四中総は再生のバネになりえるか?

 =大阪ダブル選挙の敗北から共産党は何も学んでいない。=


はじめに 

共産党には失礼ながら、四中総を読むより、橋下徹氏の話を聞いているほうがよっぽど面白い。彼は正に政治家であり喧嘩上手である。政治を動かすのが政治家であり、赤旗を何部増やしたかで政治家を評価すべきではない。・・・共産党の悲劇はここから始まっている。

私の見聞きした経験では議会活動で優秀な議員ほど赤旗拡大には積極的でない。そうした議員はいつの間にか排除され、赤旗拡大に熱心な者が議員になる。赤旗は当面増えるかも知れないが、議会活動の水準は落ちてしまい(注1)、結局国民から見放される。負のスパイラルに落ち込んでいる。この現実が共産党の幹部にはなぜ見えないのか不思議でたまらない。

注1:例えば高槻市議会では、共産党市会議員団は交番を増やせの議員提案の代表になっている。(確かに市民
の要望は強いが、現在の警察が市民生活を守るより、公安組織等に大きな人材を割いていることの批判抜
きに、呑気に交番を増やせというのは馬鹿げている。)

 共産党はなぜ選挙で勝てないのか、それは選挙を科学にせず、自らの思い込みの世界で戦い・総括しているからである。選挙とは不思議なもので勝つところもあれば負けるところもある。この間の選挙では共産党は基本的には負けながらも、一部勝ったところもあるというような状態が続いた。そこで共産党は、常に負けた選挙を覆い隠し、勝った選挙を前面に押し出し、正確な分析を怠ってきたことに共産党の長期低落傾向の最大の原因がある。

 今回の大阪のダブル選挙では、昨日今日できた地域政党に完膚なきまで叩き潰され、共産党には、もう逃げ口上は無いと思ったが、橋下徹氏に対する平松氏の得票数を掲げ、善戦したとまたもや敗北を認めない立場を堅持しようとしている。今回の選挙での共産党の実力は、知事選の側で評価しない限り、共産党の真の姿は浮かび上がらない(注2)。(わたし候補を降ろしたのは、共産党の敗北が露わになることを避けたとも思われる。)

注2:これについては「大阪ダブル選挙は共産党の壊滅状況を証明した」で述べた。

 負けたものを常に勝ったという様な手法で常に党員に説明するやり方は、すでに一般大衆の常識や気分感情から大きくはなれ、まともな政党として認知されず、すでに宗教化していると批判されてもしかたが無いであろう。

 負けた選挙の総括を科学的に行わない限り、共産党の反転攻勢は不可能だ。

  1. 橋下徹は面白い

    【選挙は「イクサ」・・・橋下徹語録】

     四中総を読んだ。すらすらと読める、いつもと同じパターンで総括がなされ、方針が書かれているからである。果たして四中総どおり戦えば共産党の再生はあるのだろうか、何か違う気がする。
     孫子の兵法に「敵を知り己を知れば百選危うからず」という言葉がある。意味を深くは知らないが要するに「戦いに負けないための兵法」だと思われる。

     今回の大阪でのダブル選、なぜ橋下・「維新の会」が圧勝したのか、この分析ヌキに自軍の総括をするやり方では、敵を知らない(敵から学ばない)一人よがりの総括になってしまう。
     橋下氏はこの選挙戦を「イクサ」という表現をした。「イクサ」だから負けた者は去れとも言っている。ある意味では彼は「イクサ」という概念で、敵と見方の力関係を読んで戦を組織している。彼が勝てたのは、敵と味方の戦力分析や、相手の政治的力量や、相手の弱点、どこを突けば大衆が拍手喝采するかなど、「読みの勝ち」である。・・・これが「イクサ」であり政治である。

     戦国時代の戦争を見れば分かるが、必ずしも兵力に勝るものが勝つとは限らない。桶狭間の戦いでは兵力で圧倒的に不利であった信長が、今川義元の大軍を打ち破った。中国でも赤壁の戦いでは、100万の軍勢を率いた曹操が諸葛孔明等の軍師の策の前に敗れた。
     橋下・「維新の会」の勝利はこれに匹敵する勝利である。政治の常識からすれば、自民党、民主党が手を握ればほぼ100%勝ちである。そこに共産党まで参加しながら、平松陣営は橋下徹に負けたのである。こんなことは今までの常識では考えられない快挙だ。(小さな市町村では共産党の市長が誕生した例はあるが)これが何ゆえもたらされたかの分析が必要だ。(注3)

 注3:実は高槻市の市長選挙は自民党から共産党までが一致して推す候補と、共産党が言う「統一教会派」の
    候補者がここ2回戦っている。結果はオール既存政党の勝利だが、前回は約2000票差、今回は約3000
    票差で相手候補は肉薄している。オール既存政党対無党派は無党派に大きな風が吹くことはすでに実証済
    みである。(というより共産党を含む既存政党は国民からすでに遊離している。)
      この市長選挙と同時に戦われた市議選で共産党は5名から3名に減らしている。旗印を明確にしないも
    のは「イクサ」は勝てない。

  1. 共産党の「総括・方針」はマンネリ(思考停止状態)だ

    【選挙制度の改悪が共産党のジリ貧の本当の理由か】・・四中総

     現在の共産党は選挙の度に負けているいわゆるジリ貧状態である。このままどんどん落ちていくように感じる。しかし共産党にも躍進の時期はあった。選挙のたびに躍進し、議席を倍々で伸ばしてきた。1971年には黒田革新府政が誕生し、1973年大阪府の参議院選挙の補欠選挙で沓脱タケ子氏が森下仁丹(自民)を破って勝利した時は、正に革命前夜のような喜びがあった。その当時は本当に民主連合政府の実現は近いと私は思っていた。

     しかし、ここ10数年負け続けている。なぜだろうか、共産党は二大政党は金属疲労で破綻していると言う、しかし良く見ると公明党以外の既成政党が破綻しているのである。橋下徹や名古屋の河村たかし氏らの地域政党が躍進した結果、一番蹴散らされた政党は共産党である。この現実をしっかり見ない限り、二大政党が賞味期限切れだから、我々の出番だという議論はあまりにもノーテンキな議論だ。例えば大阪の府会議員選挙の得票率を4年前と比較すると、民主党は65.99%、自民党は51.49%、共産党は56.31%である。ちなみに公明党は78.20%である。民主等や自民党は多くの議員が維新に寝返っている中でも健闘している。

     選挙戦の総括を具体的数字で語らない共産党の総括は極めて姑息なやり方である。具体的事実(数字)を確認し、その上で議論をしないと危機感のない議論になってしまう。
     四中総では、この共産党の退潮を「財界が主導して2003年の総選挙から本格的に開始された二大政党づくり」の動きは、「自民か、民主か」の枠組みに国民を無理に押し込めて日本共産党を排除する“最強の反共作戦”としてすすめられてきました。(注4)この動きは、わが党にとって大きな逆風となりました。と総括しているが、これが本当に正しいのかの検証が重要である。

    注4:これが反共攻撃かの検証も必要・・別の機会に述べる。

     選挙制度の改悪は確かに共産党のような少数政党には痛手である。しかしこの論理では絶対に説明できない現象がある。まず「みんなの党」である。こんな衆議院議員5名だけの政党(地域にほとんど基盤が無い・・・党員もいないし、機関紙もないさらに地方議員もほとんど持っていない)が先の参議院選挙では11名も当選させ、共産党の約2倍の勢力を得た。(結党されたばかりなので、半期だけでの数なので実質4倍の実績)
     さらに、今回の橋下・「維新の会」が、いとも簡単に既成政党をぶっ飛ばした。この際一番吹っ飛んだのが共産党である。(この事態はすでに2月の名古屋のダブル選挙でも現れていた。)
     選挙制度の改悪は確かに痛手ではあるが、敗因はそんなところにあるのではなく、共産党中央がすでに大衆の気分感情を読みきれず、選挙戦の戦い方を全く間違っているとことにある。さらには思想的・政治的解体が進み武装解除されたような状況になっている。

     四中総は「閉塞状況の反動的・ファッショ的打開の危機を直視し、正面からたたかう」と訴えているが、その具体化が何か共産党は全く提示できていない。(一せい地方選挙の「原発の安全点検」も同じで、具体的中味「関西電力との違い」が全く無かった。)
    大阪ダブル選挙の共産党のメインスローガンは「安全・安心・やさしい大阪」であり、橋下徹との切り結びは旧WTCの移転反対であった。(「独裁ノー」は告示後だけであった。)この選挙戦のどこに「ファッショ的打開の危機」の認識があるのか、共産党に是非説明を願いたい。このとんでもない頓珍漢な戦いを組織したことの総括抜きでは、「ファッショ的打開の危機」と戦えない。

     現に選挙後の大阪民主新報(12月18日付け)の一面大阪府会議員団長の談話は、「維新の会」が牛耳る大阪府の動向を「「国際競争力強化」推進が国内の雇用と暮らしの悪化を、異常な円高を招いていることはこの間の事実からも明らかです。「稼ぐ」「府民の所得を上げる」というものの、その根拠は示されず「府民の安心・安全」は後回りにされています。」と語っています。この談話ではすでに「独裁ノー」が投げ捨てられ、「安全・安心」路線に大阪府委員会は復帰している。この談話のどこに「ファッショ的打開の危機」と戦う姿勢がうかがえるのですか。

     大阪という東京都に次ぐ大都市で、党中央と違う戦い方が組織されている、この違いすら分からない政党になってしまったのですか。悲しむばかりある。


  1. 赤旗の拡大は日本の政治状況を変えるか?

    【赤旗の政治的思想的水準には疑問符がつく】

     共産党の最大の選挙戦術は赤旗の拡大である。(しかし、増えるどころか大きく減らしている。すでに赤旗の経営が共産党の命取りになり始めている。政党の盛衰はその機関紙の縮小・廃止から始まる。)四中総でも結局は赤旗を増すという結論を出すためのプロローグのように読める。しかし、今の赤旗を通じて本当に成長できるのか、赤旗は本当に大衆の羅針盤になりえているのか検討が必要である。(赤旗の減少はいろいろ理由があると思うがその魅力のなさにも原因がある。)

     赤旗の最大の弱点は、「共産党の主張を与党議員がほめてくれた」という記事が多く見られることである。この思想性はどこから来るのか徹底的な分析が必要である。私は赤旗がこのフレーズから脱却しない限り、国民大衆は赤旗(共産党)を信用しないと思っている。

     以下赤旗のおかしな事例を幾つか列記する。

    <尖閣列島と赤旗の記事>

     共産党は尖閣列島で中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりした事件を受けて、2010年10月4日尖閣列島問題の「見解」を発表した。この「見解」の評価をめぐって、その後の赤旗は不可解な記事を書き続けた。まず、10月5日付け赤旗は、仙谷由人官房長官と会い尖閣列島問題に関する日本共産党の見解を渡したと記事を載せ、志位委員長をはじめとする国会議員3名と仙石官房長官の写真を掲載した。さらに仙谷氏が「ありがとうございます。総理に伝えます」「この問題では基本的立場は一致する」との仙谷氏の言葉を載せている。この写真がよっぽど気に入ったのか、10月17日付け赤旗にもまたこの写真を載せている。そして防衛庁の関係者が「尖閣問題の解決でもっとも重要なのは、日本の領有の正当性を粘り強く国際社会に訴えていくことだ。共産党の見解に敬意を表する」と言ったと載せている。

     また10月29日付け赤旗では「しんぶん赤旗」ここが魅力という記事で一番最初に「尖閣列島問題」を取り上げている。その見出しは「与党も認めた確かな見解」であり、内容は「この問題に関して、最もまとまった見解は「赤旗」に出ている。それを参照すべきだ」と民主党の副大臣経験者がこう発言しました。と載せている。
     これらの記事を見て、党員やその支持者は「自民党も認めている共産党はすごい」と思うでしょうか、戦いのエネルギーが沸くのでしょうか、私は逆だと思っている。大阪流の突っ込みで言えば「どっちを向いているね!こっち向け!」と野次が入るであろう。

    私は共産党が政府与党や自民党に誉められたと鬼の首でも取ったような喜び方をすることに気がついてなかった。(赤旗を「ボー」読んでいた。)、尖閣列島問題で初めて気がついた。その後良く見ていると、共産党はいたるところでこのフレーズを使用している。

    以下具体例を挙げる。

    <東京都知事選挙>
     ここでも、与党議員から「小池議員が一番まとも」と言われているという記事を載せている。

    <TPP問題>
     20011年12月11日付け赤旗は、一面トップで「政治を動かす」という特集を組んでいる。内容は「臨時国会と日本共産党@」とされてるが、その大見出しは「「亡国を許すな」保守にも響く」である。書き出しは「「亡国の政治」を許すまじ。志位委員長の言葉は同感だよ。共産党がそう言って自民に響くことが面白い」。こう語るのは保守のベテラン議員です。さらに記事の中盤で、他党の幹部が「TPPの質門は共産党が一番良かった。良くわかった。」最後は超党派の院内集会が開かれ、志位委員長が「党派の垣根を越えて頑張ろう」と呼びかけると大きな拍手にわくという変化もうまれました。と書かれている。

    <大阪府ダブル選>
     これは資料をなくしてしまったが、赤旗に野中広務氏を登場させ、「大阪市長選のそれぞれの党派の選挙事務所を訪れたが、自民党や民主党の事務所には国会議員等は誰もおらず、共産党の事務所だけがフル回転だったと語った」という趣旨の記事を載せていた。
     また、10月31日に行われた、高槻の内部の学習会ども、府会議員団長の説明は「独裁ノー」でなく、旧WTCの移転失敗の話が中心で、その際やはり自民党の府会議員が「「共産党の主張が一番正しいと言っている」でその話を括った。」と聞いている。
     共産党の自らの政策の良し悪しを与党議員や自民党、財界が誉めたことで証明しようとしているが、これこそ共産党の思想的退廃を示している。
     
  2. なぜ赤旗はこんな記事を多発するのか

    【「与党議員に誉められた」の思想的背景】

     まず、本来共産党は誰に誉められるべきなのか、打ち出した「政策」が正しかったか否かは、何を持って判断すべきか、それは労働者をはじめとする国民大衆からその政策が支持されたか否かで判断を行うべきである。しかし現在は支配者階級(敵勢力に誉められたと喜ぶ癖がついてしまっている。・・・ここに共産党の堕落がある。)
     なぜこうなっているのか、識者による分析が必要だが、私はいかのように捉えている。
      第一は、議会主義政党に純化されてしまった。議会内の動向が判断の中心になってしまい、国民大衆の動向に注意を払っていない。(把握できていない。)

      第二は、敗北主義である。誉めてもらうという概念は、基本的には目上の人間から誉めてもらう場合に多く使われる。先生に誉めてもらった。親に誉めてもらった。というのが一般的で、子どもから誉めてもらったとはあまり言わない。

      共産党が、「与党あるいは自民党から誉めてもらった」を連発するのは、数で負けているだけでなく、政治的力量でも負けていることを自ら白状している姿のように見える。(なぜこれがうれしいのか私には全く分からない。)
    一般的に人を誉める場合、本当に誉める場合と、誉めることによって相手を自分の支配下におく場合がある。取り分けて敵側から誉められて場合、そこに何らかの意図があると考えるのが世間の常識である、そんな子どもでも分かるルールを共産党は理解しない。(例えば右翼による竹下首相に対する誉め殺しという事件もあった。・・今の共産党では「誉め殺し」にでも引っかかりそうな危なさが見える。)

      第三は、個人崇拝の立場からこんなことをしている節もある。赤旗の記者の政治的力量が低下し、一般社会におけるヒラメ社員(記者・党員)が増え、志位さんの発言を誉める記事を書いておけば、自分の出世が保障されるという思いの中で、このような記事が中心になっているのかとも思う。(北朝鮮等社会主義国を標榜する国のメディアの特徴でもある。)
      例えば具体例を挙げれば、大阪府ダブル選挙の記者座談会の記事は正にこれに当たる。私は以下の記事を「大阪ダブル選挙の総括」の中で、共産党は「反独裁」で戦っていなかったことの立証に引用したが、この記事は実はウソで、志位委員長が大阪の現地の指導をして大阪の戦い方は変ったという論調は、金正日が、現地指導に入り、その後急速に生産性が高まったと同じ論調の記事であり、個人崇拝のにおいがする提灯記事である。

<赤旗11月30日(水曜日)3面の抜粋>

A―たたかいの大義を打ち立てたという意味では、知事選の告示日(10日)に駆けつけた日本共産党の志位
和夫の演説が大きかった。志位氏は「今回の選挙戦の最大の争点は、橋下・「維新の会」による独裁政治を
許すのか、民主主義を守り抜くのかにある」として、憲法違反の「独裁3点セット」−「大阪都構想」「教育基本
条例案」「職員基本条例案」を批判した。

 B―あの演説でなぜ「独裁政治」とよぶのかわかったという声もあった。

 A―ある新聞が「市長選「独裁」是か非か」と争点を報じたのも、志位演説の直後だ。

 Bーその後「明るい民主大阪府政をつくる会」は「なぜ「独裁政治」と呼ぶのかー事実を見てください」と見出
しをつけたビラを作り、大阪市内だけでも約120万枚配った。

 と書かれている。


  • この記事は志位さんの政治的指導力を礼賛するための捏造記事である。事実関係を正確に見ておく必要がある。
    @一般紙が、志位発言から「市長選「独裁」是か非か」と争点を報じたのでは決して無い。ただし、赤旗は
    10 月18日時点では、旧WTCの移転失敗を争点としていた。
    A明るい会のビラは志位発言で変ったのか、これもウソである。志位発言は11月10日の街頭演説である
    (告示日)。しかしこの告示日に「明るい会」は「府民との共同の力で「独裁政治」にNO!」という見出しのビラ
    を撒いている。明るい会が志位発言の影響を受けて「独裁NO!」の立場をとったというのは間違いである。  
    (時間的に間に合うはずが無い)

    このビラの見出しから見れば、10月29日の大阪府委員会の声明に則ったビラだと推測される。この声明後 
    ビラ等の対応は遅れたがそれは、印刷に回すなどの時間差があったと推測される。
    党首を神格化するために記事を捏造する政党機関紙これはどこかで見た姿だ。ジャーナリストしての魂を失
    った赤旗に国民大衆は魅力を感じないことを知るべきだ。

  1. 保守層から支持を得た・・・保守層の顔色を窺う政治

    【四中総にもこの言葉が現れる】

      四中総の中見出しに、「これまで保守の基盤とされた団体・個人との共同が劇的に発展している。」という見出しがある。共産党はウィングを右に広げ、保守層からも支持を得ていると盛んに宣伝するが、これは大きな勘違いだと思う。共産党が保守層からの支持を得るたびに、その倍の勢いで今までの支持者(左翼・革新的な人)を失っている。選挙で票を増やすため限りなく右へ右へと開拓しようとする。いつの間にか自分の本来の立ち位置が分からなくなる、これが共産党の現在の姿だ。注5

    一せい地方選挙での「原発の安全点検」がこれの実例だ。多くの国民は「共産党こそは原発反対」の戦いを組織してくれると期待していた。にもかかわらず、共産党は保守層への配慮を優先し(ここで財界に嫌われたら「政権参加が遠のく」と考え?)、「原発反対」を政策化できず、「原発の安全点検」と叫んでしまった。これは現在の共産党の思想水準(堕落)を示す典型的な事例だ。注6


    注5:四中総では、「新しい政治への国民の探求、日本共産党と新たな共同の広がり」とい中見出しで、まず
          最初に掲げたのが「保守との共同が劇的に発展しつつある」という小見出しを書いている。「劇的」なの
          か「劇薬」なのか真剣に考える必要がある。
            ちなみにこの次の見出しが「大震災・原発事故という未曾有の体験を契機とした新たな共同の広がり」
          である。当然この見出しが先に来るべきである。共産党の今の思考を表した順位付けである。

    注6:4月20日付け赤旗【党活動】で「情勢判断と対策を正確・機敏に」という見出しで、どこに投票増の条件が
          あるか、具体的にいえば、
          @原発問題での世論の大きな変化
          A有権者の要求・関心との関わりで党の議席の値打ちが分かりやすい。
    と書かれています。

      しかし原発問題での世論の大きな変化」とは何を指すのかが具体的に書かれていません。 ところが同日
    付けの赤旗2面では、「原発縮小・廃止」が急伸という記事があります。中見出しで、「容認派を上回る結果も」
    と書かれています。これこそが世論です。 しかしこの「世論」を反映した原発政策は打ち出せず、「安全点検」
    に終始した。

    ◆共産党は、一せい地方選挙で「原発ゼロ」の政策がなぜ打ち出せなかったのかを深刻に総括し、自己批
    判すべきだ。「原発の安全点検」は、共産党に対する大衆の期待を完全に裏切った。ここを曖昧にしたま
    までは、共産党は国民大衆から完全に見放される。
    共産党は立ち位置をずらし保守層に顔を向け始めれば、それは自己崩壊につながる。橋下徹氏は、選
    挙は「イクサ」と呼んだ。正に「イクサ」である。陣地戦でもある。自らの陣地を明確にせず、八方美人的政
    策を掲げれば、結局は誰も支持しなくなる。イソップ物語のこうもりみたいな方針である。保守にもいい顔、
    労働者・国民大衆にもいい顔、この八方美人作戦が共産党の衰退を招いている。政治は戦うものが勝つ
    のである。小泉や橋下徹氏が圧倒的な国民の支持を得たのは、「敵を作り」戦ったからである。共産党の
    「安全・安心・やさしい大阪」これでは戦いにならないし、敵勢力と切り結べない。このようなスローガンを掲
    げて戦う限り、共産党は埋没する。全てにいい子になろうとする子は、一般的に評判が悪い。これらの心
    理を理解すべきだ。
  1. 選挙戦の総括を「科学的に」行う・・これが成長のカ

    【敵と見方の力関係の分析を正確に】

    四中総の記事の中に、このような指摘がある。財界が主導した「逆風の最大のピーク」は、「政権交代」が実現した瞬間でした。この瞬間を大きな転機として、それはたちまち深刻な行き詰まりへと落ち込んでいきます。この指摘自体は正しいと思われるが、このフレーズで共産党を語るなら、第18回参議院選挙(1998年)選挙区で8758759票、比例区で8195078票獲得したのが絶頂(ピーク)で、この瞬間から退潮が始まった。政権参加を夢見てしまい、舵を右に切ったことが、その後の凋落を招いた。(注7)

    注7:村山政権の実現を喜び、旧来の安保政策等を放棄したこれは社会党の崩壊という貴重な歴史的体験
         がある。

      この問題を時系列に見ると、1968年の選挙では参議院全国区3219307票を獲得、その後30年かけて1998年の選挙で8195078票を獲得した。しかし直近の2010年の参議院選挙では、3563556票となり、30年間かけて積み上げてきた成果を12年で元の木阿弥に戻してしまった。

     この原因の分析と責任の追究が必要である。他の政党では当然役職の交代がなされる事態である。これをそのままにして、赤旗拡大で前進を勝ち取ると意気込んでも、負ける度に同じ方針を確認し、また負けている。すでに一般党員は、イソップ物語の「狼がきた」と同じ感覚で、この方針を見ている。党内でも信用されない方針になっている。この状況を国民大衆の側から見ても、民主主義の要件を兼ね備えていない政党に写る。
     選挙の総括を赤旗の部数の大小に矮小化する総括を改めない限り、共産党の反転攻勢は実現しないと私は思っている。選挙の勝敗は様々な要因がある。その分析を科学的に行わない限り前進はありえない。(科学の党が泣いている。最も非科学の党に成り下がっている。)