一せい地方選挙で共産党は本当に維新の会と戦ったのか       

                                                                                                                                   意見書11

                                                                           平成23年5月24日

 5月22日(日)大阪民主新報第2面で、秋の「ダブル選」展望して 日本共産党 M議員団長に聞くという記事があります。その中でM府会議員は「府議選では日本共産党は、東日大本震災の救援・復興に全力を挙げると同時に、橋下知事や維新の会の「大阪都構想」の本当の狙いが、権限・財源を一つにし、大企業呼び込み型の巨大開発をより大掛かりに進めることにあることを明らかにし、府民の命・暮らしを守る府政への転換を掲げて奮闘しましました。」(以下「選挙線の総括」といいます。)と語られています。

 はたしてこれは真実でしょうか、私は、共産党は「維新の会」との対決を避けて戦い敗北したと思っています。(意見書1)以下、私の見方を説明しますが、私はすべての資料を手元に持っているのではなく、私の手元にある資料からの判断です。もし共産党が違うと主張されるのなら選挙戦で公表されたすべてのビラ等の開示を求めます。

 そもそも、私が今回の意見書を出し始めた契機は、府議選に対するM氏のビラを見た時からです。そのビラはM氏が苦労人であり京都大学をでた秀才ですという趣旨が前面に出ていました。このビラを見て私は咄嗟にこれではダメだと思ったのがきっかけです。(残念ながら私は手元にこのビラが無く、立証できません。)しかし、赤旗4月10日号にその片鱗がうかがえます。一面に「大阪府議選 橋下府政にモノいう党を M候補オール与党勢力と競り合い」という見出しの中で、「M候補は、5歳で父を亡くした生い立ちと重ね、「東日本大地震で両親を亡くした子供たちが82人」と報道されています。「いま政治に必要なのは温かい心です」という記事があります。この記事は、橋下知事との対決を避け、M氏の「人柄」で選挙戦を戦おうとしている選挙戦術です。なぜ、「M氏の当選で府民の生活を破綻させる大阪都構想を「断念」させましょう!」みたいな見出しにできなかったのか、この見出しでは、橋下府政を認め、それに「モノ」が言えるM氏が必要と読み取れます。

 もう少し、原点に返って、時系列にM氏の主張を見ていきます。(先の記事は投票日前日の記事)

◆3月23日高槻民報(No.11-17)号

 ☆大見出しは、いのち・くらし第一の大阪を カジノや阪神高速延伸ストップ

 ☆中見出しは、@くらしと医療の安全を、A防災・安全のまちづくりを、B橋下知事の「財政再建」大型開発は

          そのまま、C橋本知事と維新の会さらに府民犠牲と巨大開発推進を

 という記事を載せていますが、「大阪都構想」という文字は一切現れません。先のM氏の発言「本当の狙いが、権限・財源を一つにし、」(選挙線の総括)という橋下独裁体制の確立を狙ったものだという説明が一切ありません。

◆ 3月26日高槻・島本日本共産党後援会ニュース

 ☆M府会議員は、次の訴え(要旨)を発表したのでお知らせします。

 ☆大見出しは、なんとしても勝利し、みなさんのお役に立たせて下さい。

                    府会議員 M      2011年3月25日夜

 ☆中見出しは、@急ぐべきは震災救済・復興、安全・安心の街づくり、

           A深刻な原発事故、安全優先で総点検、

                     B政治にあり方を問い直した東日本震災、

                     C府民要求実現、願いに寄り添ってきた日本共産党の値打ち、

                     D選挙情勢は厳しく、大変です、

           Eこれまでのご支援に心から感謝します。

                       必ず勝利するために支援を広げて下さい。

   選挙戦を戦う上での「基調報告」です。

  ここでも、M氏は橋下知事が推し進める、「大阪都構想」との対決を打ち出していません。彼が述べているのは「Bの政治のあり方を問い直した東日本大震災」の中で、「維新の会」の橋下知事のようにカジノや阪神高速の延伸、関西空港へのアクセス時間を7分縮める高速地下鉄道建設ではなく、くらし・命・福祉を優先にした父性に変えることが必要です。と書いています。(維新に関連する記事はこれだけです。)

  しかし、この記事は「維新の会」の本質をまったく突いていません。まず、

@「維新の会」の橋下知事ではなく、橋下知事が牛耳る「維新の会」です。「維新の会」は橋下知事の「手勢」

  でしかありません。この位置づけを正確にすることが大切です。

A橋下知事との戦いは、戦後勝ち取られた民主主義(政治制度)との戦いです。彼は大阪市や堺市をつぶし,

 すべての権限と財力を一手にまとめる(独裁者)を目指しているのです。そのときにいくつかの政策の違いを対

 置して戦おうとするのは、ばかげています。

  スローガンは橋下独裁体制反対であり、これを許せば戦後守られてきた地方自治が崩壊し、府民の生活が破綻するという訴えを行う必要があります。阪神高速の延伸反対では、なんら「維新の会」と対決したことにはなりません。(私は車に乗らないので良くわかりませんが)、この延伸を望んでおられる府民の方もおられると思います。このような主張では「維新の会」の狙いや本質は描けません。

★    4月10日選挙広報(公の文書ですよ)

   大見出しは、くらしいちばん、耐震化や河川改修

   縦見出しは、原発総点検、自然エネルギーの促進

   【ごあいさつ】の中で、女手一つで育ててくれた母の思いと、みなさんの願い、被災地の故郷復興への思い

           を重ねて、身を尽くします。

   政策は10個並べているが、「大阪都構想」という文言は一切ありません。橋下知事との関連では、

@    橋下知事の国保「広域化」による2万円値上げはストップ

A    カジノ・阪神高速延伸の橋下「開発」は中止を

  の二点です。この選挙公報で、M氏が言うような「橋下知事や維新の会の大阪都構想の狙いを明らかにし戦った」(選挙線の総括)といえるのでしょうか。

★    4月26日赤旗13面 大阪市長選・知事選へ運動新たに 日本共産党大阪府常任委員会

 もう一つ面白い記事を見つけました。これは共産党の大阪府常任委員会が「一せい地方選挙後半戦の結果について」という声明文書です。この中に「維新の会」の位置づけがなされています。

  「古い自民党政治の装いを変えた地域政党に目が向けられる中、切実な要求に沿った草の根の府民運動を広げ、府民の新たな共同を発展させていく大事なときを迎えている」と書かれていますが、ここで判ったことは、選挙中の原発方針と同じで、共産党は橋下知事が推し進める「大阪都構想」についても、まったく党としての方針が無いことが浮き彫りになっています。 

 橋下知事が推し進める「維新の会」を「古い自民党政治の装いを変えた地域政党」というような位置づけをしていたら、秋の選挙戦で共産党はまたもや大敗するでしょう。

 私は、地方政治の専門家でも無く、この30年ぐらい政治から遠ざかっていた人間ですので「維新の会」の狙いを戦後民主主義の中で正確に位置づけることはできませんが、少なくとも彼は民主主義の一環である地方政治の破壊を企んでいます。「橋下王国」みたいなものを作ろうとしています。この彼のたくらみを正確に位置づけない限り、誰と戦っているのか判らない、肩透かし選挙になってしまいますよ。

 府議選の後半で赤旗に「維新の会」の本質を共産党の自治体局(?)が主張を載せていたと思います。(私は読もうと思っていましたが、読まないままその新聞を失ってしまいましたが、要するに党の方針(政策)を正確に学ぶことが大切です)

 最後に政党は誠実でなければならないと考えています。選挙で負けたときは負けたというお詫びを国民にすべきです。あるいは方針を間違えたときは間違えたと率直に謝るべきです。今頃になって、あたかも正しい選挙方針で戦ったかのような主張をすることは、一時的にはごまかせても、結局は政党としての力を衰退させてしまうことを真剣に受け止めてください。うそをつけばつくほど、国民は共産党を見放します。そんな政党に自分の運命を任すことができないからです。

 最初にお断りしたように、私は手元にある資料だけで判断しています。「違う、われわれは「維新の会」と戦った」といわれるなら、いいとこ取りをせず、すべての資料を開示してください、その上であなた方の主張が正しければ誤ります。