韓国軍に銃弾1万発提供は何を明らかにしたのか

              =赤旗報道の死角を暴く=


 平成25(2013)年12月29日


 12月24日付赤旗は「韓国軍に銃弾提供」「日本政府決定」「武器輸出三原則なし崩し」という記事を載せている。この記事は一般紙も載せているが、赤旗の主張はそれらとほぼ同じ水準になっている。

武器輸出三原則に違反し、なし崩しに「三原則」を廃止しようとしている


 赤旗が問題にしているのは、武器輸出三原則の例外扱いとし、なし崩しに「三原則」を廃止しようとしているというものである。翌25日には、市田書記局長の記者会見の内容を載せ、問題点の整理を行っている。その内容は、「『積極的平和主義』の名のもとで自衛隊の海外派兵、海外で戦争できる国づくりへの危険な第一歩を踏み出したものであり、絶対に許されない」と述べている。
 具体的には
 @ 日本の自衛隊が、歴史の上で、武器弾薬を外国の軍隊に提供するのは初めてで、極めて重大だ。
 A 17日に閣議決定した「国家安全保障戦略の中で、武器輸出三原則そのものをなくしてしまおうとする動きの先
    取りだ」
 B 「これまでの政府答弁は『国際機関からの要請があっても武器・弾薬は提供しない』というものだった。その一
    線を踏み越えるわけであり、官房長官の談話だけで済ませることは許されない。」
 と述べている。さらに韓国政府の主張との違い等も指摘していますが、基本的主張は「武器輸出三原則」に違反しているというものである。

PKOは平和維持部隊であり、戦闘行動に参加しないのが原則ではないのか

  私はこの情報に接したとき一番驚いたのは、日本のPKO派遣部隊(平和維持部隊)が、1万発発もの銃弾を持って南スーダンに派遣されていた実態に驚きました。私が情勢に疎いのかもしれませんが、1992年、国際平和協力法も基づいて国際連合平和維持活動(PKO)の一環として自衛隊等がカンボジア王国に派遣された時は、殺傷能力の高い武器の携帯は認められず、拳銃及び小銃のみを携行していました。
  武器使用、部隊行動基準(武器使用規定)に基づき制限されており、ともに活動する他国PKO部隊に比して著しく厳格であった。しかし、日本の文民警察官高田晴行が殺害されるなどの事件も起きたため、武器使用の見直しが行われてきたことは知っていたが、あくまで隊員の生命を守ることが基本であり、現地の紛争に介在しないことが原則と認識していた。
 自衛隊の派遣人数は320人規模であり、今回韓国に提供して銃弾に適合する銃は300丁足らずであり、その銃で10000発(注1)を譲ったからには、少なくとも20000発以上の銃弾を持って、スーダンに派遣されたと見るべきである。

注1:10000発を韓国に譲ったのであれば、日本は2万発以上の弾丸を所持していたと思われる。共産党は、自
   衛隊は銃弾を何発携帯していたのか、その銃弾の数は何によって判断されたのか、もし自衛隊が、南   スーダンで10000発の銃弾を打てばどのぐらいの死傷者が予測され、それはどのような事態を招く
   のか、それらの判断がどの段階(政府なのか自衛隊独自)で行われていたのかを問いただすべきであ
   る。

平和維持活動に10000発を越える銃弾は不要(PKO5原則に違反)

  10000発の銃弾が示したものは、「武器輸出三原則のなし崩し」というような次元に留まらず、日本が具体的な戦争に巻き込まれ、憲法の規定である、国際紛争を武力で持って解決しないという日本の国是を、現地自衛隊が一方的に踏みにじる危険性を有していることである。
 今回の自衛隊の携帯していた銃弾の多さは明らかにPKO活動の原則(注2)に違反している。この点に批判を向けない赤旗の主張には疑問を感じる。

注2:PKO原則
   国連平和維持隊への参加に当たっての基本方針(外務省)
      (いわゆるPKO参加5原則)
  @ 紛争当事者の間で停戦合意が成立していること。
  A 当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が当該平和維持の活動及び当該平和維持
     隊への我が国の参加に同意していること。
  B 当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。
  C 上記の基本方針のいずれかが満たされない状況が生じた場合、我が国から参加した部隊は、撤収すること
       が出来ること。
  D 武器の使用は、要員の生命等の防衛のために必要な最小限のものに限られること。 
  
    12月25日付朝日新聞朝刊一面は、「南スーダン撤退検討」「PKO自衛隊、治安悪化で」という見出しを掲げ、
    「現地の情勢が悪化しており、自衛隊のPKO参加条件が満たされなくなる可能性があると判断した」こうした状
    況から「政権内では『一日も早く撤退すべきだ』との声もでていた。」さらに「今の南スーダン情勢は、PKO参加5
    原則のうち『紛争当事者間で停戦合意が成立』の条件を満たしていない可能性があると分析」と書いている。
     しかしこの報道に対して、政府は25日午後の国家安全保障会議で、活動を継続する方針を確認したと防衛
    大臣が活動継続を表明している。朝日新聞が政府の分析で「PKO5原則に違反する状況」と主張していることが
  正しく、政府はPKO5原則も踏みにじろうとしている。
     

菅義官房長官の談話には事実誤認(ウソ)がある

 菅官房長官は、自衛隊が緊急に提供したのは

  @ 韓国からの要請があった。(人命に関わる緊急の要請であった)
  A この韓国の使用している銃に適合できる弾を使っているのは(保有しているのは)日本しかないので提供し
       た。
 と述べているが、@については、韓国側は「弾は不足していない。予備のためにもらった。」と主張している。(返すという論議にまで発展している)
 Aの同じ弾を使う銃は日本しか使用していないと主張しているが、これもウソであり、アメリカも国連の要請に従って3500発の提供を行っている。
 韓国では日本から提供を受けたことが問題となっており、韓国側が銃弾の提供を受けることによって、結果的に「安倍首相が推進している『集団的自衛権』の必要性を示す最初の事例」に協力してしまったと政治問題になっている。(注3)

注3:朝鮮日報「社説」 日本に集団的自衛権の口実を与えた韓国軍の無能さ
   日本は今回の事態について、安倍政権が掲げる「積極的平和主義」韓国が同調したかのように主張するだろ
     うが、そのようなことは絶対にあり得ない。しかし、日本がこのような主張を行う口実を与えたのは、間違いなく
     韓国国防部の無能さにある。
        インターネットではいろいろ無責任な会話がなされており、日本側からは提供した銃弾に、「竹島は日本の
     物」と刻印して渡すべきだったとか、韓国側では返す方法は「日本に打ち込んで返してやれ」というものまであ
     る。この銃弾の提供は、その後の安倍首相の靖国参拝と絡んで、ますます政治問題へと浮揚してきた。

10000発の銃弾がなぜ携帯されたのか、真実を追求すべきである。(明らかにPKOの目的を踏み外している)

  この銃弾の提供は、韓国側が言うように、韓国から直接日本に要望があり、日本が貸与したもので無く、国連からの要請があり、日本がそれに応え、その銃弾が韓国に提供されたと見るべきではないかと思われる。
  日本の派遣部隊が必要以上の銃弾を携帯していたのも最初からそういう役割が与えられていたのかも知れない。そうでないと推定20000発以上の銃弾を携帯していたことの意味がわからない。
 本当に戦争を行う気でスーダンに派遣された(行った)のか、共産党は、PKOの変質とこの銃弾の多さを是非とも解明して頂きたい。