赤旗の春闘記事に「賃上げ要求」が一言もない

  春闘は、「賃上げや労働時間の短縮など労働条件の改善を勝ち取る戦いである」


平成26(2014)年1月13日

はじめに
  共産党は、最近賃金闘争を労働者の権利として闘い取るものではなく、大企業の内部留保金の1%を労働者に還元してもらう要求行動に切り替えている。個々の労働者(労働組合)が闘うのではなく、共産党が安倍首相に会い、「景気を回復するためには労働者の賃金をあげることが重要です」と進言し、その方法は、「大企業の内部留保金の1%の切り崩しで行っては」と具体的対応方法まで教えている。

赤旗近畿欄春闘記事に「賃上げ要求」一切なし

  この事を正に表したのが、1月10日付の赤旗13面近畿欄の「安倍・橋本暴走ノー 春闘勝利を」「維新を追い詰める」という記事である。この記事は共産党中央が書いたものでなく、大阪府委員会の記事かもしれないが、春闘の意義を全く認めない記事になっている。
 この記事は上記見出しを掲げ、「大阪労連旗開き」、「奈良労連旗開き」、「大阪市労連・市公労旗開き」を伝えているが、三つの記事のどこにも賃上げに触れていない。
 まず「大阪労連の旗開き」の記事は、「安倍政権と橋下「維新の会」の暴走を許さず、いっそうの躍進を」と選挙の決起集会のような記事になっている。この記事の中には賃上げも、労働条件の改善も一切出てこない。
 次に、「奈良労連の旗開き」の記事は、議長挨拶は「秘密保護法撤廃、原発問題、やればやるほど共感が広がっていく実感ができます。私たちの足元から仲間を広げ前進させていくことで可能性がひろがっています。」と述べていますが、ここにも賃上げや労働条件の改善は出てきません。ただこの記事の最後のまとめは、「参加者たちは「団結がんばろう」を唱和、春闘をたたかい抜くことを誓い合いました。」で締めくくっていますが、具体的要求課題については触れていません。(この記事には写真がついていますが、その横断幕は「春闘旗開き」です。)
 次に「大阪市労組の旗開き」の記事ですが、ここでも、具体的な賃上げ目標等は一切なく、「『大阪都』構想ノーで、憲法が生きる、市役所づくりをすすめよう」との看板を背に委員長は「大阪の歴史を語り、『それを一気につぶそうとしているのが橋下市長だ』と述べました」とやはり、市長選挙のような挨拶を行っています。また来賓の挨拶で、共産党の市議団幹事長が、「『都』構想を葬り去り、市民が主役の本当の改革のスタートを切る年に」と表明しました。合唱や島唄を楽しみ、名護市長選挙支援」の訴えがありました。で括っています。

春闘は、労働者の要求実現の戦いの場であり、政治的闘争が第一義的課題ではない

 この三つの記事を見て、見出しで「春闘勝利を」と掲げながら、何ら春闘の課題や目標を掲げず、全ては政治課題に流し込んでいる共産党の姿が明確になっています。
  春闘はそもそも歴史的には、1955年「労働組合運動の根幹は政治闘争でなく賃金闘争である」という考えを元に太田薫合化労連委員長が八つの単産を集めて賃上げ要求を行ったのが始まりとされている。
 わが国では、春季にほとんどの企業で、労使で賃金闘争が行われ、これを束ねて闘うことが有利だと判断し取られた戦術である。欧米にはない日本独特の慣行であり、労働者の権利獲得に大きな役割を果たしてきた。
 共産党の発想は、政治が悪いから労働者の賃金や労働条件が改善されない。だから春闘を経済闘争として闘っても成果をあげる事はできない。政治闘争として闘って初めて労働者の賃金や労働条件の改善ができると主張したいのだと思われるが、この主張は間違っている。
  全ての課題を政治闘争に変え、しかも選挙勝利に結びつける闘いかたは、結局運動の幅を狭め、労働者が運動に参加していく機会(プロセス)を奪うことになる。全ての労働者は、賃上げや労働条件の改善では団結できる。しかしこの課題を最初から「安倍政権打倒」や「橋下・「維新」粉砕」に変えれば、全ての労働者の参加は望めない。労働組合としての独自の課題を大切にしながら、政治的課題との関連性を探っていくという姿勢をとらない限り、労働組合は死滅する。
 1月10日付け赤旗記事は、この誤りを犯している。

なお共産党の名誉のため、1月11日の赤旗記事にも触れておきたい。

 「全労連。国民春闘共闘委員会は10日、東京都内で2014年新春旗開きを開催し、各階、各層から200人余が参加しました。という記事があるが、その中で主催者あいさつした全労連の大黒作治議長は、「沖縄県の名護市長選、東京都知事選挙など安倍政権の暴走をストップさせるために、何としても勝ち抜く決意を固め合いたい」と語りました。
 大黒氏はまた、「春闘での賃上げはたたかいで勝ち取るものだとして、大企業の内部保留をはきだせるたたかいを追求する」と表明。「安倍「雇用改革」とともに。「戦争する国」づくりや社会保障の改悪などの暴走政治にストップをかける一点共闘のたたかいを発展させたい」とのべました。という記事を載せている。
 この大黒議長の発言にも政治主義を感じますが、少なくとも「春闘での賃上げはたたかいで勝ち取るもの」という発言に労働組合の基本的原則が確認されており、この発言を赤旗が載せたということは、共産党が完全にこの主張を取り下げたのでないことに安心感を覚えた。