赤旗は、外国人(選挙権が無い)の人権に無関心である。
                                    選挙至上主義も「ここに極まれり」か?



 赤旗は外国人の人権の視点が極めて弱い。この間私は前原議員への外国人から政治献金の批判記事及び北朝鮮の衛星「ロケット」打ち上げの記事の中にある問題点を批判してきた。これらの記事は日本人の中にある差別意識の増長につながる論点がある。(注1)

注1:志位委員長が北朝鮮の「ロケット」発射中止を求める声明発表、

            この「声明」の本当の意図は何か(保守との合同の行き着く先) 4月2日 参照

<外国人も住民基本台帳に(7月10日赤旗)・・この記事は一体なんだ!>

 今回は「外国人も住民民基本台帳に」という赤旗記事に異論を挟みたい。まず赤旗2面欄の「ニュース@NEWS」という欄はどのような役割を持っているのか定かではない。恐らくこの欄は、赤旗記者が書いたのではなく、時事通信などの配信記事を載せている欄だとの思いが赤旗編集局にはあるのかも知れない。しかし当日付けの記事を見ても「”国有化に中国系にマイナス”」という記事は【北京=時事】と書かれている。同じ欄にある「外国人も住民基本台帳に」と言う記事にはそうした注釈は付いていない。

  しからば、この問題を論じる場合、どのような視点で論評を加える必要があるのか、それは多文化共生(注2)の視点に立って、この制度改正が外国人の人権を侵すことが無いのかという視点で評価・論評すべきだ。

 しかしこの記事はそうした視点からは全く書かれておらず、政府発表の“趣旨説明“より悪い記事になっている。具体的には、今日までの制度(外国人登録制度)では、「不法滞在者に新規に登録所を発行してしまったりするケースもありました。」という行である。

注2:地方自治体の住民の中には外国人の方もおられます。その数は年々増えて行く傾向にあります。このような
     状況の下で「外国人市民のかたも同じ地域の住民として互いに認め合い、共に地域づくりをしていうという考
     え方です。」→永住外国人に地方参政権を認めることにもつながります。


<外国人登録制度(7月9日新しい「在留管理制度」の施行により廃止)>

 日本に連続90日を越えて滞在しようとする外国人(無国籍者を含む)は、在日米軍将兵や外交官などの一部例外を除いて必ず登録する義務がある。(第3条)

 この法律の趣旨は、入管法で適法に入国した者のみを対象としておらず、日本国に連続90日を越えて滞在する者を対象にしている。(不法滞在者も対象にしている)。まず用語問題であるが、「不法滞在者」(注3)という言葉も行政用語であり、外国人の人権に関わっておられる方は「オーバースティ」などの表現をとっておられる。(この文書では一応「不法滞在者」という言葉を使う)

 この「不法滞在者」は、1993年の30万人をピークに年々減少し、2011年には78488人に激減した。(日本政府は安価な労働者としてこの人たちを利用し、最近のように不景気になると追い出そうとしている。政治的な側面がある。)

注3:不法滞在者とは「在留の資格」を持たない外国人をさす言葉。不法残留(オーバースティ・超過滞在)と不法入
      国がある。難民法を立法化している国では、政治難民は、不法滞在にならない。

 この「不法滞在者」の問題は社会問題であり、共産党として如何に取り組むかが課題(注4)としてあるのに、「不法滞在者に新規に登録所を発行してしまったりするケースもある」という言い方は、この者たちの存在を認めず、社会的に抹殺してしまおうとする驚くべき思想である。

 注4:現在強制送還で社会問題になっている事例が幾つかある。2009年3月23日東京新聞は、両親が不法滞在
       で強制送還される中学1年生の少女(カルデロンのり子)の問題を捉え、日本でいずれ同居できる方策を国
       は模索すべきという【社説】を載せている。

  少し長いが以下に引用する。

  両親が帰国しても「一緒に住みたい」という家族の願いをかなえるべく国は継続的に力尽くすべきである。両親はこれまでまじめに働き、長時間、日本社会に受け入れられていたのだ。(注5)2万人もの地域の人々から一家残留を求める署名があり、市議会でも同趣旨の意見書を採択した点にも留意してほしい。

 日本が批准した国連の「子どもの権利条約」では、意思に反して、児童が父母から分離されないことを明記している。いったん両親が帰国したら、違法状態は解消する。両親は法に従うのだ。やがて来日するだろう。

 その後も短期滞在を繰り返すのは、家族の結びつきの点からも経済的にも、あまりに不自然だ。国際化時代にそぐわない。両親に長期滞在を認め、いづれ「定住者」の在留資格を与える方策を国は真摯に探るべきだ。晴れ晴れと日本で暮らす道筋をつくることを望む。それが人道であろう。

注5:この両親は日本で製造業の「3K」職場で16年以上働いてきた。ところが2004年3月、製造業への派遣も認
      める改正労働法の施行とともに、外国人の不法滞在者への取締りが強化された。

<多文化共生の思想が欠落>

  東京新聞が主張している「不法滞在者にも生存する権利がある」という思想が赤旗には全くない。この記事の最後に、「今後、「居住地によって不法滞在者が行政サービスを受けられなくなる可能性もある」との声も上がっています。」と書いているが、全く第三者的な白々しい表現は何か、困っている人があれば、日本人・外国人の区別無く、その方達に寄り添い戦うのが共産党ではないのか。  

 改正法は「不法滞在者」を法の対象からはずしており、今のままでは「子どもの教育を受ける権利」が奪われる恐れすらある。(行政はこれらの人の行政サービスを行う根拠を失う。)それを赤旗は、「行政サービスを受けられなく可能性もありますとの声も上がっています」という無責任な報道は、現在の共産党の思想的劣化を表している。

 しかし共産党のこの立場は、外国人だけでなく、日本人の良心的な部分からも必ず見放される。先にあげたカルデロンのり子さんの事例でも2万人もの地域住民が、一家残留の署名に応じている。地域社会では「共に生きると」いう考え方が芽吹いてきているのである。本来ならこうした運動の先頭に共産党はいなければならない。

<外国人の人権に全く無関心・・・傍観者>

  まさに上記の点が今回の法改正の問題点であり、日本にいる8万人足らずの外国人の生存権が脅かされている状況に対して、「共産党は地方議会で外国人の生存権を守るために奮闘します」と言い切れないのか理解に苦しむ。

  恐らくこの記事を書いた記者は、この法案審議の際、どのような問題点が指摘されたのか、あるいは日本政府が安上がりの労働力として、見てみぬ振りして利用してきた歴史など何も知らず、政府広報か何かを引用して書いたのだと思われる。赤旗記者の政治的力量の劣化も著しいものがある。

  一つひとつの戦いから撤退し、共産党には外国人の人権を守る運動の情報も入ってこなくなっているのだと思う。赤旗新聞は大衆の戦いに支えられて成長し、また大衆の戦いを支援する機関紙でなければならない。

  外国人の人権に全く無関心な共産党を見ていると、赤旗拡大と選挙至上主義の現在の戦い方から見れば、外国人は票にならない、「票にならないところ」に力を入れないということか?と考えてみたくもなる。(注6)

注6:数年前に在日のお年寄りの方と話したことがある。府営住宅に住んでおられたが、公明党の方が自治会を
      完全に掌握されていて、いろいろ催しがあるが、自分は在日のために仲間に入れてもらえない。選挙の投票
      権が無いからといわれた。・・・共産党も同じか?

 拡大、拡大と金儲けにだけ走り、赤旗が政治的役割を果たせなくなっているこの現状を共産党幹部は気付いていない。なんともいえない状況である。共産党の思想的劣化は、「ここに極まれり」ということか?

PS:7月12日の毎日新聞一面は、「中2自殺学校操作」「滋賀県警」「いじめ暴行容疑」「市教委も日誌など押収」
     と一面トップで大々的に扱っている。テレビのニュースも各局トップニュースだ。

   赤旗はこの事態をどう評価しているかを見ようと思って探したが、なんと赤旗にはこの記事が無い。この事態
  をどう評価してよいのか赤旗記者には判断できないのであろう。党中央のトップにお伺いを立てないと記事が欠
  けない。まさに嘆かわしい限りだ。こんな重要な問題を落とすなら「一紙で間に合う新聞」という看板が泣いてい
  る。