大津事件第6弾


    第三者委員会の設置要綱は正しいのか?

                     真の真相究明に蓋をする設置要綱



<第三者委員会の設置目的は>

 8月24日付毎日新聞は、「いじめ調査委員」「委員が家庭情報漏らす」「大津・中2自殺 遺族側、抗議へ」という記事を載せている。この記事の中で第三者委員会の設置目的を「学校で起きたいじめなどの事実解明」と要綱で定められている。という記事がある。この要綱に反し、野田委員が、「県子ども家庭相談センター(児相)に生徒の父親が相談した内容」を聞き出し「第三者に漏らした恐れがある」としている。この状況を「調査に関係ない家庭の情報で先入観を持って調査にあたる委員の中立性は疑わしく、委員就任に際して市が公平・公正な調査を求めた要綱に違反する」などと遺族側が批判しているという記事を載せている。

  これに対して、指摘を受けた野田員は「無関係な人に話していない」と押さえながら、「一般論としては自殺の原因は家庭要因も調査すべきだと」述べてとされているが、毎日新聞はこの教授(野田氏に)守秘義務違反があったような論調で記事を締めくくっている。

  この報道を受け、野田委員は第三者委員会の委員を辞退し、第一回委員会(25日)は、5名で開催された。(ちなみに第2回会議は、遺族側がわからの強い推薦のあった尾木直樹氏が出席せず4人で開催された。)

<第三者委員会は少年が自殺に至った真相究明を>

 私は一貫して被害者側の一連の対応に疑問を感じている。この事件の新聞報道がなされたのは7月3日か4日が最初だと思われる。(事件は9ヶ月も前)これは7月17日の第2回口頭弁論を有利に進めるため、被害者側から情報のリークがあったものと思われる。(推測に過ぎないが)インターネットを巻き込んだ形での異常な報道合戦(注1)に、越大津市長はあわてふためき、自らの責任に波及することを恐れ、「教育委員会は信用できない、裁判は和解する、真相究明のため第三者委員会を作る」と宣言した。

注1:この辺の状況をニューズウイーク紙日本版は、「大津いじめ事件を歪曲する罪」という見出しで、「いじめをな
      くすためのキャンペーン」というより「暴くこと」自体を目的化していないか、学校へ脅迫文書を送ったり、加害
     者の親の勤め先(とされる場所)に嫌がらせすることで、いじめはなくなるであろうか。暴いて槍玉に挙げるだ
     けの単なるパッシングは、いじめ問題は結局「他人事」と見ていることのあらわれでないか・・・と指摘してい
     る。

 マスコミの支援を受けた被害者側は第三者委員会にも介入し、委員三人を自ら推薦し、さらに第三者委員会の設置要綱の作成にも介入し、その目的を「学校で起きたいじめの事実解明」と限定し、家庭での問題等の隠蔽を図ろうとしている。

 調査すべきは、「学校で起きたいじめなどの事実関係」だけでなく、「この少年が自殺にいたった経過」であり、それが本当に「いじめに」よるものか、それとも家庭での問題もあったのか、あるいは少年の心の闇は何であったかの解明である。

<子供の出したサインを見逃した責任は>

  この自殺事件では、少年が何らかのサインを出していたのに教師集団は気がつかなかったことが大きな問題になっている。教師自身もその点は認めている。(注2)

注2:「やっぱり皇中がすき(7号)」には、今後の課題を述べ、その中で教師の克服すべき課題として、以下のよう
     な記述がある。
    「そして、教師の資質や力量の向上です。「いじめ」を見抜けないのは教師の責任です。教師自身が襟を正
      し、自らの自己研鑽に励みたいと思います」と記されています。

 しかしもう一点重要なことは被害者の家族は子供のサインに気がついていたのかも事実関係を調べる上で重要な情報である。この父親は児童相談所に相談に行っていると言うことは、子供の異変に気づき、自分たち夫婦では解決できないと思い、児童相談所に行ったと思われる。この相談内容が何か、またこの行動が果たして正しかったのかも真相究明には点検されるべきである。

 父親が児童相談所に相談せず、学校側に相談しておれば、学校も「いじめか」「じゃれあい」かの判断を誤らず、適切に処理できていたかも知れない。さらにこのいじめが単純なものではなく、子供の置かれた家庭環境にも原因があるとすれば、それはこの調査委員会の、調査対象にしなければならない。

<解明すべきは、自殺に至った経緯の解明であり、犯人探しではない>

 何が求められているのか、「真実の解明こそが」求められているのであり、裁判闘争で被害者家族が有利になるための材料集めではない。この間の一連の流れは、被害者側の主張に沿ったものであり、果たして真実の解明が行われるか疑問である。被害者側家族(弁護士)の主張は、裁判闘争で争いながら、第2回口頭弁論を控え、裁判上の争点を一般紙にリークし、裁判所外での議論を巻き起こし裁判闘争を有利に展開しようとする意思があるように私には見える。

 さらには、第三者委員会も開催前に委員のスキャンダル(守秘義務違反)を暴き出し、委員を辞退に追い込んでいる行為は何か闘争戦術のみが優先しているようで不快感を感じる(注3)

注3:被害者側の行動には様々な疑問がある。

   @9ヶ月もの前の事件を、なぜ今問題としているのか。裁判日程とのかかわりに大きな疑問ある。(今回のマス
        コミの一大キャンペーンに被害者側(弁護士も含む)がかかわっていなかったのか究明されるべきだ。)

   A第三者委員会の設置にあたって、被害者側委員と教育委員会側推薦委員の同数を求め、設置目的を「学
        校でのいじめ」に限定させたことに疑問が残る。(真相究明には「親としての責任」も含めて議論されるべき
        である)

   B3名づつの同数の委員を求めながら、1名の委員への疑義をはさみ(またもやマスコミを利用し)、委員会の
        バランスを壊してしまった。また、「家庭の問題には触れない」ことを、これで確実なものとした。

<家庭に本当に問題がなかったのか・・事実究明は重要である>

  澤村教育長は、この問題の解明に対して、いじめだけではなく「家庭の問題も明らかにされるべきだ」とはっきりと主張しており、この発言が、今回の問題に「火に油をそそぐ」発言となり、この事件を全国的に有名にしてしまった。(注4)

  この発言が間違いか、真実かの解明を行うべきである。もし澤村教育長の話が、自らの責任逃れのために行われたのであれば、澤村教育長を罷免すべきだし、逆に澤村教育長の指摘が正しいとすれば、この「大津・中2自殺事件」は「予断と偏見」で大騒ぎし多くの加害者側と言われる人の人権を踏みにじった事件でもある。

注4:たとえば雪印乳業の事件では、記者団からの執拗な質問攻めに、「そんなこと言ったってねぇ、わたしは寝て
      いないんだよ!」と記者団に怒鳴り返し、事件に火をつけてしまった。

  知りたいのは、犯人が誰かと言う問題ではなく、「自殺」の原因がいじめにあったのか、それとも家庭にも問題があったのか、真実の究明がもとめられている。もし家庭にも問題があった場合、家庭と学校はどのように連携すべきであったのか、被害者の両親は少なくとも子供の異変に気づき、児童相談所に相談に行っていたのであるから、その対応が正しかったのかも問われるべきである。この自殺を防げなかった責任が果たして全て学校側にあったのか冷静な分析(事実の解明)が行われるべきである。

 人一人が死亡するという重要な問題を、その場の「雰囲気・うわさ」だけで加害者を特定し、「私刑・リンチ」のような対応を行うべきでない。事実は状況証拠だけでなく客観的証拠を持って立証されるべきである。

<被害者側は真相究明を求めているのか、それとも裁判闘争に勝利しようとしているのか>

  現在の被害者側の動きは、裁判闘争を有利にすることに主眼が置かれ、真実の究明より、戦いに勝つに主眼が置かれているように私には見える。設置目的の要綱から「家庭での問題」をはずしたことは、この委員会は結局真実の解明にいたらないと思われる。就任前に首になった野田委員の言葉「一般論としては自殺の原因は家庭要因も調査すべきだ」が常識的判断だと思われる。全てはマスコミの煽りの中で正常な判断ができなくなっているのが大津中2自殺事件だ。

  ただ私は事態はそう単純にはいかず、どこかで見直しが行われ、現在正義と叫んでいるものが、批判されるのではと思っている。ニューズウイーク紙が指摘した「大津いじめ事件を歪曲する罪」という批判が正論になる日がくることを願っている。