。
  ここで共産党の果たした役割を列挙し、「わが党が果たしている抜群の役割を確信にコロナ危機から
 国民の命と暮らしを守るため、全党がいっそう奮闘しようではありませんか」で結んでいる。
2.党活動の新たな努力と挑戦が始まった。
(1)4月17日の山下芳生福委員長の訴えでは
   @党勢拡大については、読者拡大に思い切って力を注ぐ。
   A支部会議では無理をせず、さまざまな方法で党員と党支部の連絡・連帯網を強める。
   B党機関の会議は必要な会議に限定して開催する。
   Cこういう時こそ、党大会決定と改訂綱領、科学的社会主義の理論などを学習する。
   D「しんぶん赤旗」の配達・集金網を守り抜く
   ――ことを呼びかけました。
3.この訴えに全党がこたえ・・・・
(1)成果の確認
   @しんぶん赤旗読者拡大で
    ・日刊紙740人
    ・日曜版1495人
    ・電子版112人増
  ――前進にはあと一歩およびませんでした。
 ※16日以降、全国が緊急事態宣言下に置かれ、党活動の制約がいっそうおおきくなるなかで、これらは
  わが党ならではの大健闘と言える結果です。
4.4月の活動の教訓はどこにあるのか
 〇第1は、コロナ危機を打開する党の政策的・実践的イニシアチブへの深い確信が、党活動推進の決定
  的な力となっていることです。
 〇第2に、電話による読者拡大では・・・・
 〇第3に、
  @会の決定の徹底と学習、とくに、「改訂綱領学習講座」の党員の視聴・読了党への誇りを呼び起こ
   すとともに・・・・

  A北海道では、「改訂綱領学習講座」の視聴・読了で全国トップの15.5%となり地区によっては  5割近い党員が視聴・読了し・・・綱領学習が支部の活性化の力となり、党勢拡大の推進力ともな
   っています。
  B4月に作り出した教訓的な実践が、すべての支部と地方議員に広がるならばかつてない困難の中で
   も前進することはできる。
  Cこのことに確信をもって5月の活動にのぞもうではありませんか。
5.5月活動の目標と力点について
(1)5月こそ、4月の努力と教訓を生かし、・・・読者拡大でも、党大会決定の徹底・学習・具体化で
   も、大きな前進をつくることを呼びかけます。
  @5月はなんとしても日刊紙の前進を勝ち取りましょう。
  Aいま、各界の識者から、コロナ危機が明らかにした自民党政治のゆがみや資本主義の矛盾を問う声
   が広がっています。
  B党大会決定と改訂綱領の学習・読了を思い切ってすすめ、政治と理論に強い党をつくるときです。
  C大会決定の読了では7割・8割の読了に挑戦しましょう。
  D「改訂綱領学習講座」」の視聴・読了で倍加をめざし、すすんだ県・地区では5割突破を目指しま
   しょう。
  E緊急事態宣言が延長され、コロナ危機が長期化しつつあるもとでの党活動の在り方
6.沖縄県議会への支援を訴えます。
 というものです。 

この声明を見て多くの驚くことがある。


 私は、前々からこのような声明にはあまり関心がなく正確には流れを把握できていないが、この声明を見れば、党は崩壊へ転び始めていることが分かる。その根拠は、「笛吹けど踊らず」ということが、この「声明」から読み取れる。
 この声明から党の実情が読み取れる二つの指標がある。一つは赤旗の拡大が成功しているか、もう一つは、党大会の決定が党員に浸透しているかの二点である。

★党勢拡大は、拡大どころか後退している。

 一点目の赤旗の拡大は、党中央が常任幹部会声明で訴えているにも関わらず、4月の赤旗部数が減っていることである。現在の共産党の党勢を語る最大の指標は赤旗の部数が如何に増えたかで常に語られている。にもかかわらず減紙に陥っていることは党にとって最大の危機である。昔は拡大月間が始まると毎日どこの地区が達成した、どこの県が達成したという記事が踊り、相当大きな部数(記憶が定かでないが10万〜30万部)を増やしたという記事を読んだように思う。
 ところが党勢に陰りがみられ、赤旗拡大が年中行事になり、もっと悪く言えば党活動の最大の課題となり、党員を疲弊させたところに今日の結果がある。安倍首相のことばを借りれば私は拡大を言っているのですが、どこかで目詰まりが発生しています。
 この状態は組織としてはあり得ない状況である。

 昔は党中央からの拡大月間成功の圧力が相当あり、地区等は幽霊部数を上げて増えたように見せかけたりして、帳尻を合わしていたが、現状はそのような細工が通用しないほど落ち込みがひどいのだと思われます。
 私は、前々から赤旗拡大を党活動の中心に据えたことが、現在の共産党の衰退を生み出していると思っています。政党の浮き沈みは、その政党の主張が国民の心を捉えたか否かにかかっていると思われます。最近の事例で言えば、民主党が分裂し、立憲と国民に分かれたが、立憲はある程度の支持があるが、国民は全く支持率が上がらない。これは何が違うのか、国民は批判政党ではダメだ、建設的な政策を出していく事が重要だと判断した。これは野党攻撃に常に使われている言葉だ。野党は批判ばかりだから駄目だ、建設的な政策(批判をせずに政権側に寄り添う)ことが躍進への近道だとの誘いがある。これを信じた国民党は支持率が全く上がらない。
 一方立憲は、最初枝野氏の立憲政治の大切さの演説がさえ、支持率を伸ばしたが、最近は支持率を減らしている。その最大の問題は、立憲は国民の生活を圧迫している消費税の廃止(あるいは削減)を主張しないところにある。最近の枝野氏には輝きが全くない。
 新型コロナウイルスの脅威で世界はふるえあがっている。このような人類にとって危機の際に、政治家の力量が問われる。ドイツのメルケル首相や韓国文在寅氏、台湾の祭英文氏などが支持を高め、トランプ大統領と安倍首相の人気が落ちている。国民は政治家の振る舞いをよく見ている。誰が敵で誰が見方かを判断しようと思っている。
 今回日本では、吉村大阪府知事の活躍が評価され、日本維新の会の支持率が、既に立憲民主を抜き、野党第一党に躍り出たという見方がある。この結果は、国民は常に政治家を採点しているということである。
 共産党は政党間の争いや浮き沈みを、政治家の力(能力)で語らず、赤旗の部数で力関係が決まるような方針を常に党員に宣伝(注入)している。ここに共産党という政党の限界がある。
 政党間の力関係は、政治家の実力(魅力)が大きく関連している。政党の指導者の力量がその政党の浮き沈みに大きく関連する。政治家にはカリスマ的魅力が要求される。
 今回毎日新聞が行った「新型コロナウイルス問題への対応で『最も評価している政治家』を一人挙げてもらう」という取り組みで、面白い結果が出た。吉村大阪府知事が188票断トツの1位になり、2位が小池東京知事59票、3位が安倍首相34票である。この1位から3位までの票数はいたってまともな判断だと思われる。
 まず、小池氏は安倍首相を完全に負かせる力(発信力)がある。怪しげな英語を巧みに使用し相手を煙に巻くしたたかさを持っている。この勝負は最初から見えている。そこの大阪から吉村氏が参戦し、三すくみになると思われたが、吉村氏がこの2大権力者をいとも簡単に打ち破った。そこにはすがすがしさと論理明晰さがあるからであると思われる。
 安倍首相はどう見てもこの事態が掌握できず、目がうつろであり、プロンプターに依拠し自分のことばで語れない。自分のことばで語る場合は、何を聞かれても同じ言葉を繰り返している。(例えばPCR検査はなぜ進まないかと聞かれたら、月に2万件の検査が行えるように準備した。・・・実際は1万件にも届かないのに、何回聞かれても同じ回答を行っている。)自分のことばでは何も語れないことはバレバレである。
 小池氏は、言葉巧みに主張することにたけているが中身がない。安倍首相との戦いでは圧勝だが、吉村氏との戦いでは完敗である。なぜなら安倍首相と小池氏はオリンピックを成功させたい思いが同じであり、コロナ感染を小さく見せるという策略では一蓮托生である。
 吉村氏がなぜ勝てたのか、彼は、安倍・小池連合の弱点を突いたからである。それは日々更新される感染者のグラフである。このグラフには詐欺的トリックが隠されており、何件検査をしたか、そのうち何人から陽性反応が出たかを明らかにすることが必要にも関わらず、国と東京都は、陽性反応が出た数字だけを公表してきた。この手法では権力側はいくらでも細工ができる。陽性反応者数を下げたいのであれば、検査数を下げれば実現できる。きわめて怪しげな数字である。(国民に真実を伝えない方法である
 吉村知事はこの手法の弱点を見抜き、何人検査を行い、そのうち何人が陽性者であったかを公表し始めた。これこそが科学的な数字である。しかも彼は出口戦略で、この陽性率を一つの基準(「陽性率 7%未満」)に掲げた。分かりやすい「見える化」政治の基本を示した。これが、指導者のやることである。当たり前のことだがこれができない。
 政府はこの間嘘をついて国民をだまそうとしている。このことを国民は見抜いている。最大のウソがPCR検査である。これが進まなかったのは、保健所や国民が「目安」の意味を勘違いしたからだ、あるいはPCR検査を2万件できる枠組みは作ったと言ったが、2万件実施するとは言っていない(加藤厚労相)
 残念なことに共産党は政府のこの「嘘」をかばっている。(注1)吉村知事は、科学的な判断には何が必要か3点の基準を示した。このすっきりした政治姿勢が国民の評価を受けている。
 ここで何が言いたかったのか、政党間の力関係は、その政党の誠実さや政治的実力できまる。共産党は、政党助成金をもらっていないから誠実な政党と言うが、政府が嘘を平気で言っているのにそれを知らん顔して見逃せば、誠実な政党とは見られない。
 維新の政治家は今まで様々な問題議員がおり、相当怪しげな政党とみられていたが、新型「コロナウイルス」に対する吉村知事の誠実な対応で、一気に今までの2倍くらいの支持を獲得した。これが政治の現実である。
 共産党の「『赤旗』を増やせば世の中が変わる」はカルト宗教的お題目であり、科学的事実でないが為、この方針はだんだん無力になりつつある。

注1:この件については「政権に近づかんために、批判的精神(視点)を失った共産党(赤旗)」に詳し
   くかいた。

★共産党崩壊の兆しを見せる共産党大会の決の読了率。

 5月8日の中央委員会書記局長の声明には、党大会の読了率が発表されている。この数字が驚くべき数字である。「北海道では、「改訂綱領学習講座」の視聴・読了でトップの15.5%となり、地区によっては5割近い党員が視聴・読了し」と書かれている。
 第28回日本共産党大会は、2020年1月14日〜1月18日に開催され、採択された決定文書は、(@綱領、A第8回中央委員会総会での綱領一部改定案についての提案報告と結語、B党大会での綱領一部改定案)がありますが、大会から5カ月経過しても、大会決定を読んだ人が、全国で最も進んでいる北海道が15.5%だと報告されている。これは100人中15人しか読了していないことになる。ここまで共産党の力が落ちていることに全く気付いていなかった。
 この読了率は、執行部不信任に値するぐらいひどい数字だ。この状態で赤旗拡大月間を設定して拡大が進むと捉えるのは、よっぽどのお人よしである。ほとんどの人が理論武装していない中で大衆の中に入っていけるのだろうか。共産党は今回大きな変革を行った。
 中国を社会主義国と認めない、覇権主義の国家だと位置づけた。この変更の理由を説明するには大会決定を読まない限り説明できない。大衆からの逆襲を迎え撃たなければならないからである。
 日本国民は遠の昔に中国は社会主義国とはみなさない共通の認識が成立していたその中で日本共産党のみが中国は社会主義国であると認定し、中国の人権弾圧等の記事をできるだけ報道せず、中国が社会主義国であるから、このような利点があると説明を展開してきた。例えば陸軍を減らし軍事費を減らしているとか、中国が貧困者に対して手厚い保護をしているなど社会主義の優位性を説明してきた。
 大衆の中に入れば'(赤旗拡大で)必ずその点を追及され、それを打ち返す力がないとみみじめさを感じるだけである。まずしっかり学習し、理論武装を行わないで大衆の中に入れば、蹴散らかされてしまう。こうしたことも読めず、なんでも良いから赤旗拡大に行って来いと言われても、反撃にあい怖くて行けない。このような事態が起きていることにも気が付かない。私から見れば指導者は大バカ者である。
 赤旗が増えない、大会決定も読んでいる人が少ない場合、私なら大会決定の徹底から始める。 日本には昔から、「二兎を追う者は一兎をも得ず」という諺があるが、まさにその通りでみじめな結果が待っている。
 党大会の徹底に全力を尽くす。理論武装し自信を持たせた上で拡大運動を展開していく。両方追い求める方がかっこよいが、今の実力ではそれは無理であり、まずは党員の理解を進めることが大切だと思われる。
 現状の数字は、党の崩壊が着実に進行している状態である。赤旗中心の活動を維持する限り共産党の再生は難しいと思われる。あまり知られていないことだと思うが赤旗は既に危機的な部数になっている。コロナによる緊急事態宣言を理由に減ページが実施(16ページたてであったが、12ページにたてに変更)している。このような小細工では前進は勝ち取れない