共産党の前衛性をどう評価するのか

 共産党は国民大衆の追随者でよいのか?(丸さんへ)



 丸さんの指摘、全ての点において含蓄が深く感心して読んでいます。私などとは比較にならない力量を持たれた方だと思います。

少しだけ自己紹介をさせてもらいますと、私は学生時代から党員であり、就職後も十数年は党員でしたが、共産党の新日和見主義批判以降の大衆運動の軽視及び支部会議等で赤旗拡大の議論のみが行われ、結論は常に中央委員会の言うとおりという会議に私はどうしてもついていけなくなりました。また大衆運動と党の関係で、組合で民主的に議論された結果に基づく行動を、党の決定に違反するから組合の決定に従うなと圧力をかけられたことが、党を離れる決定的な要因になりました。その後30年程が推移し、私は共産党の支持者ではありましたが、具体的行動には参加せず、その主張の変化にも十分関心を持っていたわけではありません。(地域のビラまきだけは20年ほど付き合ってきました。)

 今回一斉地方選挙に臨み、私の大学時代からの知人である府会議員のビラを見て、この選挙はとんでもないことになると思ったことが、今回このような場所に現れたきっかけです。

 そのビラは、候補者本人が母一人、子一人で母親の行商で家計をまかない、努力して京大に入ったというのがメインで、あとは大阪府会議員として、500円の負担を削減させたというものでした。私は今回の選挙は橋下・「大阪維新の会」との戦いと原発反対が主要な争点だと認識していましたので、それこそ椅子から飛び上がるほどこのビラに驚きました。その後注意して共産党の主張を見てきましたが、選挙公報でも、原発は反対ではなく「安全点検」であり、橋下・「維新の会」については、その言葉すらありませんでした。

 この共産党の対応が私から見れば極めて異常に見え、共産党の各級委員会に「意見書」を出しました。(出しても、出しても無視されるので、意地になって15通出しました)この共産党の対応を見て、共産党は国民政党としての基本的要件を備えていないのではと思い、自分でホームページを立ち上げ、事実の公表を行い、共産党に国民に対して誠実な党でなければ、立ち行かないことを認めさせる戦いを始めました。私はすでに60代半ばであり、残された人生(個人的にはあと10年は元気に生きたいと思っています)10年間かけて共産党に「国民と真摯に向かい合え」というキャンペーンを張って、共産党から「分かったそうするから、キャンペーンを止めてくれ」という回答を得ようとしています。(まあこんなアホなことを考えている者です。)

 そこで丸さんに、まずおことわりしておかなければならないことは30年間のブランクがあり、過去の知識だけで自分の主張を行っていますので、時代錯誤や現代に合わない主張を行ってしまう弱点を有していることを認識しておいてください。さらに私は現場の活動家であって、理論家ではありません、むしろ肌感覚を大切にして、物事を主張しています。それと喧嘩早いところもあります。(ですから橋下徹氏のいう選挙は「イクサ」だというような主張は大好きです)前置きが長くなりましたが、これらを理解されたうえで私の主張を読んでいただけますか。

 <丸さんの主張に対する率直な感想>

  1.  丸さんの主張は完璧であり、一部の隙もありません。読ませていただいて、「すごいな」と関心しています。私などが雑駁な議論を吹っかけているのに丁寧に理論的に整理され、説明されている。ものすごく勉強になります。労働組合に対する丸さんの見方、赤いたぬきさんへの返礼の分も含めて、全て賛成です。私の現場感覚の思いを見事に理論化されています。

 しかし、何か違うなという思いがします。頂いた内容には関心はするのですが、そうか、その方向で戦えば共産党は躍進できるのかと感じ取れる主張が無いような感じがします。(元々「一視角」という議論の建て方ですから矛盾は無いわけですが)


 丸さんの問題意識の立て方と私の立て方が違い、丸さんの立てた問題意識の中では同意しますとの断りを入れないと、私の主張が全て吹っ飛んでしまったように見えてしまうのではと感じた次第です。以下再度私が何を言いたかったのかを整理します。

<私の問題意識・・大阪ダブル選挙で何を主張したか>

  1.  私が一番主張したかったのは、共産党は過去には大阪で76万表も獲得している。さらには黒田革新府政実現の際は、三期目の負けたときでも共産党の単独推薦で167万票獲得している。(共産党の基礎票の2.6倍獲得)それに対して今回は、35万7千票でしかなく、共産党の基礎票の8割強しか獲得できなかったことに注目しています。(共産党の基礎票も獲得できなかったのですよ!・・共産党はこれをごまかし、平松票が「42%あった」と盛んに宣伝しています。・・・あたかも共産党の主張が府民に受け入れられたかの様に)  
    ここにこそ私の主張があり、この原因究明を行うことが主要な課題です。

 その主要な原因は、共産党中央、さらに大阪府委員会の「体たらくにある」と指摘しています。丸さんは、選挙戦のスローガンが「独裁」であったから負けたという一点に問題を集約され、主張されているため、私が丸さんの主張のとおりですと認めれば、共産党の体質の問題や選挙への取り組み(赤旗を増やせば勝てる)の誤り等を全て免罪してしまうように受け取られる危険性を感じています。
現在の「共産党の中央は「前衛党」として、国民を引っ張っていく理論も思想も無い。この選挙戦でも全くのピンとはずれの戦いをしている。」この告発こそが私の主要課題です。
 (私は、共産党の規約改正等も全く知りませんでした。私は共産党が開かれた国民政党になることを歓迎しますが、同時に前衛であってほしいという思いがあります。・・・その思いで書いています。)
 この前衛政党か国民政党かの理論的整理が共産党の躍進には必要と感じています。今回の原発問題との関連で言えば、共産党は5月1日のメーデーの志位委員長の発言で原発の「安全点検」から「原発ゼロ」へ舵を切っています。この5月1日付けの赤旗の主張は「原発依存から自然エネルギーへの転換を」です。さらに4月29日の赤旗では共産党のメーデースローガンが掲載されていますが、そこでは「安全優先の原子力行政の転換を」「原発依存から自然エネルギー中心の低エネルギー社会へ」です。

 このため、共産党が指導している労働組合のメーデースローガンは全て「安全点検」に集約され、「原発撤退」や「原発ストップ」が見られません。(「怒り」が無いのです、)このメーデー会場での政策変更は、東京以外では行われず、我が地元大阪では、当日のデモ行進でも、原発の安全点検とシュプレヒコールしたと聞いています。
  毎日新聞の関西版は、全労連系メーデーを数行で説明し、写真も載せない取り扱いでした。それに対して、ユニオン系のメーデーを大きく扱っていました。その内容は「原発 即時停止」を見出しとし、「福島第1事故を受け派遣労働者ら加盟労組」と中見出しをつけています。(反原発メーデーという彼らのスローガンが注目されたからと思われます。)

  このメーデの風景の中に、共産党による大衆運動の引き回し・・悪しき前衛理論の異物が残っていると見ています。(これについても私はメーデ会場にいたわけではありませんので、写真で見た範囲で書いています。)

  

<丸さんの主張、大衆の意識変化と党の役割について>

 以下の原発問題に対する丸さんの主張これには私は異議を挟ませていただきます。(「独裁」が良かったのか、「独裁」がダメだったのかは立証ができない課題であり、いくら議論しても生産性がないと思われます。)原発問題については実証が可能だと見ています。

  しかしながら、それが実際に、「国民目線に立った政策」であると国民に“見なされる” “見なしてもらう”ためには、まず国民の側の意識において、原発に対する認識が「安全点検」から「原発反対」へ、と舵が切られていなければならず、それ抜きでは、共産党一人が「安全点検」から「原発反対」に転換しても、少なくとも選挙での善戦にすぐさま直結する政策・スローガンにはなりえない可能性が高い、ということになるのではないでしょうか。

 

 この丸さんの指摘、私は違うと思っています。国民の側の意識の成熟を待って、初めてこれに寄り添う政策を出して支持を獲得していく、このような順序立ては革命政党の取るべき立場ではないと思っています。(レッテル貼りで失礼ですが窮乏革命論のような気がします。・・国民の意識が成熟するのを待つ)私が前回の投稿でレーニンを出し顰蹙を買いましたが、基本はやはり「宣伝し、扇動し、組織する」だと思っています。情勢は自ら主体的に作り上げることが大切だと考えています。

 この間の選挙でも、選挙戦の争点を自ら設定したものが勝っています。消費税選挙の土井たか子の「ダメなものはダメ」、小泉首相の「郵政の民営化」、「自民党をぶっ壊す」橋下徹氏の「既得権益の打破」「市役所をぶっ壊す」らのスローガンが国民の気持ちを捉えたことに注目すべきです。(彼らは情勢を主体的に切り開いたのです。)

 今回の3.11の震災による原発の崩落という事態の中での国民の意識はすでに原発反対でした。(注1)日本の原発事故を受け、すでにドイツでは緑の党が「脱原発」のスローガンを掲げ選挙で大躍進しています(3月28日)また4月17日付け赤旗には「原発早期廃止 ドイツ政府と各州が合意」という記事が載っています。決定的なのは4月20日の赤旗「原発縮小・廃止」が急伸 容認派を上回る結果も 各国でも「反対」伸びる 世論調査」という記事があります。すでに共産党は原発反対が国民世論になっていることを把握しながら、原発政策の見直しを決断できなかったのです。

注1:私は共産党は3.11震災が国民に与えた深刻さを理解できなかったと見ています。(共産党は震災復興を最大の課題に掲げ、「命を守る政治」を訴えましたが、国民のもっている危機意識を共有できなかったと見ています。ここに共産党の最大の弱点があります。)

4月20日付毎日新聞朝刊9面に 西部邁氏の寄稿論文が載っています。見出しは「技術が安全なはずがない」というものです。その中で「常に危機をはらみいつも誤謬にさらされるものとしての技術が、安全であるはずがない。」「「安全な技術を」を要求するたとえば反原発派も、「安全な技術」を宣伝するたとえば原発推進派も、同じ穴の技術信仰にあるといわざるを得ない」とし、中見出し「国民が感じ取った「日本国家の危機」」の中で、「われわれは、この大地震における3万人近い使者・行方不明者と放射能の止めようのない漏出に、かつて無い驚愕と不安を覚えている。なぜか。それが「日本国家の危機」である」ことを、強かれ弱かれ、日本人が感じ取っているからだと思われる。国民は自らの国家の危機を座視できないのだ。」と書かれているが、この右翼(?)の文筆家の視点が正しいかったと私は思っています。

 ここで指摘されている「日本国家の危機」というような状況認識をこの時点で共産党は持っていなかったと見ています。

 ◆同日付けの赤旗は

  赤旗16面の「原発事故 そこが知りたい」の記事で、「老朽化した炉の危険」、「金属・熱疲労■侵食・腐食発生」、「原子炉に亀裂入りやすく」と書いています。この客観性は何ですか、だから最低限「老朽原発はすぐに廃止させる」位の見出しがあっても良いのではありませんか。今、客観的な学術論文が今必要ですか、事態は切迫しているのですよ、緊張感が全く感じられません。(これも私の意見書の抜粋です)

◆5月26日の赤旗1面トップではじめて「存亡の危機国は対応早く」とかかれています。この段階で西部氏の指摘の水準になったと私は判断しています。(全て赤旗の記事を追いかけた上での結論です)

この共産党の弱点の思想的背景は、共産党の過去から一貫した原子力に対する思い入れの強さがてあります。原爆に対しても、アメリカの原爆とソ連の原爆は違うと主張し、「いかなる国の核実験反対」を共産党は受け入れなかった歴史があります。また核の平和利用にこだわってきた歴史もあります。今回の5月1日の「原発ゼロ宣言」以降も共産党は、「核の平和利用」に未練を残しています。

 5月2日の赤旗にはメーデー会場での志位発言が掲載されていますが、福島原発事故が明らかにしたものとして「いまの原発は冷却水がなくなると炉心が溶け、コントロール不能となる本質的危険をもった未完成な技術です」との主張が掲載されていますが、原発の危険性を「冷却水がなくなると」に限定したところに弱さがあります。事実、結果論ですが、福島の原発のメルトダウンは津波以前に起こっていたと、後に報告されています。(注2)

 7月10日の赤旗には、「原発撤退へ1400人集う 大阪“国土にあった自然エネルギーへ転換「吉井議員が講師」という記事があります。この中で核の平和利用について問われた吉井氏は「米国が兵器に利用し、出発点がゆがめられてしまいましたが、核分裂や核融合は科学の研究として続けなければなりません」と答えています。

注2:私は志位発言の弱さ(なぜ前提条件を付けたのか)についても意見書で批判しています。

 共産党がメーデ会場でなぜあわてて「原発ゼロ」宣言を行ったかは(注3)、

  私は一せい地方選挙の世田谷区での保坂氏の当選だと思っています。政党の力関係では社民党は0.8%程度の支持がありません。しかし保坂氏は脱原発を掲げ、見事に当選したのです。この時の共産党推薦候補は最下位であり保坂氏の1割強程度の得票数です。(注4)

 共産党はこの結果に慄き、原子力政策変更を、メーデー会場で発表しないと完全に国民に見放されると思って変更したと私は見ています。

注3:先にも書きましたが、5月1日付け赤旗にも4月29日のメーデースローガンにも「原発ゼロ」は書かれていません。(志位発言は突然の発表)

注4:区長選保坂氏は、8万3983票、共産党系と見られる候補は9963票。

  こうした、現実の流れを見ずに、国民の意識がそこまで来ていなかったから、共産党もそこまで政策化できなかったという主張は、共産党の「前衛政党」という正確を全く否定するもので私には受け入れることはできません。

  共産党が、国民政党へ脱皮することは必要ですが、国民の後ろから付いていく、「国民の意識変革」が先だという丸さんの主張には賛同できません。

  大阪ダブル選挙の敗北も、国民の意識の変革を目指したものでなく、「安全・安心・やさしさの大阪」という安定志向で戦ったことが、最大の敗北原因だと捉えています。(注5)

  「独裁NO!」については、私はほとんど何の役割も果たしていないと捉えています。共産党にはこの課題を大衆の中に広めていく意思も力量も無かったと捉えています。(注6)

注5:「安全・安心・やさしい大阪」は、選挙で当選した者が所信表明で使う言葉(行政用語であり)、選挙(イクサ)で使用する言葉(政策)ではありません。(現行権力者と何も切り結んでいません。)

注6:特に大阪府委員会は(この点は私のホームページで資料集を出しています。)

 最後に丸さんに教えていただきたい点が3点あります。

◆1点目は、一せい地方選挙の争点を共産党は震災からの復興を第一の課題と設定し、全国津々浦々で同じスローガンを掲げ戦いました。

  私は府(県)会議員や、市会議員選挙の争点は、その現場の独自の課題を前面に掲げるべきだと思っています。大阪で言えば、橋下・「維新の会」との戦いを争点にすべきだったと思っています。

  震災復興を最大の争点にしたのは正しかったのか,この評価を教えてください。

◆2点目は、先にお聞きしたとき同時に聞くべき事項でしたが、落としてしまいました。共産党は、旧WTCの移転を橋下府政の最大の弱点と捉え、この攻撃を最大の課題に設定し、選挙を戦っています。

  私は、この旧WTCへの失敗は3.11の震災を経て問題点が浮き彫りになったものであり、橋下府政の本質を表すものでは無いと思っています。この評価をお聞きしたいのですが。

◆3点目は、四中総で志位委員長は、「橋下・「維新の会」の策動は、地方からファッショ的な独裁政治の拠点をつくり、国政に広げようというきわめて危険な動きです」、と報告しています。私はこの志位委員長の報告は正しいと思っていますが、大阪坂府委員会はこれを尊重しているように見えません。(府会議員団長の談話や写真で振り返る2011年等から判断)

 この3点について丸さんの考えを是非教えていただけませんか。

  蛇足ながら、あくまで教えていただきたいのであって、これを聞いて論争を仕掛けようなどと思っていませんので、よろしくお願いします。

  私は、私なりの考えをこのさざ波通信に発表し、丸さんをはじめとするいろんな方に批判していただくことによって、私の30年間の空白をうめ、共産党の直面する課題は何かの体系(デッサン)を行うことを試みています。それを自らのホームページで情報発信を行い、共産党への改革要求を10年かけて展開していく決意です。

 ご迷惑とは思いますが、ご意見、ご批判をお待ちしています。