後半戦の選挙結果の特徴                                                                意見書 5 


                                                                                                                     平成23年4月27日

 後半戦選挙で共産党は大阪の幾つかの市での共産党の議席を減らしました。とりわけわが高槻市では5名から3名へと大きく後退しました。この現状を踏まえての私の感想です。

1.特筆すべき事項は世田谷区長選で社民党の保坂氏が当選したことです。

   保坂氏は、「脱原発」掲げて、勝利しまし た。毎日新聞の記事を引用すると「福島第1原発事故に伴
  う放射能物質拡散への危機感が高まる中、権者の原発不信が保坂氏を押し上げた。」と書かれている。
   これは自ら争点を設定した者が勝利できることを証明した極めて貴重な経験です。

  共産党は今回の原発事故に対して「安全優先の原子力政策」という訳のわからない政策を出して敗北したと私は思っています。原発に対する方針は、「原発反対」か「脱原発」か「安全点検」かの争いだと思われますが、共産党は関電と同じ「安全点検」を党の原発政策にしてしまいました。これが後半戦の敗北の最大の要因と思われます。

  政党間の力関係では社民党は0.8%程度の支持が無いにも関わらず、保坂氏が勝利したことは国民の中にある要求を的確に捉えて政策で戦えば選挙で勝利できることが証明されたものです。毎日のこの記事では、「福島党首は3月30日、菅首相に対して原子力安全・保安院を経済産業省から分離するよう申し入れるなど、脱原発を通じ社民党の存在感をアピールしてきた。区長選の勝利を踏まえ、今後、国政での脱原発への動きをさらに強めそうだ。」とこの選挙の勝利の意味を述べている。まさにその通りだと思われます。

 「選挙は自らに有利な対立軸を設定した者が勝つ」(私の主張)の見本のような選挙戦です。

2.大阪ではやはり「維新」が強かった。(「維新か否か」が対立軸であった。)

 前半の府会議員選挙では維新の会は過半数を制し、獲得得票率も40%を超えています。このことから言えることは、選挙戦の争点は「維新」に入れるか他の政党に入れるかの選択であった。共産党は「維新」を過小評価し、選挙戦の戦う相手として「維新」を全く意識しない戦いをしてしまった。(選挙公報やビラから判断)

 後半戦にも「維新」の躍進は影響を与えており、高槻の市会議員選挙の当選者1位、2位は「高槻維新の会」です。獲得票数は、1位7335票、2位6896票合わせて14、231票獲得しています。(ちなみに、この票は共産党の5名の候補者の獲得数12451票を上回っています。)

  しかもこの「高槻維新の会」は基本的には橋下知事が組織する「大阪維新の会」とは違い単なる高槻独自の「会」にしか過ぎません。「維新」という響きだけでこれだけの票が集まっています。(1位を取った者は前回の最下位当選者であり、前回から5043票増やしています)

 これに対して共産党は前回比で14%得票を減らしており、結果から見れば「維新」という言葉に市民は反応したが「震災復興」や「命を守る」あるいは「安全優先の原子力政策」という共産党の呼びかけは市民の心をつかめなかったことが証明されていると思われます。

 何回も同じことを言って恐縮ですが、今回の選挙戦のスローガンとしては全くピンボケのスローガンであったと思っています。選挙戦の検証はこの点を必ず含めるべきだと思われます。

3.高槻の共産党の敗北が如何に深刻かもう少し具体的に見ていきます。

  今回の選挙結果は、前回得票数から2043票(約14%)減らし、12452票でした。議員の数は5名から3名に減少しました。この3名という水準は40年以上前の水準だと思われます。

 共産党の党勢が伸びているのか、後退しているのかを計る場合、公明党との比較を行えば見えてくるものが多いと思われます。40数年前私が就職した当時、共産党と公明党はデッドヒートを行っていました。大阪や東京の衆議院選挙でも共産党と公明党が1位を取り合っていたような状況がありました。赤旗新聞では選挙運動員どうしのトラブルを伝え、競い合いを煽っていたことを思い出します。それから40数年が経過して、大阪ではほぼ共産党と公明党の党勢の力の比は2:1にまで後退してしまっています。

 さらに前回の参議院選挙、公明党の4割程度まで落ち込んできています。(今回の市議選では得票数で47%、議席では、公明党8名、共産党3名)

 もう少し具体的数字を見ていけば、府会議員選挙での公明党の得票数は23529票、市会議員選挙では26273票と公明党は市会議員選挙で票数を上積(約12%)みしていますが、共産党は府会議員14447票、市会議員12452票と逆に市会議員選挙の方が票を減らしています(約14%)。

 これは、公明党は候補者を沢山立てれば、更に票を掘り起こす力があるのに対して、共産党は市会選挙では多くの無党派の人たちに地縁血縁選挙で票を剥ぎ取られる弱さがあります。これにもいろいろ原因がありますが、一例を挙げれば、選挙ポスターを同じ図案、同じ文言でそろえるなど選挙技術上の基本的誤りから来る面もあります。

4.今回の敗北はまさに「人災」です。

  共産党の獲得票数の減少は長期低落傾向にありますが、今回の選挙で得票をさらに減らし、5名から3名に減少させたのは、指導部の選挙戦術の誤りに負う所が大きいと思われます。

 具体的には

      ◆選挙戦の最大の争点を「震災復興・原発総点検」にしたこと

      選挙ポスターの図案が最大の争点にしている。(5名全員が一致)

   ◆市長選を極めて不可解な方針で臨んだこと

      与党なのか野党なのかわからない。「自・公・民が押している候補を応援します」(高槻民報N0.11-26)

   ◆同和問題を争点からはずしたこと

 関西の共産党が大きく成長したのは同和問題の取り組みが大きく影響しています。今回の選挙結果を見ても東京では比較的検討しているのに大阪では相当議席を減らしています。これは、同和問題の終焉が大きく影響しています。

  この3点が、共産党の票を減らし、勝てる情勢であったにも関わらず、何と戦っているのか訳のわからない選挙を行なった為に敗北したと思っています。

(1)については、既に多く語っていますので省略しますが

 一点だけ申し添えれば、私は京都、神戸、茨木市等の共産党のポスターを見ましたが、党中央の方針を忠実に守り「震災」を前面に出しているのは、高槻市のポスターだけでした。京都などは、市民にとっての切実な要求を全面に立てながら、申し訳程度に震災の課題を入れていました。(馬鹿正直が裏目に出ています。)・・・・資料3

(2)の「市長選の曖昧さが票の掘り起こしに決定的な弱点を招いた」を説明します。

 共産党が勝つ条件は、現在の市政の問題点を追求し、「真に市民本位の市政運営を行うためには共産党の躍進が必要である。」という宣伝を行うことが重要です。自ら与党でもない市長を曖昧な形で応援し、相手候補に対して謀略まがいの攻撃を仕掛け、共産党の品位を落とした戦いに、運動員は確信が持てず、また市民の側から見ても共産党が何を主張しているのか判らなかったのが今回の選挙戦だと思っています。

 共産党が躍進するめには、「まず敵を明確にする、そして共産党が躍進すれば、こんなことが可能になる。」という筋書きをしっかり描いて選挙を戦うことが必要です。

  「敵」の無い選挙(「敵」は権力者側では無く、相手候補)では共産党(運動員)は燃えません。また、市民は、共産党が市政の暴走をチェックしてくれる、共産党に一定の議席を与える方が市政運営は住民本位になるという意識を持っています。(取り分けて役所の人間はそういう意識を持っています)そうした意識が出来上がっていることを理解し、十分活用すべきだと思っています。

 現在の力関係ですぐに与党になれるわけでもない状況下で、「確かな野党」に徹することが共産党を鍛え強くすると私は思っています。へんに与党思考を強めれば、それは敵の罠にはまり共産党を弱くします。今回の選挙結果はそのことを物語っていると思っています。与党でもないのに市長を応援しているから批判できない。そうした中途半端さが今回の市会議員選挙を困難にしたと私は思っています。与党思考を強めれば強めるほど共産党の党勢は衰退すると思います。市民が共産党に期待しているのは、行政の不正に対する追求力です。これを失えば共産党は票を減らすのは当然です。

 (たとえば、この間市長の不正を最も追及しているのはK議員です。かれは今回の選挙で3位5615票獲得しています。)

(3)同和問題と共産党

 赤旗の総括でも、参議院選挙での参議院比例区との比較では、120.1%とある程度まで押し返すことができましたが、4年前の得票との比較では87.7%に留まりました。」と書かれていますが、大阪では参議院選挙の比例区の獲得票数を私は今手元に持っていないので、大阪地方区の得票と比較すると、参議院選挙大阪地方区の得票数が366105票、今回の大阪府会議員の票が361792票と参議院選挙の獲得数よりも若干得票数をおとしています。

 同和問題に対しては2点の問題があります。まず解放同盟の行政に対する介入は未だに完全には終了していないこと。もう一点は解放同盟の不正をつくがゆえに、人権全てが悪のようなイメージを持ってしまい、共産党の政策に人権という文字が現れなくなっていることです。

  政策の中に障害者の人権を守りますとか、働く者の人権を守るなど、再度共産党は人権問題を重視している立場性を強調する事が大切だと思っています。

 以上の3点を絡めた選挙戦の総括が重要と思われます。