共産党の原発政策は何か(一斉地方選挙後半戦を戦うにあたって。)     意見書2


                                                                                                                        平成23年4月18日

 私は4月12日に「今回の一せい地方選挙での共産党が採った方針について」「大阪府会議員選挙のM議員の選挙戦術について」という「意見」を送付した者です。今回前半戦の結果が出た段階で、後半戦を戦うにあたっての共産党の方針にも疑問がありますので再度メールを差し上げるものです。

  前回のメールはA4で14ページもあり、また選挙中でもあり、すぐに回答ができないことは十分承知していますが、メールを受け取った、回答は何時頃するぐらいのメールはいただけないでしょうか。この様なルールは社会的常識であると思うのですが。

 共産党は一せい地方選挙に当たって「選挙戦全体を、日本国民が、国民的エネルギーを発揮して、被災地の救援・復興をやりぬき、戦後最大の国難を打開して、それを通じて新しい社会をつくる契機にしていく」という基本的政治姿勢を確認して臨まれています。

  この選挙に臨むにあたっての「この基本姿勢」は果たして正しかったのでしょうか。東日本大震災という未曾有の大災害のもとで、政治的課題としては、あるいは政府の責任という意味ではこの政治的位置づけは正しいと思われますが、地方選挙という選挙戦で他党派と戦い勝利すると言う特殊な政治的課題の中では、非常に間の抜けた位置づけになっています。

  地方選挙のそれぞれの街で本当に「震災復興」が選挙の最大争点か私は極めて疑問に思います。「震災復興」は全ての党派が一致する課題であり、「他党派と争う」という選挙戦の政治的位置づけから見て、府民に訴える上で極めて曖昧な概念です。「震災復興」という対立軸は、どの党派が府民の生活や安全を守ってくれるかの選択を行う上で選択肢としては不適切です。注1

  注1:前回4月12日付けでも私は意見を共産党に提出していますが(以下「意見書1」という)、大阪での最大の争
     点は「大阪都構想」との戦いであったと思っています。大阪都構想との戦いを放棄し震災を前面に出したこ
        とが今回の敗北につながったと私は見ています。

  不思議なことに、赤旗は後半戦も引き続き「被災地の救援・復興」が最大の課題とされているのに、高槻民報は前半戦の「震災復興路線」から完全に脱皮し、高槻市の街づくりを最大の課題としています。(この180度の転換はなぜですか)

 もし今回の選挙で東日本大震災を選挙の争点にするならば、唯一戦われるべき政治的課題は、今回の震災に起因する取り返しのつかない原発事故に遭遇した我々が、今後の日本社会のあり方の中で原子力エネルギーをどう位置づけるかという課題設定であったと思われます。

 共産党は基本的政治姿勢の確認の後で、「この立場にたち、被災地の多くの同志たちを先頭に、被災者救援のための献身的な奮闘がつづけられています。全国で取り組まれた救援金は、4億6千万円を超え、すでに被災した3県、75の自治体に第一次分をお渡ししています。」と書かれています。(「上記は4月12日赤旗1面 教訓を生かし、後半戦の前進のために力をつくそう」参照、以下「赤旗」という)果たして府民はこのことを聞いて今度の選挙は共産党だと思うでしょうか、これは人間として当たり前のことをしただけであって、共産党だからできたという実証が難しい問題です。(私は他党派が震災で何をしたか知りません。しかし、これ以上の取り組みを行われたかも知れません。そうした比較検証も何もできない中で、共産党が震災復興に一番積極的という証明を如何にして行われたのですか)

 私が言いたいのは、こんな話を幾らしても共産党の支持は増えません。問題は今後の日本社会のあり方(今回の震災を踏まえて)を描き出し、府民に訴えてこそ、さすが共産党だと評価されると思っています。

その最大の課題は「原子力政策」にあったと思います。この政策で共産党が他党派を上回る方向性を出して国民の中に入り支持を訴えることこそが最も重要な課題でした。

  しかし、共産党はこの国民の期待を見事に裏切りました。共産党の原子力政策は何ですか、この選挙撰を通して、そのゆれが目立つだけで何を主張しようとしているのか、全く見えてきません。「赤旗」は「原発の新増設計画の中止」、「原子力の規制機関の推進機関からの分離」、「原発頼みから自然エネルギーへの転換」などわが党の主張と述べています。

 しかし、この主張が選挙中に守られていたでしょうか、赤旗の記事、及び赤旗主張、候補者個人の選挙ビラにこの主張と違うものがあふれています。なぜ個々の候補者はあるいは赤旗は党の正確な方針を国民に伝えなかったのですか。注2

 注2:すでに出した「意見書1」で事例を沢山載せていますがあえて再度書きます。

1、府会議員候補者(M氏)の選挙公報、及びビラでの主張 


   @選挙公報

     原発総点検、自然エネルギーの促進

      ※「原発総点検」は関西電力のスローガン

   A高槻・島本日本共産党講演会ニュース

 安全優先の立場で原発の総点検を行うとともに、すこしずつ自然エネルギーへの転換を進めていくことが重要です。(感想文になっている。「先頭に立って戦います。」見たいな主張が必要・・・選挙ですよ!)

2、赤旗(投票日前日4月9日2面「主張」)


 「安全優先の原子力政策への転換を求める日本共産党の立場こそが国民の不安に応え、願いにそうことが浮き彫りになっています。」

 これが本当に共産党の原子力政策ですか、「安全優先の原子力政策」というものが本当にあるのですか、わたしは「意見書1」で自民党でももっとましなことを言うと書きましたが、河野太郎氏のブログは共産党の政策を超えています。

<参考:河野太郎>

  これまでのように、電気は必要だから原子力発電に文句を言うな、再生可能なエネルギーなんてコストは高いし不安定だからダメに決まっている、といった乱暴な声は小さくなっていくだろう。

 もう一度、徹底的な日本の原子力政策の見直しのための議論が必要だ。

<参考:J-CASTニュース>

  東京電力の福島第一原子力発電所の深刻な事故を受け、政府の原子力安全委員会の歴代委員長を含む原子力推進派学者の重鎮たちが原発の「安全神話」崩壊に懺悔を繰り返している。(中略)異例の緊急提言を行った。

  「原子力の平和利用を先頭だって進めてきた者として、今回の事故を極めて遺憾に思うと同時に国民に深く陳謝する」との謝罪を前面に掲げた。

3.赤旗の記事(4月9日3面の記事)「命守るこの議席を」で11名の主張を照会


     そのうち原発に触れている者は5名いるがその主張はバラバラだ。

    @原発事故解決に全力をあげる日本共産党の立場を強調。

      原発事故の解決に必死になっているのは東電や政府及び自衛隊等

    A浜岡原発を停止させ、安心・安全の静岡県にさせたい。

      この主張は正しい。

    B関西電力の原発も総点検させよう。

      これはM氏と同じ主張。あたり前のことであり、共産党の主張ではない。

    C伊方原発を総点検し安全対策を講じる仕事を私に任せてください。

      安全点検は気になるが、安全対策を私にやらせてくれは、戦うスローガン  

    D原発を総点検し、危険なプルサーマル発電は中止させよう。

      これはプルサーマル中止は積極的だが、危険なものをプルサーマルに限定しているところはあやまり。

    この赤旗記事(同じ日の同じ紙面でこれだけバラバラで、共産党の原子力政策は本当にあるのですか。)

 共産党は後半戦の選挙を本当に「震災復興」で戦うのなら、党の原子力政策は何かしっかりとした方針を確立せず戦うのは極めて危険な選挙戦術だと私は思っています。

 蛇足ながら私の意見を申し上げれば、管総理に志位委員長が提案した内容こそが共産党の政策であり、その内容は「原子力依存体質を改め、エネルギー政策の根本的転換」だと思います。

  赤旗や候補者がこれ以外の主張をすることを避けるべきです。そうでないと共産党は「原子力発電賛成派」と烙印を押されてしまいます。他党派との違いの旗を掲げて戦うのが選挙戦です。「安全点検」は戦いのスローガンでなく、常識的な国民感情です。その常識的な国民感情に擦り寄る選挙戦術は必ず敗北すると私は思っています。

 以上の文書を昨日作成し本日送付しようと思っていましたが、本日の赤旗を見てまた幾つか指摘したくなりました。

   4月17日付け赤旗は、「命守る政治住民とともに」を地方選後半戦のスローガンとして掲げています。私はこの間の共産党のスローガンは常に誰でもが一致するスローガンを掲げていますが、誰でも一致するスローガンに一体何の価値があるのでしょうか。

  選挙は政党間の争いであり、他の党派と自らの違いを明確にして、市民を自らの陣地に引き寄せて行く戦いだと思っています。「命を守る政治」は政治の原点であり、政治を志す者には共通の概念です。もし共産党が「命を守る政治」という概念で政党間の違いが描きだせるというなら、それに最もふさわしい政治的課題は「原子力政策」です。

 しかし、共産党は原子力政策で曖昧さを残し、「命を守る政治」という概念を市民の中に浸透させることに成功していません。今日の赤旗では一面左下に「原発を早期廃止」という大きな見出しがありますが、これはドイツの記事です。ドイツのこの事態を評価しながら日本国民全体が原発事故の被害におびえている状況下の日本で「原発の早期廃止」が共産党の政策として語れないのか疑問に思います。これでは「命を守る政治」のスローガンが生きてきません。他党派が命を守る政治をしていない、共産党こそが命を守る政治を行うのだと訴えるなら、なぜ他党派は命を守っていないのか、共産党はなぜ命を守る政治を語る資格があるのかを明確にしなければなりません。その分水嶺は今日の状況下では「原子力政策」にあると私は思います。

 一面のトップ記事では共産党は「被災者救援、震災からの復興、原子力行政の根本的見直しなどとともに、それぞれの自治体の特徴をいかし・・・」と書かれています。ここでは「原子力政策の根本的見直し」と一定前向きな表現は評価しますが、先にも触れたように河野太郎氏のブログでも「もう一度、徹底的な日本の原子力政策の見直しのための議論が必要だ。」と書かれています。

 今テレビを見ながら書いていますが。今回神奈川知事選挙で当選した黒岩さんが、「私は反原発でなく、脱原発を唱えている」と発言しています。判りやすい言葉です。共産党は「反原発」か「脱原発」か「原発の安全管理」か、自らの方針の確立が求められています。

 赤旗を見る限り揺れ動いています。共産党の方針が揺れ動いていて国民の支持を獲得する事は極めて困難だと思います。

 私が気になるのは、原子力政策の根本的見直しを、赤旗の主張等で明確にされず、ドイツの記事や、外部の識者の意見(16面原発危機 緊急発言)で触れられていることです。志位委員長が菅さんに申し入れたように、国民に向かって日本共産党の原子力政策を直接語るなどして、共産党の原子力政策に一本のスジを通すべきです。

 先にも触れましたが、「原発の安全管理」からの脱却を明確に図らない限り、共産党は日本の政治勢力の中で埋没してしまうと私は思っています。「命を守る政治」とは何か、国民に丁寧に説明する必要があると思っています。そうでないとこのスローガンは上滑りし、結局は徒労に終わってしまいます。