共産党の原発政策は一貫していたのか?(2)              意見書 14


                  =馬脚を現した原子力政策=


                                                                                                                   平成23年6月1日

1.共産党の原発政策は未だ揺れ動いている(赤旗の記事から)

(1)選挙戦以降の共産党の原子力政策の変遷  

  私はこの間「共産党の原発政策は何か」「意見書2」、「共産党は「原発の安全点検」から「脱原発」に何時方針転換したのか」「意見書8」、「共産党の原発政策は一貫していたのか?」「意見書12」と共産党の原発政策について問いかけて来ました。この出発点はM氏の選挙公報「原発総点検、自然エネルギーの促進」を見た時これは「アカン」と思ったのが原点です。更に、高槻・島本日本共産党講演会ニュースで、「安全優先の立場で原発の総点検を行うとともに、すこしずつ自然エネルギーへの転換を進めていくことが重要です。と書かれていました。極端なことをいえば「気が狂ったな」と私は思いました。

 これらの記事を見て、この選挙戦で共産党は必ず負ける、この選挙戦をしっかり検証しようと取り組み始めました。M氏の選挙ポスターのおかしさは他府県でも同じなのかと、京都までわざわざ見に行きました。(当日はものすごい暑い日で、クタクタになりました。)

  そこで、必ずしも同じでないことを確認し、次に赤旗の点検に入りました。赤旗の記事を見ながら「なんでM氏はこんな間違った方針を出したのだろう」と見ていましたが、選挙の投票前日の赤旗の主張(4月9日)は「「安全優先の原子力政策への転換を求める日本共産党の立場こそが、国民の不安に応え、願いに沿うことが浮き彫りになっています」」と安全点検(M氏の主張)が共産党の方針だと分かりました。

  そこで、「意見書1」(4月12日)に、共産党は、原発反対少なくとも原発からの脱却、エネルギー政策の根本的な見直しの世論をリードする事が共産党の役割だと私は思っています。(国民もそれを願っていると思います。)それ抜きには国の原子力政策の見直しは絶対に行われません。「常識的な共産党は魅力を失います。」さらにこの常識が敵の罠であった場合極めて惨めな姿になります。

 さらに、「意見書1」で、4月10日(投票日)の赤旗1面のM氏の記事に触れ「原子力発電問題では大阪府として関西電力にきちんとモノをいうべきだと橋下知事に要請した、」とM氏の功績を称えているのに対して、それは違うと意義を唱え、共産党のやるべきことは、「橋下知事に物申す」のではなく、「「原子力政策の抜本的見直し」であり、それは大衆に依拠して戦いを組織して、関電や大阪府に迫ることです。」と指摘しています。

  まず、これらの経過の克明な検証が必要ですが、赤旗は5月23日の新聞で、「共産党 一貫した主張が政治を動かす」と共産党の原発政策一貫していて全て正しかったと総括してしまいました。それに異論を唱えたのが共産党の原発政策は一貫していたのか?「意見書12」です。

  私は基本的には共産党の原子力政策は、5月1日までは、M氏の主張するように「安全点検で」あったと認識しています。5月1日のメーデで「脱原発宣言」を行い、大きく舵を切りましたが、5月2日付赤旗にはまだ共産党の原発政策には弱点を内包しています。それを指摘したのが「意見書8」(5月3日)です。

以下、共産党は「原発の安全点検」から「脱原発」に何時方針転換したのか意見書 8」の抜粋。

 本日(5月2日)の赤旗1面に「原発からの撤退を決断せよ」志位委員長 計画策定も提起という大きな見出しがあります。

 記事の中で「原発は冷却水がなくなると炉心が溶け、コントロール不能となる本質的危険をもった未完成な技術であることです。」これは極めて重要な指摘であり、選挙中に主張した「安全優先の原子力政策」が事実上破綻したことを認めたものです。

  しかしこの期に及んでも、「原発は冷却水がなくなると」と条件をつけたことです。今回の原発事故の原因がたまたま冷却水が無くなっただけで、原発の危険性はそんな単純なものではありません。

 今回はマグニチュード9の地震でしたが、もっと強い地震が来たら、それにより炉心が崩壊し爆発する事さえ考えられます。その際また「想定外の事故」というのですか。後半の「未完成な技術である」という指摘は正しく、なぜ前提条件をつけたのか理解に苦しみます。


と指摘しました。

 ここからが今回の本題です。(上記は今までの私の主張の復習です)

  5月28日赤旗6面の「おはよう ニュース問答」で原発問題を取り上げています。この記事の中で、「再稼動許せない」という見出しの中で、秋平:浜岡原発も津波などへの「安全対策」が終われば再稼動させる方針だそうだから、再稼動させない運動も必要だ。津波だけでなく、地震の衝撃で原子炉が損傷すれば、大量の放射能が飛散し深刻な事態が起きる。

  この最後の指摘は重要です。この文書は、私が「意見書8」で指摘した点(条件をつけたことが誤り)を共産党自身が認めたものです。共産党は何時原発の危険性の中に「地震の衝撃で原子炉が損傷する」を加えられたのですか。私は共産党が原子力政策を「安全点検」から「脱原発」に発展された際、この点を評価しましたが、同時に問題点も指摘しています。

 以下「意見書8」の抜粋(問題点の指摘)


  1. これは原発政策の見直しを図ったものだということを明確にすること
     共産党はいつの間にか政策転換を行い、最初からそういっていたとこじつけます。これを行えば国民から不信を招きます。
  1. 選挙戦でこの方針を立てて戦えなかったことを、国民にお詫びする事
    国民の多くは共産党がこの方針を出すことを望んでいました。 

      注1:次ページ「1.共産党の政策転換を国民は歓迎しています」参照

   選挙戦を戦った党員やその支持者に、「原発の安全点検」という方針が、国民との対話の中で反撃にあい、
   苦労したことに対してお詫びすること。

  1. なぜ「安全点検」という誤った方針が、前半戦の結果を見た段階で克服できなかったのか、その理由を解明にする事。(吉井議員の優れた国会論戦をなぜ活用できなかったのかも)

  2. この方針転換が、何時、どの機関で行われたのか明らかにすること

  •  4月29日の赤旗は共産党のメーデーのスローガンを掲載しています。そこには「安全優先の原子力行政の転換を。」「原発依存から自然エネルギー中心の低エネルギー社会へ」としており「脱原発」を明確にはしていません。注2

  4月30日付赤旗は、「原発・エネルギー問題対策委を設置」という記事を載せています。私はここで議論され党の原子力政策が修正されるものと期待していました。それが1日で方針が変わる(早くて良いですが、大衆は不気味な感じがします。)党の方針決定が党のもてる英知を結集して決められるのではなく、特定の幹部が決めているイメージを与えます。(それほどこの政策転換を行うことの必要性に迫られていたのかも知れませんが。メーデーを逃せば更に政治的に敗退するという危機感があったのですか。)


 何が言いたいのか、つまり共産党は原発の方針転換を党内の論議を経て変更されたのではなく、特定の幹部が急遽変更していることです。ですから、下部にはその変更は伝わらず相変わらず、「原発の安全点検」をスローガンにしています。(これについては高槻の実情を「意見書9」の添付書類「M 2」で指摘しました。)

赤旗でさえ、5月2日と5月28日の記事に違いが発生しています。

★5月2日は

  「原発は冷却水がなくなると炉心が溶け、コントロール不能となる本質的危険をもった未完成な技術であることです。」

★5月28日赤旗

  地震の衝撃で原子炉が損傷すれば、大量の放射能が悲惨し深刻な事態が起きる。

  この違いは、5月2日の原発の危険性は、「冷却水がなくなる」と限定的危険性に矮小化したことです。(これについては「意見書8」で批判)ところが、菅首相が共産党が予想もしなかった浜岡原発の運転停止要請を行い(5月6日)、その際、地震との関連で危険性を述べたからです。(ここでも共産党は一歩遅れてしまいました。)

 5月28日の赤旗の記事はこっそりと地震の衝撃で原子炉が損傷すれば、大量の放射能が悲惨し深刻な事態が起きる。と菅首相の立場まで共産党の政策を前進させています。

 正に付け焼刃の原発方針で、日替わりのようにその内容は変わっています。これでも共産党の原発政策は一貫していると胸が張れますか。

 次に、にこれは言いたくなかったのですが(M批判はもうしたくないのですが)、M氏から今日手紙が来ました。(5月30日)その中で彼は「安全総点検」「自然エネルギーの利用拡大」と脱原発は矛盾しません。と書いています。

  確かに矛盾はしていませんが、原発力依存からの脱皮という立場から見れば決定的に違います。現在の党の方針は、脱原発を前提に段階的に「ゼロ」に持っていくというものです。これに対してM氏に主張は「「すこしずつ自然エネルギーへの転換」とは天と地ほど違います。(この「すこしづつ自然エネルギーへの転換」は誰でもが一致できるスローガンです。つまり無意味です。)この違いさえも判らない人が、大阪府議団の団長では、共産党の今後が心配です。

 もう一点だけ、M問題に触れます。

 M府会議員からもらった手紙は、誠実さがあふれたものであり、これ以上M氏を攻撃する事は手控えざるを得ない内容です。しかし私は幾つか気になる点があります。

  1. 私はM氏に一貫して要求してきたことは、「メールで出した意見」には「メールで答えるべきだ」と主張してきました。これは共産党がメールを活用しているか否かを把握するためでもあります。(既にK元議員やA市委員からM氏の伝言は受けていました。)私が「連絡がない、連絡がない」といったのは、メールが使いこなせているかが見たかったのですが、今日の返事は400百字詰め原稿用紙6枚のものでした。
  1. しかも、私が求めていたのは、「受け取ったというメールを出すべきだ」でしたが、彼の書き出しは「返事が遅れました(といっても、最初は無視するつもりだったのですが)」と書き、「理由は、地方選挙後半戦の一番忙しい時に、メールをしてきて、「返事をせよ」と言われても、私にはそんなひまがないと思ったからです。」と書かれていました。正直な文書で何とも言うことがありませんが、私の求めていたのは「受け取ったというメール」だったのに議論を掏り替えています。それと忙しいという理由があれば、市民から頂いたメールを無視することも可能だとの判断が共産党の今の姿を現しています。(大阪府委員会も全く返事をしてきません)

 回答内容は、M氏そのものですが、誠実さあふれていますが、「議論を行う」という意味では、全く腑抜けな文書になっています。取り分けて、橋下府政の評価は、私と違います。M氏は「開発優先や大企業への規制緩和が目的で、大阪都や道州制は、そのための手段です。その逆ではないと思います。」と書かれています。
  私は、「意見書11」でも、私自身は、この問題の位置づけを行う力は無いし、まとまった論文等も見たことが無いと断りながらも、M氏の橋下氏への戦い方は基本的に間違っていると書いています。

  「意見書11」の抜粋

  スローガンは橋下独裁体制反対であり、これを許せば戦後守られてきた地方自治が崩壊し、府民の生活が破綻するという訴えを行う必要があります。阪神高速の延伸反対では、なんら「維新の会」と対決したことにはなりません。(私は車に乗らないし方向音痴なのでよくわかりませんが、この延伸を望んでおられる府民の方もおられると思います。このような主張では「維新の会」の狙いや本質は描けません。)

  私はM氏の主張、阪神高速の延長反対が、橋下府政の狙いを打ち破るという考え方は間違っていると思います。現在の争点は、大阪府と大阪市を一体化して、全ての権限と財政を大阪府(都)に集中し、橋下独裁体制を作ることに反対することが重要だと思っています。今「維新の会」がなぜあんなに人気があるか、それは大阪市政の今日までの腐敗堕落(例えば職場放棄が平気で行われている。職場ぐるみで宴会を行いながら残業手当をつけていた。あるいは覚せい剤で何人かが捕まった等不正が耐えなかったことと関連しています。)この大阪市の持っていた弱点を巧みに使い、大阪市解体を狙い、全ての権限を彼が持つことに狂奔しているのが今の姿だと思います。今回の選挙で「維新の会」が40%もの得票を獲得したのは、何かをやってくれる、彼ならこうした行政の腐敗堕落を改善してくれるとの思いから市民は投票されています。

  そうである以上この「大阪都構想」そのものが市民の生活を守るのではなく、M氏の言う大企業優先の政治になると批判しないと、「阪神高速の延伸反対では」(個々の政策で対置では)風車に立ち向かうドンキホーティのように見えます。もし、個別政策で戦うとしたら、「君が代」起立強制条例です。これは維新の会そのものです。相手の思想性が明確になっている課題で戦いを挑まないと戦いにはなりません。阪神高速の延長反対では「維新の会」との戦いになりません。(なぜなら、阪神高速の延長は「維新の会」だけでなく自民党等も賛成していると思われます。)

  この点については、党中央の見解を是非知りたいです。大阪府委員会に対する指導を強めないと、今回の一せい地方選挙のように「維新の会」との対決を回避した選挙戦になってしまいます。私は敵(攻撃すべき相手は)は「橋下の掲げる大阪都構想」であって、その政策「阪神高速の延伸反対」ではないと思っています。「橋下」という冠が絶対に必要だと思っています。(是非「意見書11」の「一せい地方選挙で共産党は本当に維新の会と戦ったのか」を読んでください。決して戦っていません。彼らの躍進の秘密はそこにあるのです。)